60 / 207
ふたまた!?
しおりを挟む「うわ、二股なのか!? サイテーだな」
ノァの冷たい視線が刺さったジゼは目を剥いた。
「勝手に二股認定して、勝手に最低の烙印を押すな!」
激おこなジゼもかっこいー!
珍しいジゼの表情にうっとりしているリトに、周りの皆が生温かい目になってる。
「……リトが納得してるとか、サイテーに拍車が掛かるんだけど」
ぼそりと落ちたノァの呟きに、ジゼが眉を吊りあげる。
「だから! 俺は一筋だ──!」
拳を握って叫ぶジゼもかっこいー!
思わず拍手した。
皆の目が、更に生温かくなってた。
面白そうにルァルは目を細める。
「知っているか、光魔法が使える者には、魅了の才が常時発動しているそうだ。関われば関わるほど気になり、気に掛け、気がついたときには手遅れだと」
「全く問題ありません」
ふんと鼻を鳴らすジゼの周りはいつも桜吹雪だよ! 魅了されてるよ!
言えないので、リトはおとなしく微笑んだ。
耳としっぽは、ちょっと悄気た。
「あーあー、ほーらー、ふ──た──ま──た──!」
ノァが物凄く楽しそうなのは、なぜだろう。
「だ か ら 違 う ! !」
ジゼの額に浮かんだ青い血管が、切れそうだ。
「この面子で災厄級の龍退治とか、楽しみしかないな」
ルァルの目が、キラキラだ。
「……死しか見えない」
カィトの目が、死んでる。
翌朝一番に、お迎えの馬車がアリアスの元へと走った。
「いらさい、ませ、アリアスしゃま」
早すぎるお迎えに眠いのだろう目を擦りながら足の治療にジェディス家にやってきたアリアスに、リトは丁寧に頭をさげる。
「……おはよー、リト……今日は、はやいね……」
ふぁあ
あくびをこぼす主人公も、桜の光でキラキラだ。
「おあよ、ござまし、アリアスしゃま」
「ものすごく……はやぃ、よ……」
朝早くから呼ばれたテデも早起きにむくんだ瞼でアリアスの足に治癒魔法を掛けた。
「だいぶ良くなってきましたね」
「何とか歩けるようになってきました、ありがとう」
アリアスの微笑みの向こうで、ガチャリと金属の音が響く。
やってきたのは、しろがねの鎧を纏い、帯剣したジゼだ。
その物々しさに、アリアスの桜の瞳が見開かれる。
「領地に魔獣が出たそうだな。なぜ言わなかった?」
眉を顰めるジゼに、アリアスが跳びあがった。
「え、魔獣? 出たんですか、うちに!? いやそれ、6年後の話なんじゃ──!」
BLゲームを知り尽くした転生者であることを暴露するアリアスに、ジゼの眉がさらに寄る。
「……6年後? 珍しいと聞いているが、光魔法は予知まで行えるのか?」
「──は! え、あ、あの、うーん、な、なんとなーく、み、みたいな?」
冷や汗ダラダラしてる主人公の誤魔化し方が、雑だ!
「だから今から準備しておこうって思ってたのに、魔獣もう来たの!? 早くない!? 僕、ジゼさまにしか逢ってないよ!?」
アリアスが涙目だ。
演技だと大変あざといが、この慌て具合と暴露具合は、本気かも?
「そ、それに僕、光魔法の発現とかまだ……なんです、けど……」
『なんで光魔法が使えるようになるって知ってるの?』
顔に書いたアリアスに、うるわしのジゼのかんばせが、グシャリと歪んだ。
1,857
お気に入りに追加
3,826
あなたにおすすめの小説


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています
倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。
今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。
そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。
ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。
エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる