【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

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誓いの

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 ノィユと両親、ヴィルが見守るなか、エヴィが涙に揺れる瞳をあげる。

「えろいことしないって契約書にちゃんと書いてあるから、渋々! 渋々認めてやるんだからな!
 借金とか、ありえないと思うけど浮気とか、お兄さまにご迷惑をお掛けしたら、即刻離縁だ──!」

 叫ばれたノィユは、ヴィルと繋がっていない方の拳を握る。


「命尽きても、ヴィルだけを愛し続けると誓います──!」

 叫んだ!


 耳まで真っ赤になったヴィルが、繋がっていない方のおっきな掌でちっちゃな顔を覆ってる。


「……俺も」

 ちっちゃなちっちゃな声で応えてくれたヴィルに、顔が溶ける。


 つながる指まで、熱くて
 からまる指まで、愛しくて

 見あげたら、藍の瞳で笑ってくれる。


 世界に、他に愛しいものなんて、ないみたいに

 とろけるように、やさしい瞳で、笑ってくれる。



 ふわふわ紅い頬は、きっと、おそろいだ。



 涙の滲んだエヴィの肩を、トートがやさしく抱き寄せる。

 両親までうるうるの瞳で、真っ赤な頬で、笑ってくれた。

 見つめたザイア陛下は微笑んで、アォナ王配殿下と手を繋ぐ。
 青の瞳を見開いたアォナは、真っ赤な頬をそむけながら、ザイアの手を握った。

 ロダもやさしい瞳で微笑んでくれる。


 ちょっと照れくさくなったらしいザイア陛下は、こほんと咳払いした。

「よし、では俺の魔紋を。王として、ヴィル・ヴァデルザとノィユ・バチルタの伴侶契約を、ここに承認する!」

 ザイアの魔力が紋章となり、伴侶契約書に現れる。
 あふれゆく光に包まれた書が、きらめいた。

 まばゆい輝きが、ヴィルとノィユに降り注ぐ。

 パァアァアアア──!

 ヴィルの額に、ノィユの魔紋が輝いて
 ノィユの額に、ヴィルの魔紋がきらめいた。


 ほんのり熱い額で、ヴィルの額にあらわれた自分の魔紋を見つめたノィユが、とろけて笑う。

 真っ赤な耳で、ノィユの額にあらわれた魔紋を見つめたヴィルが、とろけるように微笑んで、繋がる指をにぎってくれる。


 輝ける光の粒が、天へと高く舞いあがり、ふたりの指先で消えてゆく。



「ヴィルお坊ちゃま、おめでとうございます」

 ロダの目に涙が滲む。


「ノィユ、おめでとう!」

 両親の腕が、抱きしめてくれた。


「ふ、ふんだ! 変なことしたら、すぐ離縁だよ、離縁!」

 ぶうぶう膨れるエヴィの目に滲む涙を、ヴィルの指がやさしく拭う。


「ありがとう、エヴィ」

 ヴィルのちいさな声に、エヴィのかんばせが歪んだ。
 あふれる涙といっしょに、エヴィの腕が兄の背を抱きしめる。


「世界でいちばん、しあわせになってね、おにいさま」

「エヴィも」

 抱きしめあうヴァデルザ家の弟と兄が、輝かしすぎる。


「……顔面最強はヴァデルザ家だよね」

 つぶやくノィユに、精霊と謳われる両親もこくこくしてる。




「ノィユ」

 ほんのり朱く染まる頬で、あなたが、名を呼んでくれる。


「ヴィル」

 火照る頬で、ぎゅっと、あなたの大きな手を握る。


「死んでも、ずっと、あいしてる」


 囁いて、背伸びして、そっと、そっと口づけたら、輝く光がきらきら舞った。





「浮気したら、だめだからね」

 燃える頬で、笑う。



「ノィユも」

 紅い頬で、笑ってくれる。



 からめる指が、たまらなく愛しくて

 燃える頬に、とくとく鼓動が駆けてゆく。





 最愛のヴィルと、正式に伴侶になれました!





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