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無謀りんりん

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 だめだ。


 ジゼがリトを抱っこして闘うとか、無理だから!

 スチルとしても、めちゃくちゃおかしいし、不可能だから!

 戦力の最大の主力であるジゼを、抱っこしてもらったリトが阻害するだなんて、絶対だめだ!!


「ジゼしゃま、あ、あの、僕、お留守ばん……」

 ジゼの胸で、もごもご呟いたら

「俺も帰る」

 断言するジゼに、カィトが縋った。

「竜を相手に、ひとりで盾とか、真剣に無理だから──!」

 泣いてる。

 かわいい。

 ゲームでは滅多に聞けなかったカィトの色っぽい声がたくさん聴けて、ジゼに泣いて縋ってくれるとか、最高──!

 じゅるりと垂れそうな涎をあわあわ拭う。
 隣でアリアスも口元を拭ってた。

 ジゼとカィトの冷たい目が刺さった気がして、わたわたする。

「ご、ごめなしぁ、で、でも、僕のせぃ、ジゼしゃま、めぃわく……」

「そんなことない!」

 ぎゅむぎゅむジゼが抱きしめてくれたら

「こぷ」

 リトの口から、血が零れた。


「す、すまない、リト──!」

 最愛の推しの涙目、尊い──!


「はいはいジゼさま、抱っこはやさしくお願いしますよ。ぎゅむぎゅむすると、今のリトは吐血しますからね」

 テデがめちゃくちゃ冷静に治癒魔法を使ってくれる。

「ありあと、ござまし」

 丁寧に頭をさげたら、テデが赤い頬で笑って、頭をなでなでしてくれた。



「………………出発する前から全滅する気しかしないんだが」

 ぽそりと呟くルァルに

「やっと気づいてくださいましたか──!」

 カィトが泣いてる。



「……あ、あのぅ、僕、光魔法の使い方、全然わかりません」

 頼みの綱の主人公アリアスの挙手に、皆の顔が青くなる。

「じいちゃん、光魔法を一日で叩き込んでくれ!」

 ルァルの叫びに、おじいちゃん魔導士は遠い目になった。

「光魔法使いは大変希少なのです。なにせ光の精霊さまが気に入ってくださらねば使えませぬ。我らがドディア帝国に光魔法使いが現れたのは三百年ぶりでしてな……使える者が、おりませんでな……」

「……へ?」

 皆の顔が、ぽかんとしてる。

「誰も教えられませんのじゃ!」

 おじいちゃんが拳をにぎる。


「ぇえエェゑエえぇ──!?」


 皆で泣いた。


「討伐を中止しましょう!」

 涙目なカィトも拳を握る。

「まあ、うん、どれくらいやばいかだけでも見に行くか」

 ルァル殿下が果敢すぎる!




 皆、真っ青だ。

「リトは、俺が護るから」

 いつも輝くジゼのかんばせまで、青い。

「……だから死ぬ予感しかしないと言ったのに……」

 カィトが涙目だ。

「あの、僕、逃亡の魔法使っていいかな?」

 ノァが出発前から逃げる気だ!

「死にそうになる厄災だな、というのを確認に行くだけだ。できればアリアス殿には光魔法を使ってみてもらいたいが──」

 流石にちょっと青くなってるルァルに視線を送られたアリアスが引き攣った。

「つ、使えたら、つ、使ってみますが、闇龍がむかってして攻撃してきたら、全滅では……?」

 皆が更に、真っ青になった。

「……し、しかし、何もせぬという訳にもいかんだろう。近隣の住民は避難させてあるが、災厄の範囲認定を──」

「……国が亡ぶから、災厄級なのでは……?」

 カィトの目が遠い。


「ああもう、とりあえず行くぞ──!」

 次期帝王が、勇猛すぎる──!






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