上 下
70 / 182

いちゃいちゃ

しおりを挟む



「……えーと、あのー……」

 リトの隣で赤い頬で気まずそうにしているアリアスに、まだ青い顔で心配そうにしてくれていたルァルが眉をあげる。

「ああ、よくやってくれた。我らにとっては一瞬だったが、異なる次元での光の精霊さまの試練は大変なものだと聞く。よく戻ってきてくれた」

「……僕のこと、忘れてましたよね?」

 ジト目の突っ込みに、ルァルは陽の髪を掻きあげる。

「まさか」

 爽やかに全否定するルァルにも、アリアスの目は胡乱だ。
 ルァルの陽の瞳が、面白そうに瞬いた。

「光の精霊さまに選ばれ、光魔法が使えるようになったようだな」

「リトのおまけで」

 ふてくされるアリアスに、ジゼの腕のなかのリトが跳びあがる。

「ましゃか!」

 腕のなかのリトの額を見つめたジゼは、月の眉を顰めた。

「……これは……光の魔紋……?」

「ジゼさまぁあァア──! お呼びと伺いましたァア! まさかまさかまさかお怪我を!?」

 全力疾走してくれたのだろう、ぜえぜえしながら駆け込んだテデは、居並ぶルァルとノァ、カィトに硬直した。

「た、たたたたた大変なご無礼を──!」

「よい。診てやれ」

 ルァルが手を振ると、深々頭をさげたテデがジゼに駆け寄る。

「ジゼさま──!」

「リトを、頼む」

『またか──!』

 顔に大書きしたテデがリトを睨みつけた目が、愕然と見開かれた。

「……こ、れは……強制覚醒? 無理矢理叩き起こされた魔力が、己の身体を傷つけるものです。魔力が落ち着いて馴染んでくれば心配はいらないのですが、しばらくは安静に……ってリト、魔力あったの──!?」

 茫然と叫ぶテデに、髭のおじいちゃん魔導士が近づいた。

「ほうほう、これは確かに、光の魔力よのう」

 リトの顔を覗き込もうとするおじいちゃんを、ジゼが制する。

「まず治療を」

 白い眉をあげたおじいちゃんは、皺の瞼に埋もれる細い目をますます細めた。

「そのような顔をするようになられましたか」

 きょとんとするジゼの隣で、テデの目が、おどろおどろしくなってる。

「ジゼさまは、以前と変わらず、至高の御方にございます!」

 テデの宣言に、ルァルは眉をあげた。

「それは俺に対する挑戦か?」

「ひィイ──! も、申し訳ございません、次期帝王──!」

 謝りはするが『ジゼは至高』を訂正しないテデに、リトは思わずうむうむした。
 喉を鳴らして笑うルァルの後ろでカィトが吐息する。

「殿下がお咎めにならないから、仕方なく俺が言う。不敬だぞ」

「ま、誠に申し訳ございません!」

「申し訳ございません、よく言い聞かせておきます」

 テデとともに頭を下げるジゼに

「何を?」

 ノァが突っ込んだ!

「ルァル殿下の素晴らしさを」

 即答するジゼに、声をたててルァルが笑った。

「思ってもないくせに」

「思ったことしか言いません」

 真っ直ぐなジゼの瞳に、 陽の瞳がまるくなる。

「……え? ほんとうに? ジゼは俺を、評価してくれているのか?」

 ぽかんとしたのは、ジゼだ。

「ありえぬ優秀さを見せつけておいて、今更何を」

 当たり前のことのように告げたジゼに、ぽかんとしたルァルの耳が朱くなる。

「──っ!」

 真っ赤になった顔を片手で覆うルァルと、によによするノァとカィトと、きょとんとしているジゼを横目で見たテデが肩を落とした。

「治療するね。ごめん、リト、重体なのに目の前でいちゃいちゃして」

「お前が謝るな!」

 叫ぶルァルのまなじりが真っ赤だ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活

福の島
BL
家でゴロゴロしてたら、姉と弟と異世界転生なんてよくある話なのか…? しかも家ごと敷地までも…… まぁ異世界転生したらしたで…それなりに保護とかしてもらえるらしいし…いっか…… ……? …この世界って男同士で結婚しても良いの…? 緩〜い元男子高生が、ちょっとだけ頑張ったりする話。 人口、男7割女3割。 特段描写はありませんが男性妊娠等もある世界です。 1万字前後の短編予定。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん!!

福の島
BL
家族で異世界転生して早5年、なんか巡り人とか言う大層な役目を貰った俺たち家族だったけど、2人の姉兄はそれぞれ旦那とお幸せらしい。 まぁ、俺と言えば王様の進めに従って貴族学校に通っていた。 優しい先輩に慕ってくれる可愛い後輩…まぁ順風満帆…ってやつ… だったなぁ…この前までは。 結婚を前提に…なんて…急すぎるだろ!!なんでアイツ…よりによって俺に…!?? 前作短編『ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活』に登場する優馬の続編です。 今作だけでも楽しめるように書きますが、こちらもよろしくお願いします。

【完結】伝説の勇者のお嫁さん!気だるげ勇者が選んだのはまさかの俺

福の島
BL
10年に1度勇者召喚を行う事で栄えてきた大国テルパー。 そんなテルパーの魔道騎士、リヴィアは今過去最大級の受難にあっていた。 異世界から来た勇者である速水瞬が夜会のパートナーにリヴィアを指名したのだ。 偉大な勇者である速水の言葉を無下にもできないと、了承したリヴィアだったが… 溺愛無気力系イケメン転移者✖️懐に入ったものに甘い騎士団長

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

処理中です...