もふもふ獣人転生

  *  

文字の大きさ
上 下
60 / 168

ふたまた!?

しおりを挟む



「うわ、二股なのか!? サイテーだな」

 ノァの冷たい視線が刺さったジゼは目を剥いた。

「勝手に二股認定して、勝手に最低の烙印を押すな!」

 激おこなジゼもかっこいー!

 珍しいジゼの表情にうっとりしているリトに、周りの皆が生温かい目になってる。

「……リトが納得してるとか、サイテーに拍車が掛かるんだけど」

 ぼそりと落ちたノァの呟きに、ジゼが眉を吊りあげる。

「だから! 俺は一筋だ──!」

 拳を握って叫ぶジゼもかっこいー!

 思わず拍手した。
 皆の目が、更に生温かくなってた。
 面白そうにルァルは目を細める。

「知っているか、光魔法が使える者には、魅了の才が常時発動しているそうだ。関われば関わるほど気になり、気に掛け、気がついたときには手遅れだと」

「全く問題ありません」

 ふんと鼻を鳴らすジゼの周りはいつも桜吹雪だよ! 魅了されてるよ!

 言えないので、リトはおとなしく微笑んだ。
 耳としっぽは、ちょっと悄気た。


「あーあー、ほーらー、ふ──た──ま──た──!」

 ノァが物凄く楽しそうなのは、なぜだろう。


「だ  か  ら  違  う  !  !」

 ジゼの額に浮かんだ青い血管が、切れそうだ。


「この面子で災厄級の龍退治とか、楽しみしかないな」

 ルァルの目が、キラキラだ。

「……死しか見えない」

 カィトの目が、死んでる。
 





 翌朝一番に、お迎えの馬車がアリアスの元へと走った。

「いらさい、ませ、アリアスしゃま」

 早すぎるお迎えに眠いのだろう目を擦りながら足の治療にジェディス家にやってきたアリアスに、リトは丁寧に頭をさげる。

「……おはよー、リト……今日は、はやいね……」

 ふぁあ
 あくびをこぼす主人公も、桜の光でキラキラだ。

「おあよ、ござまし、アリアスしゃま」

「ものすごく……はやぃ、よ……」

 朝早くから呼ばれたテデも早起きにむくんだ瞼でアリアスの足に治癒魔法を掛けた。

「だいぶ良くなってきましたね」

「何とか歩けるようになってきました、ありがとう」

 アリアスの微笑みの向こうで、ガチャリと金属の音が響く。
 やってきたのは、しろがねの鎧を纏い、帯剣したジゼだ。
 その物々しさに、アリアスの桜の瞳が見開かれる。

「領地に魔獣が出たそうだな。なぜ言わなかった?」

 眉を顰めるジゼに、アリアスが跳びあがった。

「え、魔獣? 出たんですか、うちに!? いやそれ、6年後の話なんじゃ──!」

 BLゲームを知り尽くした転生者であることを暴露するアリアスに、ジゼの眉がさらに寄る。

「……6年後? 珍しいと聞いているが、光魔法は予知まで行えるのか?」

「──は! え、あ、あの、うーん、な、なんとなーく、み、みたいな?」

 冷や汗ダラダラしてる主人公の誤魔化し方が、雑だ!

「だから今から準備しておこうって思ってたのに、魔獣もう来たの!? 早くない!? 僕、ジゼさまにしか逢ってないよ!?」

 アリアスが涙目だ。
 演技だと大変あざといが、この慌て具合と暴露具合は、本気かも?

「そ、それに僕、光魔法の発現とかまだ……なんです、けど……」

『なんで光魔法が使えるようになるって知ってるの?』
 顔に書いたアリアスに、うるわしのジゼのかんばせが、グシャリと歪んだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界に召喚されて失明したけど幸せです。

るて
BL
僕はシノ。 なんでか異世界に召喚されたみたいです! でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう あ、失明したらしいっす うん。まー、別にいーや。 なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい! あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘) 目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた? 転生先には優しい母と優しい父。そして... おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、 え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!? 優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!! ▼▼▼▼ 『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』 ん? 仲良くなるはずが、それ以上な気が...。 ...まあ兄様が嬉しそうだからいいか! またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。

転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。 気がついたら僕は知らない場所にいた。 両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。 この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。 可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。 知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。 年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。 初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。 表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...