【完結】もふもふ獣人転生

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ふたまた!?

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「うわ、二股なのか!? サイテーだな」

 ノァの冷たい視線が刺さったジゼは目を剥いた。

「勝手に二股認定して、勝手に最低の烙印を押すな!」

 激おこなジゼもかっこいー!

 珍しいジゼの表情にうっとりしているリトに、周りの皆が生温かい目になってる。

「……リトが納得してるとか、サイテーに拍車が掛かるんだけど」

 ぼそりと落ちたノァの呟きに、ジゼが眉を吊りあげる。

「だから! 俺は一筋だ──!」

 拳を握って叫ぶジゼもかっこいー!

 思わず拍手した。
 皆の目が、更に生温かくなってた。
 面白そうにルァルは目を細める。

「知っているか、光魔法が使える者には、魅了の才が常時発動しているそうだ。関われば関わるほど気になり、気に掛け、気がついたときには手遅れだと」

「全く問題ありません」

 ふんと鼻を鳴らすジゼの周りはいつも桜吹雪だよ! 魅了されてるよ!

 言えないので、リトはおとなしく微笑んだ。
 耳としっぽは、ちょっと悄気た。


「あーあー、ほーらー、ふ──た──ま──た──!」

 ノァが物凄く楽しそうなのは、なぜだろう。


「だ  か  ら  違  う  !  !」

 ジゼの額に浮かんだ青い血管が、切れそうだ。


「この面子で災厄級の龍退治とか、楽しみしかないな」

 ルァルの目が、キラキラだ。

「……死しか見えない」

 カィトの目が、死んでる。
 





 翌朝一番に、お迎えの馬車がアリアスの元へと走った。

「いらさい、ませ、アリアスしゃま」

 早すぎるお迎えに眠いのだろう目を擦りながら足の治療にジェディス家にやってきたアリアスに、リトは丁寧に頭をさげる。

「……おはよー、リト……今日は、はやいね……」

 ふぁあ
 あくびをこぼす主人公も、桜の光でキラキラだ。

「おあよ、ござまし、アリアスしゃま」

「ものすごく……はやぃ、よ……」

 朝早くから呼ばれたテデも早起きにむくんだ瞼でアリアスの足に治癒魔法を掛けた。

「だいぶ良くなってきましたね」

「何とか歩けるようになってきました、ありがとう」

 アリアスの微笑みの向こうで、ガチャリと金属の音が響く。
 やってきたのは、しろがねの鎧を纏い、帯剣したジゼだ。
 その物々しさに、アリアスの桜の瞳が見開かれる。

「領地に魔獣が出たそうだな。なぜ言わなかった?」

 眉を顰めるジゼに、アリアスが跳びあがった。

「え、魔獣? 出たんですか、うちに!? いやそれ、6年後の話なんじゃ──!」

 BLゲームを知り尽くした転生者であることを暴露するアリアスに、ジゼの眉がさらに寄る。

「……6年後? 珍しいと聞いているが、光魔法は予知まで行えるのか?」

「──は! え、あ、あの、うーん、な、なんとなーく、み、みたいな?」

 冷や汗ダラダラしてる主人公の誤魔化し方が、雑だ!

「だから今から準備しておこうって思ってたのに、魔獣もう来たの!? 早くない!? 僕、ジゼさまにしか逢ってないよ!?」

 アリアスが涙目だ。
 演技だと大変あざといが、この慌て具合と暴露具合は、本気かも?

「そ、それに僕、光魔法の発現とかまだ……なんです、けど……」

『なんで光魔法が使えるようになるって知ってるの?』
 顔に書いたアリアスに、うるわしのジゼのかんばせが、グシャリと歪んだ。





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