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もしかして……?

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「ぴゅ――い――――!!」

 きゅうきゅう僕にくっついた、僕と同じくらいの大きさの虹の竜が、
胸を叩いてくれる。


 グィザが通訳してくれなくても、何となくわかる。


 僕が孕ませられたら、絶海の孤島に連れてってくれるんだね!



「死ぬか」

 キュオォオオオァアア――――――!!

 レトゥリアーレの周りに異次元が展開するほど魔力が凝集する。

 虹の瞳を吊りあげた竜は、ちいさな鼻を鳴らして、僕が吹き飛んだ。

 一瞬で駆けたクロが、僕をのせてくれる。


「うう、クロ、いつもありがとう」

「とぶ、ろー、かわいー♡」

 ぶんぶん尻尾を振ってくれるクロが可愛いよ!!


「ああ、うん、ひめを無理矢理どうこうしようとするなら、僕も闘うよ。
 グィザをどうこうしようとする場合もね」

 キュトの掌にも、異次元が展開する。


 レトゥリアーレとキュトを見つめたヴァツェーリヤは、ちいさく笑って、
虹の竜は鼻を鳴らした。


 おっきいゼドに掴まってたから、吹き飛ばなかったよ!
 僕、えらい!


「グィザ、ゆっくり、孕ませる。
 孤島、約束」


 連れてってくれるのは、うれしいですが。

 いやいやいや、ゆっくり孕ませは、えぇええぇええ――――!!


 あれ。
 真っ赤になったグィザが、断固拒否っぽくないので、竜と虎のかわいい子が
できるかもしれない。

 さすが、みんな、子どもが産める世界ね!


「ナハロ、もう、いない」

 グィザの言葉に、ヴァツェーリヤが項垂れる。


「俺、ナハロ、ちがう。
 目、覚ませ」

 ぎゅ、と唇を噛んだヴァツェーリヤは、吐息した。


「……ごめん、グィザ」

 ちいさな声に、グィザの手が、ヴァツェーリヤの頭をなでなでする。
 赤くなったヴァツェーリヤは、ちいさな子どもみたいに笑った。


「……ナハロの手、思い出す」

 目を伏せたグィザは、そっと手を外す。


「時魔の里、行く」

 グィザの言葉に、ヴァツェーリヤは頷いた。



 つややかな手が、虹の翼に変わってゆく。

 虹の髪は、たてがみに
 しなやかな身体は、巨大な竜へ
 変わらぬままの虹の瞳が、グィザを見つめた。


「ピュ――イィ――――」

 見あげたグィザが、首を振る。

 ちょっと項垂れた竜は、皆に背を向けてくれた。


 の、乗っていいのかな。
 連れてってくれる?

 グィザのお尻は無事ですか――――!!



「ぴゅーいー!」

 僕と同じくらいの虹の竜に抱きつかれた僕は、思わずなでなでしたくなる手を
引っ込めた。


 なんかまた、孕ませるとか言われてそうなので!

 僕も学習するのですよ!


「ピュイ」

 ヴァツェーリヤが、首を振る。
 しょんぼりしたちいさな竜は、僕から離れた。


 たぶん、一緒に来てくれるつもりが、だめだって言われたんだろう。

 えげつない海に向かうから、子どもは危険だ。

 そんな酷い場所に向かってくれるヴァツェーリヤと、ついてきてくれようとした
ちいさな竜に、頭をさげる。


「ありがとうございます。
 孕ませる以外で!! 僕にできることがあれば、何でも力になります」


 告げたら、レトゥリアーレとキュトとゼドの掌で、竜に向けて異次元が
展開して、ヴァツェーリヤは喉を鳴らして笑った。


 ちっちゃな竜が、ふんがと鼻を鳴らして、僕はやっぱり、吹き飛んだ。










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