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おひざだよ
しおりを挟む「ぼ、僕もついてく! お兄さまがだまされてないか、ちゃんと見届けるんだから!」
ぎゅうう、とヴィルの腕に縋りつけるエヴィがうらやましい。
ノィユが抱きつくのは、おひざだ。
「ヴィルにも、エヴィさまにも、トートさまにも、ロダさんにも、決して嘘はつきません! ありのままを正直にお話しします」
エヴィに対抗するように、ノィユにおひざを抱っこされたヴィルが、真っ赤な顔を覆ってる。
「エヴィ、僕らはお邪魔だよ」
なだめるようにエヴィの腰にさりげなく回そうとしたトートの腕が、素晴らしい速度でエヴィに叩き落とされてる。
「邪魔なのはトートだけだもん──!」
「エヴィ──!」
伴侶漫才が楽しい。
「心と、言葉が、裏腹な、エヴィを、ずっと、慈しんで、愛してくれて、ありがとう」
微笑むヴィルに
「お義兄さまにお礼を言われることではありませんから──!」
叫ぶトートの耳が赤い。
こっちもツンデレみたいだよ。
ロダがによによして、ネァルガ家の衛士の皆さんもにこにこしてる。
「エヴィが行くなら、僕も行きます」
ヴィルに対抗するように前に出るトートに、エヴィが細い眉をしかめた。
「えー、トートは来なくていいよ。僕がお兄さまといちゃいちゃしてるところ、そんなに見たいの?」
「エヴィ──!」
トートが号泣してる。
エヴィがほんのり楽しそうだ。
ちょっとトートが可哀想になってきたよ。
衛士さんが馬をもう1頭連れてきてくれて、馬車もひと回り大きな6人乗りになって、皆で王宮に向かうことになりました。
ノィユはおまけ枠で、馬さんたちが頑張って牽いてくれるらしい。
きゅうきゅうになっちゃうので、ヴィルのおひざ抱っこだ。
ほんのり赤い頬で抱っこしてくれるヴィルと、とろけて笑うノィユに
「きぃいイィイイ──!」
エヴィの愛くるしいかんばせが、ものすごいことになってる。
ロダがによによして、トートもちょっぴりうれしそうだ。
エヴィとトート、お似合いみたいだよ!
高位貴族と上位貴族と一緒に馬車に乗ることになった両親が、青くなってカタカタしてる。
馬車でも一番隅っこの下座を死守してる。ロダにも譲りたくないみたいだよ。
ネメド王国では、伴侶を持つことによって、個人の家格が上がったり下がったりはしないのだけれど、ネァルガ家当主の伴侶となったエヴィは、ちょっと配慮されて、ヴァデルザ家当主のヴィルより上座に就くことになるらしい。
「僕がお兄さまより上だなんて、天地がひっくり返っても、ありえないから!」
しゃっとエヴィがヴィルより下座の、ヴィルの隣に座ろうとするので
「じゃあ僕もお義兄さまを立てて」
微笑んだトートが、ちゃっかりエヴィの隣の下座に座ってしまう。
「………………」
一番上座に座っていいのかな、という顔をしたヴィルをよそに、エヴィの隣でにこにこしたトートが手を挙げた。
「出してくれ」
御者さんが応えて、馬さんが走り出す。
緑豊かな帝都郊外にある広大なネァルガ家から、6人乗りの馬車で王都に向けて出発です。
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