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おまけのお話

レリアの最愛 6

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 ジァルデによると、ルルの伴侶は5人までらしい。

「5番目でもいい。
 傍において、ルル」

 ささやいて、抱きしめたら、真っ赤になって倒れたルルの可愛い鼻から、紅い血がこぼれた。

 そっと、口づける。
 とろけるような甘さに、眩暈がした。

 キュトが隣で、ドン引いてた。


 ジァルデとゼドがゆるしてくれて、魔王のお家の隣に精霊の樹の家を建てて住まわせてもらえることになった。

 魔王の莫大な魔力で辛くはないかと思ったが、魔界とは思えぬ穏やかな気候と、穏やかな皆のおかげで、呼んだ精霊の樹がうれしげに枝を伸ばしゆく。

 立派な大樹になったら、なかを家にできる。
 エルフの長の必殺技だ。

 家なし子にならないエルフの元長だよ。お買い得だよ。
 ルルを振り返って、にこにこしてみる。

「ふぁああ!」

 キュトの方が喜んでいるようだが、精霊の樹もうれしそうなのでよしとする。

「私のうち」

 ささやいて、そっと精霊の樹にふれる。
 さらさら揺れる緑の葉が、祝福してくれるようにきらめいた。


 エルフの里は、エルフのために創った空間だった。
 精霊の樹が暮らしやすいよう、エルフが暮らしやすいよう、透きとおる魔力と緑に満ちたエルフの理想郷だった。

 なのに、どうしてだろう、いつも息苦しかった。
 エルフの長として地位に見合うだけの貢献を常に求められていたからだろうか。
 それを誇りに思っていた自分が、今はなんて、遠い。


 きみの傍で、きみを護りたい。


 私の願いは、それだけだ。


「いつでも遊びにきて」

 ささやいたら、ルルの頬が赤くなる。
 ほんとうは一緒に住みたいけど、我慢がいろいろ、大変に大変そうなので、ルルの気持ちを最優先したい私はお誘いを堪えた。褒めてほしい。

 ほんとうは、ずっと、ずっと傍にいたいけど
 片時だって、離れたくないけれど

 それだとルルは息苦しいと思うから。
 ちゃんと我慢して、今ルルはどの辺りにいるのかなーと気配を追うだけにしてる。

 何かあった時にすぐ駆けつけられるようにするためだ。
 ルルが教えてくれた、すとーきんぐ、というのではないと思う!
 ……たぶん。

 キュトは精霊の樹が気に入ったようで、よく木蔭で魔道具を造っている。
 ルルはクロと駆けまわって遊んでいる。

 尊い。

 こっそり拝んでいたら、遊びにきてくれたジァルデが笑った。
 恥ずかしく熱い頬を伏せる。

「ほんとに、ろーがすきなんだな」

 あまりに当たり前のことを言われたから、驚いた。

「生まれた時から──いや、生まれる前から決まってる」

 告げたら、ジアはやわらかに瞳を細める。

「そっか」

「ジアも」

「うん」

 照れてちょっと赤くなる眦が可愛い。
 同じくらいの背のジアは、視線を横にするだけで顔が見えるから便利だ。

「ジアがルルに慾を持っていなくて、よかった。
 きみの顔面には負ける」

 笑ったら、ジアの細い眉があがる。

「ルルはレトゥリアーレを世界一だと思ってるぞ」

「まさか」

「解ってないとか嘘だろう!」

 仰け反るジアに、魔道具を造っていたキュトが笑う。

「お互いしか見えてないのに、お互いだけが気づいてないんだよ。
 似た者同士だよねー。さすが魂のつがい」

「……5番目でも、百番目でも、ルルの傍にいられたらいい」

 微笑んだら、ジアとキュトの顔がちょっと赤くなる。

「……そーゆー顔は、ひめにだけ見せなよ」

 こつんと肩をつつかれた。

「俺に勝てるぞ、レトゥリアーレ」

 とてもうれしそうに、ジアの柘榴の瞳がひらめいた。

「まさか」

 笑って、クロと一緒に遊ぶルルを、遠くから見つめる。


 それだけで、もう充分すぎるくらい

 しあわせなんだ



 あまりにもルルばかり見つめていると、さすがに申し訳なくなるので、精霊の樹のなかに入って、エルフの魔力を注いだり、家具をつくってもらってみたり、お茶を淹れたりしてみるけれど、ずうっと頭の隅で、ルルの気配を追ってる。

 きもちわるいかな。
 いやがられるかな。

 しょんぼりして止めるのに、もしルルにまた危険が迫ったらと思うと心配で、すぐまたルルの気配を追ってしまう。

 あ、遊び疲れたのかな。
 戻ってきた。

 ルルの気配が精霊の樹で止まる。


 すぐそばに、きみがいる。

 それだけで鼓動は跳ねてゆく。


 キュトと話しているのかな。
 穏やかな気配はクロとともにあって、動かない。

 そうっと覗いてみたら、ふわふわのクロのお腹を枕に、眠ってた。

 愛らし過ぎて、悶えた。

 尊い。

 家のなかでこっそり拝んでから、毛布を持って外に出る。
 魔道具の製作を続けているキュトが笑って手を挙げた。

 起こさないように、そうっと、ルルに毛布をかける。
 クロの鼻がふんふん鳴って、薄目を明けて私を見た。

「しー」

 ひとさし指を唇にあてたら、眠るルルのやすらかな寝顔を見て、ぽふぽふルルの頭を撫でたクロは、また目を閉じる。

 眠るルルとクロがあんまり可愛くて

「伝説の魔法使わない?」

 ひそひそキュトに囁いたら

「使用済み」

 魔法で録画した映像を見せてくれた。

「是非くださいお願いします」

 拝んだ。

「精霊の樹に入らせてくれる?」

「いつでもどうぞ!」

「取引成立!」

 硬い握手を交わした。


 これでちょっぴり、すとーきんぐがましになるといいな。
 ち、ちがう、すとーきんぐじゃなくて、心配だから!

 ほんとだから!




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