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驚愕の……!

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 書面を見てると、甘い恋愛じゃなく、家と家との契約なんだなって実感する。
 対等な関係だから、自分の家名はそのまま継いでゆく。
 子どもはおかあさんかおとうさん、すきな家名を名乗れるし、ふたつの家名を名乗っても大丈夫だ。
 平民には家名はないことが多くて、おとうさんの名前はユィクのままだよ。

 伴侶契約を国に提出し、王の認可の魔紋を戴くと、正式に伴侶となる。
 王は認可するだけだから首が絞まったりしないみたいだよ。首絞められまくりじゃなくてよかったね。

 大体の形式は決まってるから、それに付け足したいことや、賠償金の金額などを調整して話し合う。

「ノィユさまが成人するまで手を出さない、を契約書に盛り込みましょう。契約違反していないことを示すことができますから、難癖をつける有象無象を黙らせることができ、我が主の牢屋行きを防げます」

 めちゃくちゃ仕事ができるのだろう執事ロダの言葉に仰け反った。


「えぇ……! ぼ、僕が成人するまで、お、おあずけなんですか──!?」

 一番絶望の顔をしているのは、間違いなくノィユだ。

 ヴィルじゃない。

 さみしい。


「ノィユ、とてもとてもとてもとても残念だろうけど、違法だからね、大切な人を犯罪者にしてはいけないよ」

 しみじみ呟く母が、身に覚えがありそうな感じで、父がうむうむしてる。

「我慢に我慢に我慢を重ねると、それはもう……!」

 身に覚えがあるのだろう父の目がキラキラだ。

「……ちょっと我慢の年数が長くて、ヴィルさまには誠に申し訳ないのですが──」

 すまなそうに肩を落とす父に、真っ赤なヴィルが首を振った。


「そ、その……支援、だけの、つもりだった……から……伴侶になって、くれるだけで……うれしい」

 掠れたちいさな声の呟きを拾ったノィユの頬が溶ける。


「僕も、ヴィルさまの伴侶となれること、とてもとてもうれしいです」

 ごつごつの手を、そっと握る。

 目を見開いたヴィルが、赤い耳で、そっと手を握ってくれる。



「ああ、これはここにいるのが申し訳なくなりますね」

 父が照れくさそうな頬で笑って、母もロダも微笑んだ。

「契約書は前にお話したとおりのものですね、ノィユ、よく読んで、問題がなければ魔紋を」

「はい!」

 早速手をかざそうとするノィユを、ヴィルの指が止める。


「よく、読んで。大事な、こと、だから」

 まっすぐな藍の瞳に、とろけて笑う。


「だって僕、一瞬でもはやく、ヴィルさまの伴侶になりたい。
 ヴィルさまが僕にするなら、酷いことだって、よろこびです」

 うっとり見あげたら、ヴィルが真っ赤になって、母が顔を覆ってた。


「父親にそっくり──!」

「僕か──!」

 真っ赤な父が、わたわたしてる。



 契約書をよく読んだノィユは手をかざす。
 こぼれる魔力が紋様となり、契約書に刻まれた。

 どきどきするノィユの前で、ヴィルが手をかざす。
 あふれる魔力が紋様となり、契約書で輝いた。


 魔力にきらめく伴侶契約を見つめたノィユは、じんとする胸でヴィルを見あげる。


「あなたの伴侶にしてくださって、ありがとうございます」


「俺の、伴侶に、なって、くれて……ありがとう」


 囁いて、手を繋いでくれた。





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