もふもふ獣人転生

  *  

文字の大きさ
上 下
67 / 168

ふぬぬぬぬ!

しおりを挟む



 すごい!
 さすが主人公!

 光魔法っぽい何かが出たよ!

「おぉお!」

 口からたりたり血を流しながら拍手するリトの後ろから、きらきらした何かが現れた!

「わぁあ、いらっしゃーい、ひさしぶりー! かわいーの、ふたつも来たー」

 にこにこしてる。
 きらきらしてる。

 人間じゃないっぽいよ!

 あわあわするリトとアリアスの向こうで、輝ける発光体が瞬いた。

「あ、そかそか、人間は同族の姿を取ってもらうと喜ぶんだね」

 まばゆくてよく見えなかったほどの光が、おさまってゆく。
 現れたのは、光の髪に光の瞳に光の服を纏う、絶世のかんばせだった。

 リトは、世界一うるわしく、かっこよく、可愛いのはジゼだと思ってた。
 いや、今も思ってる。
 人類では!

 これちょっと、ちがう。
 人外。

 よし、ジゼが一番だ!

 不動の真実を確認した。
 よかった。

 納得するリトの隣で、あわあわしてたアリアスが口を開く。

「あ、あの! リトの血を止めてくださいませんか!」

 最初にお願いしてくれる。

 主人公、やさしい!

 感激でうるうるするリトを覗きこんだ輝く方(間違いなく人間じゃない)は、首を傾げる。

「きみ、獣人?」

「あい」

 こくりとリトが頷く。

「なんか魔素で汚れてるよ?」

「泥、なか、落ち、魔素、入た。熱、出て、回復、して、もらた、奇跡、て」

「いやいやいや、今そっちじゃなくて、血──! 口から血が出てるから! 死んじゃうから!」

 人外な光の方に対して強気なアリアス!
 さすが主人公!

 心配してくれるのが、めちゃくちゃうれしい。

「元の世界に帰ってすぐに治療したいです、お願いします!」

 頭をさげるアリアスと一緒に、リトも頭もさげる。
 唇からぽたぽた滴る血を見つめた光の方は、首を傾げた。

「口から血が出ると、死んじゃうの?」

「あい」

 出続けるとね!

「それはかわいそう? でも皆、死ぬんだよ? ちょっと早いか遅いかだよ」

「遅いほうでお願いします!」

 アリアスの目が本気だ。

「元の世界に帰る方法を教えてください!」

「折角、ひさしぶりに来てくれたのにー。もう帰るの?」

 ぷっくりふくれる頬まで輝いてる。
 すごい。

「リトが死んじゃうから!」

 アリアスの桜の瞳から、涙が零れた。

 細い腕が、血塗れのリトのちっちゃな身体を抱きしめてくれる。

「僕のせいで強制覚醒につきあってくれたリトが死んじゃうなんて、絶対絶対絶対絶対、だめだ──!」

 桜の髪が、アリアスの想いに呼応するように、ふうわり舞いあがる。
 アリアスの指が、髪が、瞳が、桜の光を宿したようにきらめき始めた。

「……主人公なんだ、僕はやれる、僕はやれる、僕はやれる、僕はやれる──!」

 ブツブツブツブツしたアリアスが、カッと桜の瞳を見開いた。


「僕が、リトを、たすける──!」

 桜の光が、瞬いた。

「ふぬぬぬぬぬぬぬ!」

 額に青い血管をビキビキにさせたアリアスの身体が、アリアスの想いに応えるように輝いた。

 桜の光が、舞いあがる。
 アリアスの身体から、まばゆい光がほとばしる。

 あふれる光が、リトを包んだ。


 こぽこぽ零れていた血が、止まってゆく。

 あれほど凄まじかった激痛が、引いてゆく。


「アリアス、しゃま」

「リト──!」


 あふれる涙と、抱きしめてくれた。
 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界に召喚されて失明したけど幸せです。

るて
BL
僕はシノ。 なんでか異世界に召喚されたみたいです! でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう あ、失明したらしいっす うん。まー、別にいーや。 なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい! あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘) 目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた? 転生先には優しい母と優しい父。そして... おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、 え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!? 優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!! ▼▼▼▼ 『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』 ん? 仲良くなるはずが、それ以上な気が...。 ...まあ兄様が嬉しそうだからいいか! またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。

転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。 気がついたら僕は知らない場所にいた。 両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。 この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。 可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。 知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。 年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。 初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。 表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...