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だめなのでした

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「ネニさま、すごいです……! ありがとうございます!」

 感動するノィユと一緒に両親も頭をさげる。
 角度とタイミングが完璧にそろってきたよ、バチルタ家!

「い、いえ……あの、僕、お役に、立ちました、か……?」

「めちゃくちゃ!」

 拍手するノィユと一緒に両親も拍手した。
 ふうわり赤くなったネニが、ほころぶように笑う。

「……よかった。いつも、子どもは引っ込んでろって言われるから」

「はァア──!?」

 素が出ました。
 びくっとするネニと、あんぐりしてカタカタする両親を背に、ノィユは拳を握る。

「本の知識も素晴らしいし、利用者が困っている時に一番たすけになる本を選んでおすすめしてくださるなんて、司書さんの鑑です! まだ幼くていらっしゃるのに、ネニさまのお仕事は丁寧でやさしくて完璧です!」

 叫んだ。

 ふわふわ紅くなったネニが、とろけて笑う。

「……あ、ありがとう。あ、あの、きみの名前、は……?」

「た、大変な失礼を致しました! バチルタ家が長子、ノィユ・バチルタにございます」

 あわてて膝を折るノィユの隣で、母と父も膝を折る。

「バチルタ家当主、ノチェ・バチルタにございます」
「ノチェ・バチルタの伴侶、ノィユの父、ユィクにございます」

 並んだバチルタ家を見つめたネニが、微笑んだ。

「噂以上の、精霊一家ですね」

「そんな、滅相もない! 精霊さまがお聞きになったら大憤慨です」

 精霊さん激おこは間違いない。特にノィユは! 中身がね!!

 ぶんぶん首を振って否定するノィユに、両親も頷いてる。
 くすくす楽しそうにネニが笑って、夜の海の髪がさらさら揺れた。

「ゆっくりお勉強してくださいね」

「ありがとうございます!」

 バチルタ家一同で頭をさげる。
 そろい具合が誇らしくなってきたよ!




 お日さまが中天へと昇ったらしい、王都を渡る昼の鐘が鳴る。

「図書館内での飲食は禁じられています。お昼ご飯は、外で食べてくださいね。庭園がおすすめです。春はとても気持ちがいいですよ」

 にこにこしてくれるネニに、ありがとうございますと丁寧に頭をさげたバチルタ家は顔を見合わせた。

「お昼ご飯、どうする?」

 首を傾げる母に、父も首を傾げる。

「豪華すぎる朝ご飯をいただいたよ。3日分の栄養は摂ったと思う!」

「あんまり急激にご馳走攻撃すると胃がびっくりするかもしれないから、お休みさせるためにも、ここはなしで」

 ノィユの言葉にこっくり頷く両親に、見ていたネニが目を瞠る。

「……え? た、食べない、んです、か……?」

「庭園で野草を見つけて生食してもいいんですが」

 首を傾げるノィユを、母が背に庇う。

「も、申し訳ございません! ノィユはまだ3歳で、しきたりに疎いところがございまして、勿論バチルタ家は王の庭であらせられる王立図書館庭園の草一本も傷つけないことを、ここにお誓い申しあげます!」

「申し訳ございません!」

 母と一緒に頭をさげる父が完璧なタイミングと角度で、ノィユもあわあわ角度を合わせて頭をさげた。


「も、申し訳ございません──!」

 そうか、その辺に生えてる野草は食べても誰も叱らないけど、誰かの私有地の植物は、草一本だろうと傷つけたらだめなんだ。

 理解したよ、ごめんなさい!





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