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突っ込みは鋭く!

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 ジゼの戦闘スタイルが、リトを抱っこした状態、というのは、BLゲームとして、甚だおかしいと思う。

 めちゃくちゃかっこよく剣を構えて、青い氷のエフェクトが掛かって、絶世のかんばせのジゼの胸元で揺れるほわほわの耳と、もふもふのしっぽ。

 折角のうるわしの闘うジセの華麗なスチルが、台無しだ──!


 あわあわしたリトが

「だ、だめでしゅ、ジゼしゃま……!」

 噛んだ!

 わたわたするリトをよそに、皆が討伐準備を始めてる。


 ……ちょっとさみしい。
 泣いてないもん。


 すんと鼻を啜ったリトも、ジゼの準備のお手伝いだ。

「俺がやる。リトは安静に」

「僕、ジゼしゃま、従僕でし! 僕、やるでし!」

 やる気と一緒にぽふぽふしっぽを振ったら

「はいはい、準備は終わってるから、リトは回復しようね」

 テデが緑の光で癒してくれた。やさしい。


 涙と鼻水とリトの血でぐしゃぐしゃになった服を着替えたアリアスは、ゲームより幼いけれど、でも立派なBLゲームの主人公だ!

「アリアスしゃま、かっこいー!」

 ぱちぱち拍手するリトの頭をなでなでしたアリアスが悶えてる。

「はぁあ、ふあふあ──♡」

 ……あ。

『ジゼ以外にさわらせたら、裏切り』な案件では?

 そうっと見てみたジゼの目が、ブリザードだ。


「ご、ごめなしぁ」

 主人公が、モブでさえない従僕に構うとか、いやだよね!

 涙目で下げたリトの頭を、消毒するようになでなでなでなでなでなでなでなでしたジゼが、リトを抱きあげる。

「リトの着替えを」

「あ、はい、すぐご用意します!」

 テデが駆けてゆこうとするのを、ルァルが止めた。

「用意してある」

「はァ──!?」

 ジゼのうるわしの額に、青い血管がビキビキしてる!

 ふふんとルァルは胸を張った。

「リトに下賜しようとしていた服があってな。俺の子ども時代の服を手直しさせた」

 いや、ルァルさま、あなた12歳で、立派なお子さまですよ──!

 言えないリトと一緒に、皆の目も生温かくなってる。

 うやうやしくルァルの従僕が持ってきてくれたのは、ひらっひらで、ふりっふりの、どこの天使さまがお召しになるんですかと遠い目になるような、真っ白なドレスだった。

「…………は?」

 思わず素になったリトを抱えたままのジゼの目が爛々と輝いた。

「久しぶりに殿下を尊敬した」

「久しぶりかよ!」

 突っ込んだルァルが、ほんのり赤い頬でうれしげに笑う。

「リトを見た皆で、どんな服がいいか話し合ってな、帝都でも指折りの針子に縫ってもらった」

 ふわっふわの服を抱えたルァルが微笑む。

「やる」

 いらないです──!

 言ったら首が飛びそうなので、リトはおそるおそる、恭しく受け取った。

「あ、ありがた、しぁわせ」

「着せてやる」

 にこにこするルァルを、ジゼの氷の目と手が制した。

「わたくしが」

 いやいやいや、主人が従僕に服を着せるとか、ありえないから──!


「ぼ、僕、着れる、でし!」

 あわあわ手を挙げるリトの隣でアリアスが、ふわっふわ、ふりっふりの服を見つめて呟いた。


「……あのー、これから、討伐に行くんですよね? ドロッドロになっちゃうんじゃ? 舞踏会とかの時に取っておけば?」


 素晴らしく冷静で鋭い突っ込みをありがとう、アリアス!




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