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枕を持ってきました
しおりを挟む王の認可はまだだけど、正式に伴侶となったので!
枕を持って、ヴィルの寝室に襲撃に来ました!
だって、初夜だよ!
何にもできないけど、でもでも、初夜だから!
はじめての夜だから!
コンコンコン
火照る頬でノックしたノィユは、息を吸う。
「一緒に寝ても、いいですか……?」
ささやきは、あまく掠れて、夜に落ちる。
聞こえなかったのかもしれない、扉を開けてくれたヴィルが、枕を抱えたノィユに藍の瞳を見開いた。
つややかな洗い髪から、雫が滴る。
おでこが見えて、輝くかんばせが全開だ!
「きゃー!」
燃える頬を両手で覆ってもだもだするノィユに、ヴィルの瞳がまるくなってる。
「の、ノィユ?」
「ヴィルさまが、あまりにもかっこよくて!」
…………………………。
沈黙したヴィルの耳が、ふうわり朱くなる。
紗の天蓋のかかる大きな寝台の向こうで、月が昇ってゆく。
そびえる山並みも、開かれた窓から吹き込む冷たい夜風も、ごつごつの岩の壁も、何もかも見慣れないのに
あなたの傍にいる、それだけで、すべてが愛しい。
寝室のなかへと迎え入れてくれたヴィルは、寝台の傍に置かれた椅子に腰かけた。
ノィユにも椅子を勧めてくれる。
腰かけたノィユを見つめたヴィルは、目を伏せた。
「……その……きみは……ほんとうに、いや、じゃ、ない……? 家のため、日々の糧のためじゃ、ないのか……?」
途切れ途切れの言葉に、ノィユは首を振る。
「何度も言います。何度でも言います」
燃える頬で、ノィユは告げる。
「僕は、あなたを、お慕いしています」
さっと朱に染まる頬を隠すように、ヴィルはうつむいた。
洗い髪が、ひとすじ、頬に流れる。
「……逢ったばかり、なのに……?」
とくとく翔る胸で、ノィユは笑う。
「恋は、落ちるものです」
ちいさな顔を大きな掌で覆うヴィルに、さらさらの月の髪を揺らして、ノィユは首を傾げた。
「ヴィルさま、めちゃくちゃかっこいーから、めちゃくちゃモテるでしょう? 言い寄られるのも、いつものことじゃないんですか?」
いくらもしゃもしゃしてても、イケメンハンターの目をごまかし続けられると思えない!
絶対、いっぱい群がってくるはず!
首を振るヴィルの雪の髪から、雫が落ちる。
「……俺は……口下手で……つまらない、から……」
ノィユは剣呑に眉をしかめた。
「そんなこと言いやがった輩を、ちょっとしばいてきます」
拳を握りしめるノィユに、目を見開いたヴィルがちいさく笑う。
「……ありがとう」
低い声はやわらかに、月の夜に響いてく。
「領地はこんな、北の果てだ。収入も、多くない。だからずっと、売れ残って……でも、ノィユに、逢えたから……よかった」
はにかむように、ふうわり朱い頬でヴィルが笑ってくれる。
「はぅあ……! 僕、僕、もっと早く生まれたかったです──!
ヴィルさまと、えちえちな初夜、したかった──!」
燃える頬で号泣するノィユを、耳まで紅くなったヴィルが、抱きしめてくれる。
「………………俺も」
ちいさな、ちいさな囁きに、噴火した。
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