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二度目まして!

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 ぽやんとしていた前世の記憶、リトにとって何より大事なBLゲームの記憶が蘇る!
 バババババっと脳裏に閃いたのは、うっとりするようなスチルの数々だ!

 えぇと……タイトルは──
 攻略対象は、ジゼと、ノァと、あと……ルァル殿下?
 主人公の男の子は──

 え、待って。

 何にも思い出してない!

 なのにスチルだけが、バババババっと──なんだこれ! 美味しいところだけ先に見せつけて、過程がちっとも解らないとか、いやがらせじゃないか!

 泣きだしそうになったリトに、ノァの藍の目が泳いだ。

「そ、その、僕は、次期侯爵としての振舞いに関して疑問を呈しただけであって、べ、別に、獣人のきみを糾弾した訳じゃ……」

 陰湿な粘っこさを消したノァの声が落ちる。

「泣ーかしたー、泣ーかしたー、へーいかーに言うたーろー」

 楽し気なルァルの声が響いて

「いやこんなの陛下に奏上するとか、なくない!?」

 ノァのほうが涙目になってる。

 真白き柱と彫像に彩られ、ふかふかの真紅の絨毯が敷き詰められた帝宮の大広間の大階段のうえから、次期帝王ルァルが降りてくる。
 ひと足踏み出すごとに光が舞うような威厳が、まだ幼い身体から溢れることに息を呑む。

「やぁ、ジゼ。きみも元気に回復したようでよかった」

 陽の髪をなびかせ、ルァルが微笑む。

 視線を向けられ『きみ』呼び掛けられたリトは、セバに教えてもらったとおり、胸に手をあて、深く膝を折り、こうべを垂れた。

「ふ、再び、おめもじ、かな、まし、こと、きょうぇ、しご、くに存、じ、まし。
 リトでし。殿下、ご、厚情、より、命、永ら、まし、こと、心、より、感謝、申し、あげ、まし」

 引き摺るリトの足とつっかえる言葉に、ルァルのちいさなかんばせが歪んだ。

「……魔素か」

「奇跡だと、テデが」

 ジゼの言葉に、ルァルは吐息する。

「俺付きの治癒士なら──と言いたいところだが、テデの方が上だろうな。仕方ない」

 長い指が伸びてきて、リトの頭をかき混ぜた。

「よく生きた」

「あ、ありが、たき、しあ、わせ」

 ほわほわ熱くなる頬で、頭をさげる。
 ふわふわの耳がルァルの指をくすぐって、瞬いたルァルの手がリトの耳に伸びた。

「何だコレ! ふあっふあだぞ!」

 わしゃわしゃわしゃわしゃ、ルァルの指がリトの耳をまさぐった!

「ふぇ!」

 み、耳は急所なのです!
 そ、そんなになでなでしたら、あぅ……!

「ルァルさま」

 ジゼの吹雪の声と氷の目に刺されたルァルが停止する。

「……あ……あぁ、うん、なんか解った」

 ちいさく笑ったルァルが、ぽふぽふリトの髪を撫でた。

「わるかった。急所か」

「あ、あぃ。ご、配慮、ありあと、ござまし」

 胸に手をあて、ぺこりと頭をさげる。
 ほわほわ、しっぽが一緒に揺れた。

「ぐ──!」

 ノァが胸を押さえてる。

 ほっぺが赤くて元気そうだから、病気じゃなくて癖みたいだよ。
 ドディア帝国で大流行中の癖なのかな?
 人気の演劇とか、小説とかの、まねっこなのかも!

「な、なんだこの生き物は──!」

 真っ赤になって叫ぶノァを刺すジゼの目が、氷柱だ。







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