60 / 88
だめなのでした
しおりを挟む「ネニさま、すごいです……! ありがとうございます!」
感動するノィユと一緒に両親も頭をさげる。
角度とタイミングが完璧にそろってきたよ、バチルタ家!
「い、いえ……あの、僕、お役に、立ちました、か……?」
「めちゃくちゃ!」
拍手するノィユと一緒に両親も拍手した。
ふうわり赤くなったネニが、ほころぶように笑う。
「……よかった。いつも、子どもは引っ込んでろって言われるから」
「はァア──!?」
素が出ました。
びくっとするネニと、あんぐりしてカタカタする両親を背に、ノィユは拳を握る。
「本の知識も素晴らしいし、利用者が困っている時に一番たすけになる本を選んでおすすめしてくださるなんて、司書さんの鑑です! まだ幼くていらっしゃるのに、ネニさまのお仕事は丁寧でやさしくて完璧です!」
叫んだ。
ふわふわ紅くなったネニが、とろけて笑う。
「……あ、ありがとう。あ、あの、きみの名前、は……?」
「た、大変な失礼を致しました! バチルタ家が長子、ノィユ・バチルタにございます」
あわてて膝を折るノィユの隣で、母と父も膝を折る。
「バチルタ家当主、ノチェ・バチルタにございます」
「ノチェ・バチルタの伴侶、ノィユの父、ユィクにございます」
並んだバチルタ家を見つめたネニが、微笑んだ。
「噂以上の、精霊一家ですね」
「そんな、滅相もない! 精霊さまがお聞きになったら大憤慨です」
精霊さん激おこは間違いない。特にノィユは! 中身がね!!
ぶんぶん首を振って否定するノィユに、両親も頷いてる。
くすくす楽しそうにネニが笑って、夜の海の髪がさらさら揺れた。
「ゆっくりお勉強してくださいね」
「ありがとうございます!」
バチルタ家一同で頭をさげる。
そろい具合が誇らしくなってきたよ!
お日さまが中天へと昇ったらしい、王都を渡る昼の鐘が鳴る。
「図書館内での飲食は禁じられています。お昼ご飯は、外で食べてくださいね。庭園がおすすめです。春はとても気持ちがいいですよ」
にこにこしてくれるネニに、ありがとうございますと丁寧に頭をさげたバチルタ家は顔を見合わせた。
「お昼ご飯、どうする?」
首を傾げる母に、父も首を傾げる。
「豪華すぎる朝ご飯をいただいたよ。3日分の栄養は摂ったと思う!」
「あんまり急激にご馳走攻撃すると胃がびっくりするかもしれないから、お休みさせるためにも、ここはなしで」
ノィユの言葉にこっくり頷く両親に、見ていたネニが目を瞠る。
「……え? た、食べない、んです、か……?」
「庭園で野草を見つけて生食してもいいんですが」
首を傾げるノィユを、母が背に庇う。
「も、申し訳ございません! ノィユはまだ3歳で、しきたりに疎いところがございまして、勿論バチルタ家は王の庭であらせられる王立図書館庭園の草一本も傷つけないことを、ここにお誓い申しあげます!」
「申し訳ございません!」
母と一緒に頭をさげる父が完璧なタイミングと角度で、ノィユもあわあわ角度を合わせて頭をさげた。
「も、申し訳ございません──!」
そうか、その辺に生えてる野草は食べても誰も叱らないけど、誰かの私有地の植物は、草一本だろうと傷つけたらだめなんだ。
理解したよ、ごめんなさい!
780
お気に入りに追加
2,850
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました。
おまけのお話を更新したりします。
無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。
もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる