【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

  *  

文字の大きさ
上 下
107 / 130
おまけのお話

しあわせの向こう 下

しおりを挟む



「……夢じゃないかって毎日思うのは、私だ。
 夢に見るんだ。ルルに憎まれ、怨まれ、ルルの剣に貫かれ、ルルを貫いて息絶える夢を」

 レトゥリアーレの指が、ふるえる。

「『あなたが一番、憎かった』毎夜、ルルに告げられる」

「ごめんなさい」

 抱きしめたら、レトゥリアーレのちいさな顔が、僕の髪に埋まる。

「私は、間違った。ルルを想っているなら、解らないから、壊してしまいそうだからと恐れて、誰かに世話を頼むべきじゃなかった。ルルが苦しんでいることさえ知らず、ルルを傷つけた。──二度も」

「僕がレリアに逢える喜びでつやつやだったから、解らなくて当然だよ」

 笑う僕に、レトゥリアーレは首を振った。

「……ごめんなさい」

 かすれる涙声に、僕はレリアを抱きしめる。

「僕の方こそ、心にもないことを言って傷つけて、ごめんなさい。
 前のルルは、間違ったんだ。レリアの心に残りたくて、レリアに憶えていて欲しくて、だから『憎かった』って酷い嘘を」

 僕を抱きしめるレリアの腕が、ふるえてる。

「……粉々に壊れて死んだ記憶が、離れない。
 エルフを絶滅に導き、ルルに憎まれ、冤罪の魔王を斃し、生きたことが災厄だった私が、ほんとうの私なんだ」

「レリアは僕の、しあわせだった!」

 蒼の瞳が、揺れる。

「傍にいられたら、鼓動が熱くて、胸がふるえて、泣きたくなるんだ。
 あなたを、いつも、いつも思って。あなただけを想って。
 僕は、今も、前も、しあわせでした」

 背伸びした爪先で、そっと最愛に口づける。

 重なるぬくもりが、あふれる気持ちを伝えてくれたらいい。
 指をからめて、ぎゅ、と握る。

「あなたは、僕の、愛です」

 燃える頬で、ささやいた。

 ちいさなレリアのかんばせが、ぐしゃりと歪む。
 泣きじゃくる、ちいさな子どもみたいなレリアを、抱きしめる。

「……やり、直したい。最初から。
 都合のいい願いだって、解ってる。
 でもちゃんと最初から、ルルのお世話をして、この手で慈しんで、育てて、愛したい」

 ぎゅうぎゅう抱きしめられて

「気持ちだけで充分だよ」

 笑った僕の服の裾を、クロが引っ張った。

「つれてきた!」

 ぶんぶんクロの尻尾が振られてる。
 後ろには、息子のラブシーンにちょっと赤い頬のジァルデとゼドが立っていた。
 あわあわしてレリアと隣に並んだら、ジアの銀錫色の角が閃く。

「ほんとのろーは、1歳くらいだ。
 戻ってみちゃう?」

 ジアの銀錫の爪が輝いた。

 キュアァアァアア──!
 あふれる光に包まれた僕の身体が、縮んでく──!

「ふに──!」

 わたわたする僕を、レリアの腕が抱きしめた。

「ルル……!」

 ぎゅうぎゅう抱きしめてくれるレリアの涙に、頬が濡れる。

 ……1歳の幼児になっちゃった……!

「ふにぃいい──!」

 ぐしぐし無く僕の言葉を、クロが通訳してくれる。

「ろー、よるは、おとなになりたい!」

 胸を張って言ってくれた。
 ジアとゼドが真っ赤になって、レリアが噴火してる。

「……やり直したい。
 私の願いを、叶えてくれる……?」

 うるうるの瞳でおねだりされたら

「あい」

 ぎゅっとレリアをちっちゃな手で抱きしめるしか、できない。

「ルル──!」

 ぎゅうぎゅう抱きしめてくれるのが最愛の推しだなんて、絶対、絶対夢だと思うのに。
 夢だなんて、絶対、いやだ。

「わかった。夜は18歳な」
「合法、大事」

 ジアとゼドがうむうむしてくれる。

「ありあ、と、おか、たま、おと、たま」

 ぺちぺち掌でお礼をしたら、真っ赤になったジアとゼドが顔を覆った。

「ろーが、かわいー……!」

「伸び方、やめ!」

 もふもふのゼドにまた言われたよ。

「わ、私の名を、呼んでくれる……?」

「れー、あ」

 きゅ、とおっきくなったレリアの指を握る。

「はぁあぁう……!」

 顔を覆ったレリアがうずくまる。

「はー、ちっちぇーなー、これだと敵意もあんま湧かねーかも!」

 風磨が笑って

「おぉおお! これがひめの本当の姿か──!」

 キュトたんが拝んでくれて

「ひめが赤ちゃんになった──!」

 チチェとエォナが走ってきた。

「ふふん」

 魔山羊のおかあさんがミルクをわけてくれる。

「ああ、だめだ、今度はゆっくり成長したいらしいから」

 ジアに止められた魔山羊のおかあさんが、停止した。
 しょんぼり肩の落ちる魔山羊のおかあさんを、お兄ちゃんとお父さんが慰めてる。

「おかーた、ありあ、と」

 ぺちりと手をたたいたら、いつもの凛々しい顔がちょっと崩れたことなどなかったかのように、おごそかに頷いてくれた。

 わちゃわちゃした騒ぎに、お昼寝をしてたグィザが起きてきて、ちっちゃくなった僕に琥珀の目をまるくしてる。
 遊びに来たヴァツェーリヤも僕を覗きこんで笑った。

「孕ませる?」

「絶対だめ──!」

 真っ青になったレリアが僕を抱きしめる。
 ぽこりとグィザがヴァツェーリヤを『め!』して、涙目のレリアを僕の手がぺちぺちする。

「れー、あ、しゅき」

 尖った耳の先まで真っ赤になったレリアが、頽れた。



 というわけで、朝から夕方までは1歳、夜だけ18歳な暮らしが始まりました!

 いやもう、夢でしょ。
 ありえないでしょ。

 思うけど、でもレリアが恥ずかしそうに、うれしそうに僕のお世話をしてくれるのが、めちゃくちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃ可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて尊死しそうです。

 お手洗いはひとりで行くよ。
 一歳児でもそこは頑張るぜ! な僕は、結構優秀な一歳児だと思う。
 お世話をしたかったらしいレリアはしょんぼりしてた。
 ごめんね。
 でもそこは譲れない!

 夜は、日中全然喋れなかった分、いっぱい話すかと思ったら、いちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃしてるので、あんまり話してません。

「レリア」

 ちゃんと発音できて、抱きしめられて、口づけられて、肌を、ぬくもりを重ねられるさいわいを、毎晩噛み締めてます。

 しあわせすぎて、溶けそう!


 レリアのさみしい夢が、なくなるように。
 間違ったら何度でも、いつだって、生きてる限り、やり直せるように。

「いっぱい、いっぱい、しあわせになろうね」

 微笑んだつもりが

「いぱー、いぱ、しーせ、なろー」

 にこにこして、ちゅう、口づける。
 尖った耳まで真っ赤になったレリアが、ぎゅうぎゅう僕を抱きしめてくれる。

「まちがーて、けん、かして、も、なかなお、しよーね」

 こくこく頷いたレリアが、ぎゅうぎゅう僕を抱きしめた。

「きみだけを想う」

「れーあ、だいしゅき!」

 ちっちゃな僕の笑顔が、レリアの傷を癒せたらいいな。
 願う僕は、今日もちっちゃな手で最愛を抱きしめる。

 泣いたレリアは何度も頷いて、僕を抱きしめてくれた。



 夢の『憎んでた』さえ『愛してる』に変わるまで。
 ずっと、ずっと、あなたの傍で、あなたを想う。

 最期の夢じゃ、いやなんだ。

 レリアをしあわせにするのは、僕だから。






──────────────

 最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

 とても長い間、更新も全くなかったのに読んでくださる方がいらっしゃることを、とてもとてもうれしく思っています。

 2年弱ぶりの更新だったのに、たくさんの方が読んでくださったみたいで、ほんとうに吃驚しました。
 ご感想も、お気に入りも、いいねも、エールも、心からありがとうございます!
 夢のようにうれしいです。

 ありがとうございます!

しおりを挟む
感想 187

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

断罪された悪役側婿ですが、氷狼の騎士様に溺愛されています

深凪雪花
BL
 リフォルジア国王の側婿となるも、後宮の秩序を乱した罪で、リフルォジア国王の側近騎士ローレンスに降婿させられる悪役側婿『リアム・アーノルド』に転生した俺こと笹川望。  ローレンスには冷遇され続け、果てには行方をくらまされるというざまぁ展開が待っているキャラだが、ノンケの俺にとってはその方が都合がいい。  というわけで冷遇婿ライフを満喫しようとするが、何故か優しくなり始めたローレンスにまだ国王陛下を慕っているという設定で接していたら、「俺がその想いを忘れさせる」と強引に抱かれるようになってしまい……? ※★は性描写ありです。

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

処理中です...