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海です!(お気に入り2000御礼。you様リクエストありがとうございます!)
しおりを挟む夏です、海です!
「わー!」
ジェディス家領地の視察を兼ねて、ジゼがリトを連れてきてくれたのは、透きとおる青と、真っ白な砂がまぶしい、海だ。
海を見たのなんて、いつぶりだろう。
間違いなく今世では初めてのリトのしっぽは、ぶんぶんだ。
「ジゼしゃま、海でし!」
飛び跳ねるリトのふわふわの耳が、ぴこぴこ揺れる。
「ぐぅ──!」
ジゼと、日傘を差しかけるセバが、真っ赤になって胸を押さえた。
白い飛沫がきらめく海には、他に人影はない。
ジェディス家のプライベートビーチ? うひゃあ!
ぷるぷるするリトに、ジゼもセバも、ぷるぷるしてる。
「ジゼしゃま、泳ぎましあ?」
さらさらの月の髪を揺らして、ジゼが首を傾げた。
「……およぐ?」
「海、泳ぐ、でし! セバ、水着、おねが、しましあ!」
「……みずぎ?」
首を傾げるふたりに、リトはあんぐり口を開ける。
「……海、泳ぐ……水着……ない、でしぁ……?」
「およぐ、がどういったものか、解らないな。獣人には当たり前なのか?」
「みずぎ、とは初めて聞いた。樹木の名か?」
ジゼとセバの真面目な表情に、ぱたりとリトは真っ白な砂浜に埋もれた。
「あちゅー!」
夏の砂浜は危険危険!
燃える暑さ! ビニールサンダルが熔ける暑さ!
しっぽをボワボワにして跳びあがるリトにセバが笑って、ジゼがわたわた抱きあげてくれる。
「だ、大丈夫か、リト!」
あたたかな腕のなかで、うるうるの目でリトはジゼを見あげる。
「……ジゼしゃま、およぐ……」
「わ、わかった、やってみよう!」
真っ赤になったジゼが頷いてくれた。
水着がないので、下着で海に入ることにしました!
「泳ぐでし、ジゼしゃま!」
手を引くリトに、ジゼの顔が真っ赤だ。
「あ、ああ」
目が明後日の方を向いてる。
ぱしゃぱしゃ、波の寄せる砂浜を一緒に歩き、ばしゃんと海に飛び込んだ。
「リト──!」
悲鳴をあげるジゼに、ぷわぷわ浮いたリトが、ぺしゃんとなった耳としっぽと満面の笑顔で手を振る。
「ジゼしゃま、およぐー!」
ぱしゃぱしゃ海を掻く。
しょっぱくて、波が寄せて、陽射しが熱くて、海がぬるくて、懐かしい前世の子どもの頃の記憶と、今のジゼのびっくりした顔が、やさしく、やさしく溶けてゆく。
濡れたらちっちゃくなって、ぺしゃんとする耳としっぽに、ジゼとセバが胸を押さえて、リトは立ったら足のつく浅いところで、ぱしゃぱしゃ泳いだ。
犬かきとか、聞こえません!
「ジゼしゃまも、およぐでし!」
「あ、ああ」
こわごわ、海に足を踏み入れるジゼに、セバが心配そうに眉をさげる。
「リト、ジゼさまを頼むぞ!」
家令服を濡らしたくないらしいセバが銀縁眼鏡を光らせて遠いところから叫んだ。
「あい!」
ジゼの手をとって、海にいざなう。
寄せる波がジゼの足を洗って、びっくりしたように氷の瞳がまるくなる。
「ぬるい」
「夏でし! こわくないでし、ジゼしゃま」
ぺしょぺしょの耳としっぽで、笑う。
ふうわり赤くなったジゼが、こくりと頷いて、リトと一緒に海に入った。
「うわ!」
強い波に押し流されそうになったジゼを、獣人の力で抱き寄せる。
「ジゼしゃま、僕、守るでし!」
燃える瞳で見あげたら、耳まで真っ赤なジゼが、抱きしめてくれた。
ジゼの手を持って、バタ足を教えてみました!
「おお、素晴らしいです、ジゼさま!」
「ジゼしゃま、じょーず!」
赤い頬で、ジゼが笑う。
きらきらの夏が、降ってくる。
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お気に入り2000ありがとうございます! you様のリクエストで、海水浴でした!
お化け屋敷がよく解らなくてごめんなさい……!
可愛いリクエスト、ありがとうございます!
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