76 / 88
つよい
しおりを挟むさあ、借金返済のためにがんばるのです!
ヴィルの伴侶にふさわしくなるために!
というわけで、今日も図書館にゆくのです!
拳を握るノィユと一緒に、おそろいの角度で両親も拳を握ってくれる。
「いや、そんなにそろってなくてもいいんじゃないでしょうか、おかあさま、おとうさま」
ちょっと恥ずかしくなってきたノィユに、両親が首を振る。
「何を言うんだノィユ、バチルタ家の連帯を示さなくては!」
おかあさんが、やる気だ! めずらしい。
「皆でそろってると、がんばってるように見えるんだよ、ノィユ!」
胸を張るおとうさんは、たぶん『謝る時も、そろってると心から真摯に謝罪しているように見える』と言いたいのだろう。
さすが謝罪マスター!
たぶん昨夜、壁の分厚い立派なお部屋を貸してもらったので、敷布とかを汚さないように気をつけつつ、久しぶりにちっちゃいノィユを気にしなくてよい、いちゃいちゃを、両親はたっぷりしっぽり堪能したらしい。
お肌も髪も笑顔まで輝いている。
やる気に満ち溢れている両親が、つやつやだ。
ちょっとはずかしくなりつつ、ノィユは拳を掲げる。
「トートさまに送迎していただくことが、いかに分不相応かしっかりと自覚致しましたので、本日は徒歩で図書館に向かおうと思います!」
「おー!」
バチルタ家の拳がそろってる。
微笑ましそうに見ていたロダが拍手してくれた。
はずかしいのに、ちょこっとうれしい。ありがとう!
広大な敷地で馬を走らせるため、わずらわしい貴族のつきあいを避けるため、静かな場所を求めてなのだろう、王宮の近くに居を構えそうなネァルガ家の邸宅は郊外にある。
王宮近くにある王立図書館へゆくには馬車に揺られて45分くらいなので、徒歩で行くと2時間くらいかかる。
が、貧乏の強い味方、徒歩──!
歩けば、いつかは着く。
時間はかかるが、お金は掛からない!
貧乏暇なしだけど、バチルタ家には時間はある──!
しかも徒歩で頑張ると、馬車でぼーっとしてるのと違って、体力も筋力も持久力もついて、肺活量もあがって、心肺機能が向上して、メタボの予防と改善になるし、ストレス解消になるし、頭の回転もよくなるんだよ! しあわせホルモンまで出るらしいよ。
貧乏すごい!
ちがった、徒歩つよい!
「じゃあ歩きましょう! おかあさまもおとうさまも今までかつてないふかふかとお肉でぷよったら、唯一の武器が台無しですからね!」
体形維持と改善にもぴったり!
人間は動く生き物なのです!
「……唯一の武器……」
おかあさんの目が遠くなってる。
「がんばろー!」
おとうさんは自覚があるみたいだ。潔い!
「でもノィユは3歳だぞ。だいじょうぶか?」
「……あ──!」
おかあさんの突っ込みに、はっとする。
そうでした、大人の足で2時間なので、3歳児の足だと4時間!? もっと!?
往復で日が暮れて、図書館で一冊も本が読めないあれだ!
それだとまだいい方で、図書館に着くまでに力尽きる可能性さえある。
きゃ──!
「おんぶしてあげるよ、ノィユ」
ぽふぽふ頭を撫でてくれるおとうさんがやさしい。
614
お気に入りに追加
2,850
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました。
おまけのお話を更新したりします。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます
当意即妙
BL
ハーララ帝国第四皇子であるエルネスティ・トゥーレ・タルヴィッキ・ニコ・ハーララはある日、高熱を出して倒れた。数日間悪夢に魘され、目が覚めた彼が口にした言葉は……
「皇帝なんて興味ねえ!俺は魔法陣究める!」
天使のような容姿に有るまじき口調で、これまでの人生を全否定するものだった。
* * * * * * * * *
母親である第二皇妃の傀儡だった皇子が前世を思い出して、我が道を行くようになるお話。主人公は研究者気質の変人皇子で、お相手は真面目な専属護衛騎士です。
○注意◯
・基本コメディ時折シリアス。
・健全なBL(予定)なので、R-15は保険。
・最初は恋愛要素が少なめ。
・主人公を筆頭に登場人物が変人ばっかり。
・本来の役割を見失ったルビ。
・おおまかな話の構成はしているが、基本的に行き当たりばったり。
エロエロだったり切なかったりとBLには重い話が多いなと思ったので、ライトなBLを自家供給しようと突発的に書いたお話です。行き当たりばったりの展開が作者にもわからないお話ですが、よろしくお願いします。
2020/09/05
内容紹介及びタグを一部修正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる