75 / 182
突っ込みは鋭く!
しおりを挟むジゼの戦闘スタイルが、リトを抱っこした状態、というのは、BLゲームとして、甚だおかしいと思う。
めちゃくちゃかっこよく剣を構えて、青い氷のエフェクトが掛かって、絶世のかんばせのジゼの胸元で揺れるほわほわの耳と、もふもふのしっぽ。
折角のうるわしの闘うジセの華麗なスチルが、台無しだ──!
あわあわしたリトが
「だ、だめでしゅ、ジゼしゃま……!」
噛んだ!
わたわたするリトをよそに、皆が討伐準備を始めてる。
……ちょっとさみしい。
泣いてないもん。
すんと鼻を啜ったリトも、ジゼの準備のお手伝いだ。
「俺がやる。リトは安静に」
「僕、ジゼしゃま、従僕でし! 僕、やるでし!」
やる気と一緒にぽふぽふしっぽを振ったら
「はいはい、準備は終わってるから、リトは回復しようね」
テデが緑の光で癒してくれた。やさしい。
涙と鼻水とリトの血でぐしゃぐしゃになった服を着替えたアリアスは、ゲームより幼いけれど、でも立派なBLゲームの主人公だ!
「アリアスしゃま、かっこいー!」
ぱちぱち拍手するリトの頭をなでなでしたアリアスが悶えてる。
「はぁあ、ふあふあ──♡」
……あ。
『ジゼ以外にさわらせたら、裏切り』な案件では?
そうっと見てみたジゼの目が、ブリザードだ。
「ご、ごめなしぁ」
主人公が、モブでさえない従僕に構うとか、いやだよね!
涙目で下げたリトの頭を、消毒するようになでなでなでなでなでなでなでなでしたジゼが、リトを抱きあげる。
「リトの着替えを」
「あ、はい、すぐご用意します!」
テデが駆けてゆこうとするのを、ルァルが止めた。
「用意してある」
「はァ──!?」
ジゼのうるわしの額に、青い血管がビキビキしてる!
ふふんとルァルは胸を張った。
「リトに下賜しようとしていた服があってな。俺の子ども時代の服を手直しさせた」
いや、ルァルさま、あなた12歳で、立派なお子さまですよ──!
言えないリトと一緒に、皆の目も生温かくなってる。
うやうやしくルァルの従僕が持ってきてくれたのは、ひらっひらで、ふりっふりの、どこの天使さまがお召しになるんですかと遠い目になるような、真っ白なドレスだった。
「…………は?」
思わず素になったリトを抱えたままのジゼの目が爛々と輝いた。
「久しぶりに殿下を尊敬した」
「久しぶりかよ!」
突っ込んだルァルが、ほんのり赤い頬でうれしげに笑う。
「リトを見た皆で、どんな服がいいか話し合ってな、帝都でも指折りの針子に縫ってもらった」
ふわっふわの服を抱えたルァルが微笑む。
「やる」
いらないです──!
言ったら首が飛びそうなので、リトはおそるおそる、恭しく受け取った。
「あ、ありがた、しぁわせ」
「着せてやる」
にこにこするルァルを、ジゼの氷の目と手が制した。
「わたくしが」
いやいやいや、主人が従僕に服を着せるとか、ありえないから──!
「ぼ、僕、着れる、でし!」
あわあわ手を挙げるリトの隣でアリアスが、ふわっふわ、ふりっふりの服を見つめて呟いた。
「……あのー、これから、討伐に行くんですよね? ドロッドロになっちゃうんじゃ? 舞踏会とかの時に取っておけば?」
素晴らしく冷静で鋭い突っ込みをありがとう、アリアス!
1,759
お気に入りに追加
3,463
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活
福の島
BL
家でゴロゴロしてたら、姉と弟と異世界転生なんてよくある話なのか…?
しかも家ごと敷地までも……
まぁ異世界転生したらしたで…それなりに保護とかしてもらえるらしいし…いっか……
……?
…この世界って男同士で結婚しても良いの…?
緩〜い元男子高生が、ちょっとだけ頑張ったりする話。
人口、男7割女3割。
特段描写はありませんが男性妊娠等もある世界です。
1万字前後の短編予定。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
異世界転生して病んじゃったコの話
るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。
これからどうしよう…
あれ、僕嫌われてる…?
あ、れ…?
もう、わかんないや。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
異世界転生して、病んじゃったコの話
嫌われ→総愛され
性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…
【完結】伝説の勇者のお嫁さん!気だるげ勇者が選んだのはまさかの俺
福の島
BL
10年に1度勇者召喚を行う事で栄えてきた大国テルパー。
そんなテルパーの魔道騎士、リヴィアは今過去最大級の受難にあっていた。
異世界から来た勇者である速水瞬が夜会のパートナーにリヴィアを指名したのだ。
偉大な勇者である速水の言葉を無下にもできないと、了承したリヴィアだったが…
溺愛無気力系イケメン転移者✖️懐に入ったものに甘い騎士団長
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる