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もふもふの園(お気に入り1000御礼。nashiumai様リクエストありがとうございます!)
しおりを挟むこんにちは、こんばんは、リトです!
ぱぱらっぽっぽっぴー!
歩けるようになりました!
「ジゼしゃま、僕、歩け、ゆ……!」
まだよく回らない口で、よれよれ、よちよち歩くリトに駆け寄ったジゼが支えてくれる。
「リト──!」
「ち、ちがぅの、僕、歩けゆ!」
ジゼのところまで、歩くはずだったのに!
ジゼが走ってきてくれちゃった!
ぺしゃんとした耳としっぽと、涙の滲む上目遣いで責められたジゼが、胸を押さえてうずくまる。
「う……!」
「あぁ、ジゼさま、ちょっと違いましたね」
セバが後ろで、ぷるぷるしてる。
「す、すまない、リト」
あわててちょっと下がってくれたジゼのところまで、ぽてぽて歩く。
左に、右に傾きながら、引きずる足でジゼのところまで歩いたリトは、真っ赤な顔をしているジゼの手に、そっとふれる。
「えへへ。ジゼしゃま、歩けた、よ」
「ぐ──っ!」
胸を押さえたジゼが、膝をついた。
「たいへん!」
涙目になるリトに、セバは首を振る。
「大丈夫だ、癖だから」
春の木洩れ日が窓から射し込んで、セバは銀縁眼鏡の向こうの蘇芳の瞳をやわらかに細めた。
「リト、庭に出てみてはどうだ? 歩く練習にもなる」
「あい!」
「では庭までは俺が連れてゆこう」
ひょいと抱きあげられたリトのしっぽが不服を表すように、ぽふぽふ揺れてジゼの手をくすぐった。
「僕、歩けまし!」
朱くなったジゼが頷く。
「でも庭で歩く前に疲れてはつまらないだろう?」
確かに、庭に辿り着いた時点で終了になりそうだ。
「……ふぇ。ごめ、わく……」
「そんなことない」
ぎゅ
ジゼの抱っこしてくれる腕が強くなる。
リトはそっと、ジゼの胸に、頬を寄せた。
とくとく響く鼓動が、駆けてゆく。
ジェディス家の庭は、広大だ。
四季折々の花を咲かせる庭園から、落葉樹と常緑樹の織り交ざる、一年を通してあざやかな姿を見せる森まで擁する。
あまりに広やかな庭に、部屋から出たことのなかったリトは、ぽかんと口をあける。
筆頭侯爵家を嘗めていた。
これは、庭に辿り着くまでに力尽きる。間違いない。
「ジゼしゃま、ありあと、ござまし」
ぺこりと頭をさげたら、リトの耳が、ほわほわジゼの胸をくすぐった。
「ぐ──!」
呻いたジゼが、そっと木洩れ日の射し込む森のなかに、リトを下ろしてくれる。
「歩き難いかもしれないが、よい運動になると思う。手を貸そう」
ジゼが、手を引いてくれる。
「あの、ごめ、わく……」
「そんなことない」
見あげるリトの申し訳なさを攫うように、ジゼが手を繋いで、森をゆっくり、ゆっくり、歩いてくれる。
ジゼの手に支えられながら、リトはようやく動くようになった足で、ぽてぽて、落ち葉の降り積もる森の大地を踏みしめた。
緑の香り、落ち葉の香り、鳥の匂い、りすの匂いがする。
思った次の瞬間、リトの頭のうえに、白い小鳥が舞い降りた。
ピピピピピ
あまい声で鳴いてくれる。
隣のジゼが、蒼の瞳を見開いた。
「しー」
唇のうえに人さし指をたてたリトが、ちいさく笑う。
真っ赤になったジゼが、頷いた。
リトの頭のうえで、鳥が歌う。
誘われるように、ちいさなりすが駆けてきて、リトの肩へと駆けあがる。
ふわふわのしっぽに頬をくすぐられたリトが、ほわほわのしっぽを揺らして笑った。
白いちいさなもふもふが駆けてくる。
紅い瞳が輝いて、リトの足にちょこんと座った。
「うさぎ……!」
ジゼの目が、きらきらしてる。
「しー」
リトが笑う。
真っ赤な頬で、ジゼが頷く。
「こにちは。獣人、リトでし。あそこ、住んでゆ。よろしくでし」
リトのふわふわの耳を、きゅ、と握ったりすが、こくりと頷いた。
白い小鳥がリトのほわほわのしっぽで、楽しそうにかくれんぼしてる。
後ろ足でちょこんと立ちあがり白い前足でリトの足を、てしてしするうさぎを、リトのちっちゃな手が抱きあげた。
「はぅあ──!」
真っ赤になったジゼが、両手で顔を覆ってる。
後ろで見守ってくれていたセバも、胸を押さえてうずくまってた。
びくんとした小鳥が羽ばたいて、声を出してしまったと切ない顔になったジゼの頭のうえに止まる。
息をのんで、目をまるくしたジゼに、リトが笑う。
「しー」
こくこく頷いたジゼの瞳が、自分のあたまのうえを見あげる。
木洩れ日がきらきら輝いて、リトはそっとジゼの手を握った。
「獣人、みな、仲良し」
「……すごいな、リト」
うさぎを抱っこしたリトを、ジゼが後ろから抱っこしてくれる。
『獣め!』
嘲らないで「すごい」尊敬の目で、見つめてくれる。
涙の滲む瞳で、リトは前に回ったジゼの手を握る。
ぎゅうぅ
抱きしめてくれる腕が強くなって、あたたかな鼓動が駆けてゆく。
────────────
お気に入り1000越え、ありがとうございます! 感謝の気持ちでいっぱいです。
nashiumai様のリクエストで、小動物で癒されるリトと、そんなリトをみて癒される周囲でした!
森に行くまでを書いたらちょっと長くなってしまいましたが、楽しんでくださったらとてもうれしいです。
とても可愛いリクエスト、ありがとうございました!
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