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しあわせのはじまり
しおりを挟む精霊の樹の影で、こっそりズァビエが泣いてた。
僕は、ジァルデとおそろいの銀煤色の角のズァビエを、ぽふぽふする。
「ちゃんと、あきらめるんだよ。
ズァビエだけの誰かを、見つけなくちゃ」
こくこく頷いたズァビエが、僕の手を握ろうとするのを、レトゥリアーレが、ブリザードの瞳で叩き落とした。
「ルルは私の最愛だ」
『触るな、ゴルァアアアア!!』が、レトゥリアーレから噴きあがる。
レトゥリアーレが僕にやきもちをやいてくれるなんて、夢みたい!
うれしすぎる!!
ほわほわ熱い頬で、レトゥリアーレの手を握ったら、レトゥリアーレは形のよい唇を尖らせた。
「浮気は、だめだからね?」
拗ねたみたいな、透きとおる蒼の瞳で、ちょっぴり上目遣いで、下から覗き込むみたいに、見あげてくれる。
「はぁああう♡
僕の最愛の推しが、可愛いぃいいい────!!」
鼻を押さえて倒れる僕を、クロが支えてくれて、ジァルデがゼドとらぶらぶで忙しいので、キュトがきゅるるる氷枕を作ってくれた。
レトゥリアーレに振り払われた手をしょんぼり見つめたズァビエは、ゼドのちっちゃな家に、目を細めた。
ジァルデのために探された、絶海の孤島そっくりのちいさな村に、ジァルデのために建てられた、ジァルデのおじいちゃんの家にそっくりな家を見つめる。
「……ジァルデは、しあわせかな」
ズァビエのちいさな声に、僕は、微笑む。
「とびきり、しあわせだよ」
零れる涙を拭ったズァビエの姿が、次元の向こうに掻き消える。
「みんなで、やさしい光のほうに、向かえたらいいね」
クロを抱き締めて笑ったら、レトゥリアーレが鼻を押さえてうずくまった。
「私の最愛が、可愛すぎる────!!」
キュトがきゅるるる氷枕をつくって、レトゥリアーレの鼻にぎゅうぎゅう押しあててくれる。
精霊の樹が、さやさや揺れて、透きとおる光を振り撒いた。
僕の指先には、闇の光が燈る。
やさしい、クロの光が。
歪んだ愛が、僕を惑わせる時も。
歪んだ闇が、皆を襲うときも。
きっと、僕は、止められる。
僕の傍には、クロが、いてくれるから。
最愛の推し、レトゥリアーレが、いてくれるから。
僕は、
クロを、
レトゥリアーレを、
闇を、
愛しているから。
「ステータス、オープン!」
久しぶりに叫んでみました。
フォン
透ける画面が、目の前に現れる。
『ロロ・ルル(前世は遥樹) 闇の光の愛し子 よみがえりマスター
人間として生まれたが、瀕死の魔力枯渇から魔山羊の乳で回復したため、ほぼ魔族。
闇の魔力が強すぎ、他の魔法は使えなかったが、エルフの長、レトゥリアーレの精液を注がれ過ぎたため、光の魔法も使えるようになった。
闇と光と愛の合わせ技で、150という驚異のよみがえりを成功させる。
鼻の血管は弱め。
孕むまで、あとちょっと。
称号 クロのともだち レトゥリアーレの愛し子 ジァルデの愛し子
ゼドの愛し子 チチェの溺愛 エォナの溺愛 勇者の村人の敬愛
ツアー客の敬愛 魔物軍の恐怖 悪魔の御子 キュトの寵愛
レトゥリアーレの初恋 レトゥリアーレの執着 レトゥリアーレの溺愛
風磨の警戒 グィザの寵愛 獣人の敬愛 精霊の樹の寵愛 ヴァツェーリヤの敵
レトゥリアーレ愛エルフの敵 エルフの親愛 ズァビエの親愛
結腸責め大すき♡』
…………最後のは、レトゥリアーレ以外には見えませんように!!!
「ルル?」
レトゥリアーレが首を傾げて、僕はあわあわ、ステータス画面を消した。
「楽しいこと、書いてあった?」
首を傾げるレトゥリアーレに、熱い頬で、僕は笑う。
「僕、レリアの、初恋?」
真っ赤になったレトゥリアーレが、掌に顔をうずめて、頷いた。
「僕も、レリアが、初恋!」
尖った耳まで紅い、最愛を、抱きしめる。
ちゅ、ちゅ、と真っ赤な頬に口づけたら
ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう、抱きしめられて
とろけるしあわせが、降ってくる。
最愛の推しを殺すモブに転生しましたが、全力で救いました!
レトゥリアーレを殺す、世界一むかつくモブ、じゃなくて、
レトゥリアーレに愛されるなんて、世界一むかつくモブ、になってたらいいな。
最愛の子を孕むまで、えっちにいそしみまくりたいと思います!
──────────────────
最後まで読んでくださって、心からありがとうございます!
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