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だいじょばない?
しおりを挟むリトの服については、ジゼが仕立て屋さんと靴屋さんと、うんとお話をして決めてくれるらしい。
『どんな服が着たい?』
聞いてもらえなかったリトの耳としっぽは、ちょっとしょんもりする。
いやいや、わがままを言ったらだめだ。
服をつくってもらえるなんて、凄いことなんだから!
思っても、耳としっぽは、ちょっぴりしょんもりしてる。
「……っ!」
横目で見たジゼが、唇を覆ってる。
「あ、あの……お服、と、お靴、ありあと、ござまし」
ぺこりと頭をさげる。
「ぐ……っ!」
胸を押さえたジゼに、リトはわたわた駆け寄った。
「あるじしゃま、くるし? 大変!」
あわあわセバの衣の裾を引っ張るリトに、セバまで顔を覆ってる。
「……いや、これはジゼさまの持病のようなものだから──」
「じびょう! 大変! テデ!」
引き摺る足で、テデを呼ぼうと駆けだすリトを、ジゼの指が止める。
「大丈夫だ、リト。これは……癖だ」
「くせ?」
こくりと頷くジゼの後ろで、セバがにやにやしてる。
「あるじしゃま、いたく、ない? くるし、なぃ?」
ジゼが苦しかったらと思うと泣きそうなリトが見あげると、胸を押さえたジゼがうずくまった。
「たいへん!」
泣きながらテデを呼んだら、必死の形相で駆けてきたテデが遠い目になった。
「あぁ、これは……ご無事かと」
「あるじしゃま、へいき?」
不遜かな、と思っても心配で、そっとジゼの指を握る。
「──っ!」
リトと繋がっていない手で顔を覆ったジゼは、呟いた。
「……だいじょばない……」
「たいへん!」
泣きだしたリトを、ジゼの腕が抱きしめてくれる。
「……こうしてたら、治る」
「ほんと?」
「ああ」
ぎゅ
ジゼの腕に、力が籠もる。
リトはそっと、ジゼの背に手を伸ばした。
きゅ
そっと、そっと抱きしめて、ジゼの背中を、そっとさする。
「いたい、いたぃ、と、でけ! えぃ!」
ぴっと跳ね飛ばすように手を振ったリトに、ジゼもセバもテデまで顔を覆ってた。
「……リト、やばい──!」
やっぱり色々、だめらしいです。
しょんもり。
仕立て屋さんとジゼのご相談が白熱してる。
リトの入る隙間は、ちょっぴりもなかった。
しょんぼりするリトの頭を、セバがぽふぽふしてくれる。
「えと、えと……セバ、裏切り、ちがう?」
ジゼ以外は、裏切り?
ふわふわ白い髪と耳としっぽを揺らして首を傾げたリトに
「ぐ──!」
呻いたセバは、こほんと咳払いした。
「ああ、うん、ほら、リトも頑張ったら褒められたいだろ?」
「あい」
褒められて伸びるかどうかは不明だけど、褒められるの、うれしい。
め! されるの、しょんもり。
「俺がリトを撫でるのは褒めるためであって、やましい気持ちは一切ない!」
聞かせるみたいな大きな声に、仕立て屋さんと白熱していたジゼが振り返って眉をあげた。
蒼の瞳が凍てついてる気がするけど、セバが引き攣ってる気がするけど、気のせいかな……?
ゴホゴホ咳払いしたセバは、逃げるように休憩室の扉を開けた。
「あーじゃあ、服ができるまで、とりあえずお茶の淹れ方でも学んでみるか」
「あい!」
お役に立つのです、ジゼしゃま!
……たてるかな……が、がんばるよ……!
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