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グィザ、ぴんち!

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 虹の翼が、なめらかな虹の光の腕に
 つややかなたてがみは、光を放つ虹の髪に
 虹の光を宿す瞳がきらめき、伸ばされた手が、グィザに向かう。


「ナハロ、よく来た、ナハロ!」

 虹の竜が、虹の輝く人になって、グィザを抱き締める。
 琥珀の目をまるくしたグィザは、ちょっと赤くなって、首を振った。


「ナハロ、死んだ。
 俺、グィザ。
 ナハロの血、継ぐ」

 虹の瞳が、見開かれて、揺れる。


「…………ナハロ、必ず、戻てくる…………
 ……約束、した……」

 虹の瞳にあふれる涙を、慰めるように、そっとグィザの手が撫でた。


「ごめん、ヴァツェーリヤ」

 グィザの言葉に、見開かれた瞳が、やわらかに細められる。

 なつかしそうな瞳は、グィザのなかを見通すように、ひらめいた。


「ナハロの言葉、ナハロの血。
 グィザのなか、ナハロいる」

 微笑んだグィザは、頷いた。


「結ばれる!
 孕ませる!」

 抱きしめられたグィザが、真っ赤になって、ぶんぶん首を振る。


 ────竜、求愛、はやいな。


 僕の頭をぽふぽふしているのは、子どもの竜みたいだよ。

 気に入ってもらえたみたいでうれしいけど、孕ませるのはだめ──!!










「ナハロ、約束。
 ひめさま、時魔の里」

 虹の瞳を見開いたヴァツェーリヤは、ようやく僕に気づいたかのように、僕を見た。

 ちょっと首を傾げたヴァツェーリヤが、にっこり笑う。


「孕ませる?」

「だ、だめです────!!!」

 拳を握って、絶叫した。








 伝説の霊峰の麓に、伝説の虹の竜(多分おこちゃま)と、絶世の美貌の竜人とともに降り立った僕とクロとグィザに、キュトも、レトゥリアーレも、ゼドも、目を剥いた。

「ほ、本物の竜だ────!!
 で、伝説が目の前に────!!」

 キュトたんの目が、♡だ。

 僕にくっついている虹の竜に対する目が、ブリザードです、レトゥリアーレさま。

 グィザにくっついている絶世の美貌の竜人には、生あたたかい目が、皆から向けられる。


 グィザは、ちょっと赤い顔で、ぐいぐい、くっつくヴァツェーリヤを引き離した。

 離されるもんかと、ぐいぐいグィザの細い腰に腕を絡ませるヴァツェーリヤに、皆の視線が、更に生あたたかくなる。


「絶海、孤島?」

 首を傾げるヴァツェーリヤに、生あたたかい目だったキュトが、飛びあがる。


「伝説の竜とお話できるなんて、めちゃくちゃ光栄です!
 僕は伝説の魔導士、永遠の美少年、キュトたんです!」

 人外の美貌の竜人に向かって、美少年と高らかに自称できるキュトたん、つおい──!!

 かわいいあほ毛から、ふわもこの靴の先までキュトを見つめたヴァツェーリヤは、おごそかに頷いた。


 永遠の美少年が、伝説の竜に認定された────!!


 真っ赤になったキュトが、きらきらの目で、早速世界地図を広げてくれる。


「ここが霊峰ザァラバーリ、現在地です。
 ドボゥゾァの海を越えた、この先に、時魔の住まう里がある。
 伝説の竜なら、死の海を、超えられますか」


 ヴァツェーリヤは、首を傾げた。


「死の海?」

 ゼドが、頷く。


「雷雲に覆われ、渦潮が逆巻く、魔法を拒む、荒海だ」

 ヴァツェーリヤは、反対側に首を傾げた。


「雲の下?」

 ヴァツェーリヤの言葉に、きょとんとしたキュトが頷き、レトゥリアーレは微笑んだ。


「雲のうえは、どこも変わらぬ、青い空ですか」

 こくりと頷いたヴァツェーリヤは、グィザの頭のうえに、ちいさな顎をのせる。


「グィザ、もらう。
 飛んでいい」

 グィザの、ちいさなお尻を撫でまわすの、止めてあげて──!
 ああ、そこは、大事なところ──!

 ぎゃあぁあああ────!!


 僕と一緒に真っ赤になったグィザを、ヴァツェーリヤの腕から引き剥がす。



「ジアをたすけるために、グィザを売るような真似を、僕はしません────!!」


 涙目で、叫んだ。


 





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