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ごほうびでーと?
しおりを挟む「ふたりきりの時をお勧めすべきでしょうか」
セバの声に、びくんと震えたジゼとリトは、あわあわ離れた。
離れても、頬が熱い。
指先が、燃えている。
ジゼを見あげるたび、リトの鼓動は駆けてゆく。
「──っ」
顔を掌で覆うジゼの耳が、真っ赤だ。
「……まあ、うん、その、我が国の法では未成年では致さないように」
ゲォルグの注意に、ジゼが噴火する。
「あ、当たり前です──!」
「え、ジゼさま、できるんですか──! もう!?」
見開かれたセバの目が、爛々してる。
「だ、だまれ──!」
耳まで真っ赤なジゼが、めちゃくちゃ可愛い。
「リトが頑張ったから、ごほうび」
微笑んだジゼが、リトを馬車に乗せて連れてきてくれたのは、帝都の城下町だった。
色とりどりの天幕が張られた屋台で、つやつやの野菜や果物、いい匂いの焼き串や、ピカピカのお鍋が売られてる。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「もぎたてだよ、見てって!」
賑やかな呼び声が、街を行き交う数多の人に降りそそぐ。
「すごぃ、人でし」
ぽかんとするリトとはぐれないようにだろう、手を繋いでくれたジゼが頷く。
「帝国一の賑わいだ。高級店の落ち着いた雰囲気がいいなら其方にゆくが、こういうのは珍しいかもしれないと思って」
はにかむようにジゼが笑ってくれる。
とくとく鳴る胸で、リトはジゼの手を、ぎゅ、と握った。
もしかして、もしかすると、これは『でーと』というものでは……!?
前世から数えても初めてだよ!
しかも最愛の推しと、はじめてのでーと!
きゃ──!
燃える頬で、もだもだしたリトは
「あまり人の多い場所は危険です」
「ジゼさま、どうぞこちらへ」
セバと護衛の衛士たちの声に現実に返った。
そうでした。
セバも衛士さんもいるのです。
全く全然ふたりきりじゃなかった!
最愛の推しと、モブでさえない自分が、デートな訳がなかった!
ちょっとしょんぼりして、しっぽの垂れたリトの手を、ジゼの手が引いてくれる。
「気になるものがあったら、何でも言ってくれ」
リトは、ジゼを見あげる。
──あなたと手を繋いで、歩ける。
それが、何よりのご褒美だって、ご存知ですか。
恥ずかしくて、分不相応すぎて言えないから、目を逸らしたリトは小さな露店で広げられているリボンを見つけた。
硝子細工だろうか、きらきらしたのがまん中に飾られた様々な色のリボンが並んでいる。
「ジゼしゃま」
「ん?」
ふわりと視線を合わせるように、ジゼが屈んでくれる。
雑多な匂いに満ちた街中なのに、涼やかなジゼの香りに包まれて、うっとりしたリトは、そうっとジゼの小指を握った。
「……あ、あの……ジゼしゃま……選んで、くださた、飾り……つけ、たい、れす」
あなたが選んでくれたものを、身につけたいだなんて
そうしたら、あなたの傍に、ずっといられる気がするだなんて
『僕は、あなたのものです』
掲げたいだなんて
分不相応な願いが、誘惑に抗えないリトの唇から、こぼれた。
ぶわっ
音がしたかと思うほど、耳まで真っ赤になったジゼに、後ろのセバがによによしてる。
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