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はやはや
しおりを挟む通訳するには回らない口だけど、がんばゆ!
リトはちっちゃな拳を握る。
「たまに、いたい、いたぃ。テデ、魔力、ちっちゃ、たぶん、だいじょぶ! でも、効果、なぃかも?」
リトの言葉と一緒に、ほわほわ耳と、ぽふぽふしっぽが揺れて、皆が胸を押さえてる。
ちょっと首を傾げたレォンは、頷いた。
『そか、ならやってみて。あー』
レォンが巨大な口を開ける。
真っ青になってカタカタ震えるテデの手を、リトのちっちゃな指が握った。
「だぃじょぶ、レォンしゃま、やさし」
ぽふぽふしっぽを揺らして見あげたら、ちょっと赤くなったテデがリトの手を握りかえす。
「う、うん。やってみるよ。……ありがと、リト」
ふうわり、照れくさそうに笑ったテデに、ジゼの氷の目が刺さる。
「……まあ、今は、許す」
「うわ、ジゼ、何様?」
突っ込むノァに、ふんとジゼは胸を張る。
「リトのあるじだ」
「あい!」
ちっちゃい両手を握って、こくりと頷いたリトのしっぽが、ぽふぽふ揺れる。
ふわふわの耳がしゃんと立って、誇らしげに襟元のリボンをちっちゃな指できゅ、と前に出すリトに、皆の顔が赤くなる。
ジゼが両手で顔を覆って、うずくまった。
「……リト、味方を攻撃しなくていいからね」
ぽふぽふ頭を撫でてくれるテデに、涙目になったリトは、ぶんぶん首を振る。
「し、してな、でし!」
「ああ、うん、リトの攻撃力は解ったから、テデ、回復を頼む」
さらっと流したルァルの言葉に、リトはしょんもりして、テデはこくこく頷いた。
「……し、失礼、い、致し、ま、す……!」
リトの手をぎゅーっと握ったままのテデが、おそるおそる、身の丈の3倍はあるだろうレォンの口を覗き込む。
ぱくん、されたら、さようならだよ。
そんなことしないって、信じてる。
見あげたら、レォンの瞳が不思議そうに瞬いた。
ぱっくりする気持ちなんて、微塵もないのだろう、透きとおる闇だ。
震えていたテデは、大きな歯に空いた大きな穴に眉を下げた。
「これは盛大な虫歯ですねえ、さぞ痛いかと。とりあえず痛みと炎症を抑える治癒魔法を使います。触れますが、だ、だいじょうぶ、でしょうか」
リトは痛そうな歯とレォンを見あげる。
「さわる、へぃき?」
『口が疲れた……』
「がんばて! ぱくん、死んじゃぅ!」
『わ、わかた!』
「テデ、はやはや!」
「わ、わかた!」
何となく会話の内容を察したのだろうテデが、魔力を集中させる。
ちいさな掌から溢れる緑の光が、大きな穴の空いた虫歯を包みゆく。
『……お?』
ばさりと龍の背の翼が、広がった。
「ど、でしか?」
大きな闇の瞳が、見開かれる。
『痛いの、ましになった!』
「おお! テデ、すごい! いたぃ、まし!」
ぱちぱち拍手するリトに、テデが赤い頬で笑う。
「よかった、なら抜歯できるね」
「……ばし?」
リトが首を傾げる。一緒にしっぽも、ぽふりと揺れた。
ちょっと赤くなったテデが頷く。
「歯を抜く」
「あぅあ──!」
両頬を両手で包んでうろたえるリトのしっぽがボフボフ大きくなって、ジゼが両の手で顔を覆ってる。
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