【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

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ジアの愛

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「魔王、やめる」

 突然のゼドの宣言に、ゼドのちっちゃなお家の前に招集された魔王直属軍の皆さんが、仰け反った。


「そ、それは、ジァルデ様ふぁんくらぶになってもいいというお達しでしょうか!」

 違う!!!

 突っ込んだのは、僕だけだったらしい。


「うむ!!」

 ふ、ふぁんくらぶでいいみたいだよ。
 フリーダム、魔王直属軍。


「魔王というのは、魔界で最も強い者がなる。
 だが、ろーが崩壊させたゾォガ帝国を見て、思った。
 身分で誰かを分け、蔑んだり、差別したり、圧制を敷いたりは、よくない。
 よって、我はただのゼドとなる」

 ゼドがもふもふの手で胸を叩き、隣でジァルデは微笑んだ。


「俺はただのジァルデだ」

「はあぁあ♡ ジァルデさま、尊い────!!」

「どこまでもついてゆきます、ジァルデさま────!!」

 皆の歓呼の声に、ゼドはうむうむ頷いた。


「ジアは、びぼうらしい。
 非常によく、ありえぬほど狙われるため、そなたらの献身はありがたく受ける。
 ジアを襲う輩は、我が粉砕するゆえ、心得よ」


「勿論です、まお……じゃなかった、ゼドさま!!」

「でも、ゼドさまが魔王じゃなくなったら、えぐいのが魔王になりますよ?」

 ふぁんくらぶの言葉に、ゼドは、もふもふの拳で胸を叩く。


「我が、粉砕する」

「おぉおお! さすが、ゼドさま──!!」

 拍手に応えるゼドは、威厳たっぷりに頷いた。


「魔界の統治はせぬ。
 ジアとのらぶらぶに、これからの我の一生を費やす!!」

 拳を掲げるゼドに、拍手が降り注ぐ。


 え、あ、あの、そ、それでいいのかな……?


 ジアが真っ赤になってるので、いいと思う!



「我はあと百年ほどしか生きられぬ。
 ジアを苦しめてしまうかもしれぬ。
 我には、ジアの隣に立つ資格はないのかもしれぬ。
 それでも我は、ジアの傍にいたい」


 ジァルデの手を、ゼドの手が握る。

 ゼドの手を握り返したジァルデは、柘榴の瞳で、漆黒の瞳を見つめた。


「寿命なんて、誰にも解らない。
 ゼドより俺のほうが、早く死ぬかもしれない。
 突然の病、突然の死、思わぬ死は、いつもそこに口を開ける」


 ゼドの瞳が、揺れる。

 柘榴の瞳をやさしく細めて、ジァルデは微笑んだ。 


「俺の母と父も、魂のつがい。
 俺と、ゼドも、魂のつがい。
 片方が死ねば、片方は後を追う」


 ジァルデの指が、ゼドの頬に触れる。


「一緒に死ねる、ゼド」


 どこまでも透きとおる微笑みに、ゼドの瞳が揺れる。



「……ジア、それは……」


「しあわせだよ。
 ゼドのいない世界で、俺は、生きられない」


 ジァルデの腕が、ゼドを抱きしめる。




「おおぁあおおお────!!」

 ジァルデふぁんくらぶの皆さんの悔し涙と悲哀の叫びが、ゼドのちっちゃな村を揺るがせて、けれど皆、涙を拭って顔をあげた。


「ジァルデさまと、ゼドさまのしあわせを見守り隊を、結成致します!」

「魔界の宰相とか色々候補を決めてくるので、採決だけお願いします!」

「ジァルデさま──!!
 ど、どうか、お、おしあわせに────!!」

 皆が涙ながらに拍手して、ジァルデはちいさく笑った。

「ありがとう」


「はぁああうぅ♡」

「その微笑みだけで、一生を捧げます────!」

「ジァルデさま、愛してる────♡」

 皆の歓声に、ゼドがむっとするかと思ったら、隣でうむうむ頷いてる。


「ジアを愛するのは、当たり前だからな!」


 笑うゼドを、真っ赤になったジアが、抱きしめた。




「……ゼド、大すき」


「愛してる、ジア」


 ぎゅうぎゅうジァルデを抱きしめたゼドが、ジァルデをおひめさま抱っこして、ジァルデのためだけに建てたお家に帰ってゆく。










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