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おまけのお話
ヴァデルザ領へ!
しおりを挟むバチルタ家の借金は見事完済! バチルタ家領の発展も軌道に乗りました!
豪商ニィハがうはうはしながら、温泉街の発展に貢献してくれています。王兄で農学が専門のメィファが苗の開発とそれぞれの土地にあった耕作計画を、ガチムチガディは農地の開拓を、ゾホは火山と魔導列車を、小人さんたちは魔石工場と温泉街建設を頑張ってくれて、お勉強した両親が経営をがんばります!
だまされそうになったら、ニィハが飛んできてくれるはず!
ということで、やっとヴィルの領地、ヴァデルザ領に帰れることになりました!
「めちゃくちゃ待たせてごめんなさい、ヴィル!」
ちょこっとおっきくなっちゃったノィユが涙目で謝るのに、ヴィルは首を振った。
「何にもない、のどかな、領地だから」
のどか。
魔物が、ぐわーっと出てくるのに、のどか。
…………ヴィル、のどかの意味、知ってるよね…………?
旅支度を整えたら、ヴァデルザ家執事のロダと、ツーとホーと一緒にヴァデルザ領へと出発です!
「気をつけてね!」
「お土産待ってるぞー!」
「達者でな!」
「!」
ニィハが、ガディが、ゾホが、メィファが手を挙げてくれる。
「ノィユ、粗相のないようにね」
「襲ったらだめだから!!!」
両親に両肩を掴まれて諭された。
信用がない。
まだ幼児なのに!
「では行きますか。ツー、ホー、帰りましょう」
「ブルルルン!」
ロダの言葉に、いなないたツーとホーが駆けだして、バチルタ領はすぐに後ろに遠くなる。
「元気でな──!」
「伴侶を襲うなよ──!」
市場の皆や、農作業の手を止めた皆が笑顔で手を振ってくれる。
「ヴィルにーちゃ、また来てね──!」
「ノィユにーちゃ、ヴィルにーちゃを、おそったら、め──! だから──!」
…………子どもたちにまで叫ばれてる…………
遠い目になるノィユに、ヴィルがちいさく笑う。
「おそわない?」
ちょっと熱い頬を、ヴィルの胸に押しつけた。
「……おそいたい」
喉を鳴らして笑ったヴィルが、ちいさな身体を抱きしめてくれる。
「ノィユが、おっきく、なったらね」
「ほ、ほほほほほほほんとに!?」
今から鼻血が出そうです。
久しぶりのヴァデルザ領は、相変わらず
ギシャ──!
グオォオオ──!
ギエェエエ──!
魔物の威嚇の叫びと断末魔に満ちている。
こわい。
ビビるノィユの目の前で、ツーとホーが何でもないみたいに蹴散らしてくれた。
「すごい! ツー! ホー!」
「ブルルルン!」
拍手と讃えたら、いななきと一緒に、たてがみがきらめいた。
しばらくぶりのお城は記憶のままの武骨な姿で迎えてくれる。
ツーとホーならあっという間にヴァデルザ領だ!
「おつかれさま、ありがとうね」
頬のあたりをなでなでしたら、ツーもホーもうれしそうに目を細めてくれた。
「埃を払ってきますので、しばらくお待ちくださいね」
微笑んだロダが、城に入ったと思ったら帰ってきた。
「どうぞ、ノィユさま、ヴィルさま」
「はや──!」
仰け反ったのはノィユだけだ。
「いつも、ありがとう」
「ヴィルお坊ちゃまのためですから」
にこにこしてるふたりが、かわいい。
「ヴァデルザ領で困ってることとか、あるのかな?」
ノィユにとってはとびきり豪華な晩餐の席で聞いたら、ヴィルとロダが顔を見合わせる。
「あんまり?」
「特には」
「発展とかしたくない?」
首を傾げるノィユに、おごそかにロダは頷いた。
「あまり発展すると敵国が攻めてくるかもしれません」
ノィユは跳びあがる。
そうです、ヴァデルザ領は敵国との境界なのです──!
下手に発展させたらだめなのでした!
────────────
読んでくださって、ありがとうございます!
maril 様のリクエストで、ヴィルとノィユが戻ったヴァデルザ領のお話ですー!
のんびり続く予定です!(笑)
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