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断言だよ
しおりを挟む朝ご飯は、和やかに進む。
リトはジゼの傍で、青汁を注いだり、くったり煮てジゼも食べられるようにした野菜のスープをお出ししたり、お楽しみの鳥のお粥を、あっためたお皿によそう。
ジゼの瞳が、うれしそうに閃く。
そのちょこっとした表情の変化が解るようになって、ほんのささいなきらめきが、たまらなくうれしい。
たまらなく、愛しい。
リトのしっぽがぶんぶん揺れる。
瞬くジゼの隣で、セバが笑った。
「リトが従僕になってから、ジゼさまは野菜も召しあがるようになって、よかったです。野菜が苦手だなんて、かっこわるいですものね」
片目を瞑るセバに、ジゼの眦に朱が走って、ゲォルグが穏やかに微笑んだ。
ジゼがおっきくなったらこんなになるのかな、という理想の顔面そのものの微笑、まぶしい。
「私の責でもあるのだが、氷のようだった顔が、やわらかになったな」
ジゼとおそろいの蒼の瞳を細めて息子を愛し気に見つめるゲォルグに、恥ずかしそうに頬を染めて視線を逸らしたジゼが尊すぎて、リトは思わず拝んだ。
ジゼを尊ぶリトの隣で、セバが笑いを堪えるようにぷるぷるしてる。
「そうでしょうか」
不思議そうに首を傾げるジゼに、穏やかに頷いたゲォルグは自らの行いを振り返るように組んだ指に目を落とした。
「……その、すまない。ジゼの母とは、うまくいかなくて。セバに現を抜かしている、最低な父に見えただろう」
──朝ご飯の話題なのかな!?
あわあわするリトより吃驚したらしいジゼは、ゲォルグとセバを見遣って吐息した。
「若い男に走った、浮気者なのだと思っていました」
「ぐぅ」
自分で言ったのに、ジゼ父、衝撃を受けてる。
わかるよ、否定してほしくて言ったのに肯定されたら、泣いちゃうよね。
「わたくしが迫りましたから。お咎めはどうか、わたくしに」
セバが胸に手をあて、膝を折る。
「セバに言わせるのは、情けないですよ、父上」
唇を尖らせるジゼに、ゲォルグは頭をさげた。
「すまない」
「我がきみが玉頭を下げられることなど、何もございません……!」
目を剥くセバを制するように、ゲォルグは真っ直ぐ告げる。
「セバを望んだのは、私だ」
断言した!
耳まで真っ赤になったセバが、かわいい。
いつも色気ダダ漏れセバの、不意打ちの愛らしさ!
これはやはり、ゲォルグ×セバ? いややはりセバ×ゲォルグの可能性も……! そしてそちらの方が大変萌える可能性も──!
リトがもだもだしている隣で、不思議そうに、おいしそうに青汁を飲んだジゼは唇を開いた。
「平民だった母が侯爵家の財産を使い込み、権威を振り翳し、酷い振る舞いをしていたとの報告も証拠も見ました。父上の伴侶となることで賜った貴族位を剥奪され、侯爵家を放逐されるに相応しい所業だと、理解しました」
ジゼは目を伏せる。
「そのような輩の血を引く者が、次期侯爵として指名されたことを、申し訳なく思っていたのです」
「あの者の血を引くことと、ジゼの性質には何の関係もない!」
叫んだのは、ゲォルグだった。
目を瞠るジゼを、父親の腕が抱きしめる。
揺れるジゼの瞳を、心を包みこむように、父の腕が、息子を抱きしめた。
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