もふもふ獣人転生

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「あぅあ──!」

 号泣して蹲りそうなアリアスを、駆け寄ったリトが支えた。

「アリアスしゃま……!」

「リト、手を握っててくれるよね──!? 僕のこと、見捨てないよね……?」

「勿論でし!」

 胸を叩くリトに、面白そうに陽の瞳を閃かせたルァルが眉をあげる。

「強制覚醒をともに受けると申すか?」

 リトの目の高さに合わせて屈んでくれたルァルが、唇を吊りあげた。

「痛いぞ~?」

 ぴょこんと跳びあがったリトのしっぽが、ぷるぷる震える。

「ルァルさま!」

 ジゼの氷柱の目に刺されたルァルは鼻を鳴らした。

「魔法陣が巨大だからな。手を握っていれば、強制覚醒されることになる。獣人に魔法が使えたという例は聞いたことがないゆえ、おそらく無事だろう」

 痛いのが確定らしいアリアスがしょんぼりしないように、ちょっとほっとしてしまったことが解らないようにリトはしっぽに力を籠めた。

「一緒、いい、でしか?」

「痛いやもしれぬがな」

 イヒヒヒヒ。
 悪役みたいに笑ってもキラキラなルァル!

「り、リトまで痛くなったら、た大変、だから……ぼ、僕、ひ、ひと、りで……や、やって、み、みる、よ……!」

 ダラダラ涙と鼻水を溢れさせて、ブルブル震えながら告げるアリアスを、リトのちっちゃな腕が抱きしめる。

 もふもふのしっぽも一緒に、ふるえる背を抱きしめた。


「一緒、行くでし、アリアス、しゃま!」

「リト──♡」

 アリアスの鼻が、リトのしっぽに埋まって、はすはすしてる。

 固く抱き合うリトとアリアスに、皆が沈黙した。


 ぼそりとノァの呟きが降る。

「思ってたのと違う」

「……これ、話が違うんじゃ?」

 ジゼとリトとアリアスを代わる代わる見たカィトも首を傾げてる。
 ジゼの額に青い血管がビキビキしてる。

「楽しい!」

 ルァルの目だけがキラキラだ。
 




 強制覚醒は大魔導堂の地下、ものすごい魔力の奔流が起きても大丈夫に造られている魔導壁の間でするという。

 アリアスと手を繋いだリトは、ぶるぶる震えるアリアスのおかげで、なんとかあまりビビらずに真っ暗な地下へと足を伸ばした。

 強制覚醒させる時は、立会人として保護者が来ることになっているのだけれど、アリアスの親御さんは領地で魔獣対処で大変で、とても帝都まで来られないという。
 転移門を使えるのは高位貴族だけなので、男爵だと厳しいらしい。
 なのでアリアスの立会人は、今回の魔獣討伐の責任者ルァル殿下だ。
 くっついているので強制覚醒されるかもしれないと、ジゼがリトの立会人になってくれる。

 床にはもう準備万端、ゆるやかに明滅する魔紋が床を覆うように敷き詰められ、ぼんやりした光を放っていた。

「こ、こここここわいよぅ……!」

 アリアスが泣いてる。

 内臓を引き千切られそうなほど痛いというのだ。
 脅しじゃなく真実で、強制覚醒で運が悪いと死んでしまう人までいるらしい。

 主人公だからそんなことにはならないだろうと信じつつも、リトも心配だ。
 でもリトが不安がると、アリアスはもっと恐ろしくなってしまうと思うから。


「おそば、いまし、アリアス、しゃま」

 ぎゅう

 アリアスの手を握る。


「きと、だぃじょぶ!」


 元気がちょこっとでも出るように、笑った。




 
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