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佳境!?

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「ありあと、ござまし!」

 ぴょこんとしっぽと一緒にお辞儀したリトは、お茶と薬草とお花と蜂蜜を選んでゆく。

 ルァルはお疲れなうえに気が立ってるみたいなので、鎮静作用のある薬草と、気持ちを和やかにする花を加え、蜂蜜をちょこっと加える。

 ノァには、ちょっとギスギスした空気に負けないよう、気持ちを明るくしてくれる、やさしい香りの花を。

 カィトには、ルァルの隣で疲弊していそうなので、気力回復の薬草と、元気になれる花と、蜂蜜を多めに。

 ジゼには、ちょっと赤い頬を引き締める鎮静作用のある薬草と、頭をすっきりさせる香りの花を加える。

「お待たせ、しましあ」

 リトの茶に口をつけた全員が、目を剥いた。

「何だこれ──!」

 異口同音だった。

「だめ、でしか?」

 うるうるになりそうな目頭に、ぎゅっと力を籠める。

 失敗したからって、泣いたらだめだ!
 でも5歳の涙腺はうるうるするよ。
 反射だよ。
 ぺしゃんとする耳としっぽも、反射だよ。

 しょんもり

「ぐ──!」

 皆が胸を押さえてる。

 リトも真似っこしようかと思ったが、失礼かもしれないとわたわたしてたら、一番に立て直したのはルァルだった。

「いや、うん、なんか、落ち着いた」

 照れたようにルァルが笑って、隣のカィトも頷く。

「元気出た」

「僕も!」

「沸いてた頭が、ちょっとすっきりした」

 ノァに続けたジゼの言葉に、皆が疑わしそうな目を向けてる。

 ルァルはお茶でひと息ついた皆の顔を見渡した。

「頭の痛い話がある。ホボーラエ男爵領に、魔獣が出た」

「魔獣!」

 瞠目する皆の後ろで、リトは違うところで息を呑む。


 ……ホボーラエ男爵……主人公の領地だ──!
 





 ……たぶん、確か、主人公の領地に魔獣が出て、皆でたすけにゆくイベントが、あった、ような気が、する──!

 ひとりであわあわしたリトは、朧げなBLゲームの記憶を振り絞る。

 でも確か、魔獣イベントは主人公が帝都学院に通うようになって、三年目の話だったんじゃ?
 最後のほうのイベントじゃなかった?
 今、皆、12歳だよね?
 え、もう佳境なの?

 ……うん
 あの桜の舞いあがり具合を見るに、ジゼの心象は大変、大変よいと思う。
 そろそろゲームクリアなんじゃ? という勢いだ。

 でも魔獣イベントは皆出てくるイベントで、全員の心象がよくないとだめだった気がする。
 主人公はジゼ以外とも会ってるのかな?
 もしかして、もう皆との恋が進展してる!?

 あばばばしてるリトをよそに、話は進む。

「ホボーラエ男爵領は急峻な山脈を背後にした辺境にあり、他国からの侵攻が難しいことから男爵は軍を保有しておらぬ。王軍の派遣は間に合わぬ。転移門を使い、優秀な少数での魔獣の撃破を帝王陛下はお望みだ」

 ルァルの言葉に、カィトの顔が引き攣り、ノァは溜め息をついた。

「ははぁ、それで暇な僕らに行って来いと。実戦を積ませる機会になっていいと。滅多と出ない魔獣が、どれほどの強さかも解らないのに?」

「……災厄級だそうだ。闇龍やもしれんと」

 カィトの声が、地を這った。

「この四人で倒せと?」

 ジゼの声も低くなる。

「いや、五人だ。ホボーラエ男爵の三男、アリアス殿が光魔法を使えるらしい。闇龍と闘えるのは彼だと。我らは彼の護衛だな」

 告げたルァルの眉が、面白そうに上がる。

「最近ジェディス家に入り浸っているそうじゃないか、ジゼ」


 細められたルァルの瞳が、ジゼを射た。





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