27 / 182
二度目まして!
しおりを挟むぽやんとしていた前世の記憶、リトにとって何より大事なBLゲームの記憶が蘇る!
バババババっと脳裏に閃いたのは、うっとりするようなスチルの数々だ!
えぇと……タイトルは──
攻略対象は、ジゼと、ノァと、あと……ルァル殿下?
主人公の男の子は──
え、待って。
何にも思い出してない!
なのにスチルだけが、バババババっと──なんだこれ! 美味しいところだけ先に見せつけて、過程がちっとも解らないとか、いやがらせじゃないか!
泣きだしそうになったリトに、ノァの藍の目が泳いだ。
「そ、その、僕は、次期侯爵としての振舞いに関して疑問を呈しただけであって、べ、別に、獣人のきみを糾弾した訳じゃ……」
陰湿な粘っこさを消したノァの声が落ちる。
「泣ーかしたー、泣ーかしたー、へーいかーに言うたーろー」
楽し気なルァルの声が響いて
「いやこんなの陛下に奏上するとか、なくない!?」
ノァのほうが涙目になってる。
真白き柱と彫像に彩られ、ふかふかの真紅の絨毯が敷き詰められた帝宮の大広間の大階段のうえから、次期帝王ルァルが降りてくる。
ひと足踏み出すごとに光が舞うような威厳が、まだ幼い身体から溢れることに息を呑む。
「やぁ、ジゼ。きみも元気に回復したようでよかった」
陽の髪をなびかせ、ルァルが微笑む。
視線を向けられ『きみ』呼び掛けられたリトは、セバに教えてもらったとおり、胸に手をあて、深く膝を折り、こうべを垂れた。
「ふ、再び、おめもじ、かな、まし、こと、きょうぇ、しご、くに存、じ、まし。
リトでし。殿下、ご、厚情、より、命、永ら、まし、こと、心、より、感謝、申し、あげ、まし」
引き摺るリトの足とつっかえる言葉に、ルァルのちいさなかんばせが歪んだ。
「……魔素か」
「奇跡だと、テデが」
ジゼの言葉に、ルァルは吐息する。
「俺付きの治癒士なら──と言いたいところだが、テデの方が上だろうな。仕方ない」
長い指が伸びてきて、リトの頭をかき混ぜた。
「よく生きた」
「あ、ありが、たき、しあ、わせ」
ほわほわ熱くなる頬で、頭をさげる。
ふわふわの耳がルァルの指をくすぐって、瞬いたルァルの手がリトの耳に伸びた。
「何だコレ! ふあっふあだぞ!」
わしゃわしゃわしゃわしゃ、ルァルの指がリトの耳をまさぐった!
「ふぇ!」
み、耳は急所なのです!
そ、そんなになでなでしたら、あぅ……!
「ルァルさま」
ジゼの吹雪の声と氷の目に刺されたルァルが停止する。
「……あ……あぁ、うん、なんか解った」
ちいさく笑ったルァルが、ぽふぽふリトの髪を撫でた。
「わるかった。急所か」
「あ、あぃ。ご、配慮、ありあと、ござまし」
胸に手をあて、ぺこりと頭をさげる。
ほわほわ、しっぽが一緒に揺れた。
「ぐ──!」
ノァが胸を押さえてる。
ほっぺが赤くて元気そうだから、病気じゃなくて癖みたいだよ。
ドディア帝国で大流行中の癖なのかな?
人気の演劇とか、小説とかの、まねっこなのかも!
「な、なんだこの生き物は──!」
真っ赤になって叫ぶノァを刺すジゼの目が、氷柱だ。
2,037
お気に入りに追加
3,464
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活
福の島
BL
家でゴロゴロしてたら、姉と弟と異世界転生なんてよくある話なのか…?
しかも家ごと敷地までも……
まぁ異世界転生したらしたで…それなりに保護とかしてもらえるらしいし…いっか……
……?
…この世界って男同士で結婚しても良いの…?
緩〜い元男子高生が、ちょっとだけ頑張ったりする話。
人口、男7割女3割。
特段描写はありませんが男性妊娠等もある世界です。
1万字前後の短編予定。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
【完結】伝説の勇者のお嫁さん!気だるげ勇者が選んだのはまさかの俺
福の島
BL
10年に1度勇者召喚を行う事で栄えてきた大国テルパー。
そんなテルパーの魔道騎士、リヴィアは今過去最大級の受難にあっていた。
異世界から来た勇者である速水瞬が夜会のパートナーにリヴィアを指名したのだ。
偉大な勇者である速水の言葉を無下にもできないと、了承したリヴィアだったが…
溺愛無気力系イケメン転移者✖️懐に入ったものに甘い騎士団長
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
異世界転生して病んじゃったコの話
るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。
これからどうしよう…
あれ、僕嫌われてる…?
あ、れ…?
もう、わかんないや。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
異世界転生して、病んじゃったコの話
嫌われ→総愛され
性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる