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ライバル、来た!

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 キュトとレトゥリアーレの魔法で傷は治ったとはいえ、獣人たちは疲れ果て、よれよれだ。

 せっかくのお耳も尻尾も、ぺしゃんてしてる!
 なんて悲劇!

 戻ろうにも、国は焼き滅ぼされて、ボロボロだ。


「とりあえず、ジアと魔王さまに相談しよう!」

 僕が手を挙げると、獣人たちの顔は真っ青になった。


「ま、ままままままお──!」

「こ、こここ殺さ、る──!」

 僕は慌てて首を振る。


「めちゃくちゃやさしい、もふもふ魔王だよ。
 魔力がものすんごく強い者を、魔王って言うんだって。
 人間に捨てられて、エルフに殺されそうになった僕をたすけてくれたのは、ジアと魔王さまだよ」

 にこにこする僕の隣で、レトゥリアーレが俯いた。


「……すまない、ルル」

 そっと、レトゥリアーレの銀の髪をなでなでした僕は、微笑んだ。


「だから、皆も大丈夫と思う。
 たぶん、ジアにお願いしたら、お金湧くんだよね。
 皆を食べさせることができるはず!」

 使えないと断言された伝説複製魔法に、全力で頼りたい!


「元気が戻ったら、国に帰って復興しよう。
 今、国に帰っても、皆倒れちゃうよ」

 僕の言葉に、顔を見合わせた獣人の皆が、グィザを見る。
 グィザは、こくりと頷いた。


「ひめさま、たすけた命。
 ひめさま、おまかせ」


 グィザが胸に手をあて、膝をつく。
 獣人たちも、あわてたように胸に手をあて、膝をついた。


「ひめさま、おまかせ」


 いやいやいや──!
 僕、なんか責任重大になってる────!



「くぅううううう!
 僕、めちゃくちゃ回復魔法使ったのに!
 苦手なのに、がんばったのに!
 ひめさまのほうが、愛されてる──!」

 嘆くキュトを、そんなことないよ、と慰めた時だった。



「え、待って待って待って。
 なんでゾォガ帝国の城が崩れてんの?
 地下に捕らえられてるはずの獣人が勢ぞろいしてんの?
 グィザが隻眼にならないまま、ふさふさしてるー!
 きゃ──! かっちょい──!」

 もだもだする学ランの男子高校生に、僕は引き攣った。


 榛の髪が、さらさら揺れて、榛の瞳が、きらきらグィザを見つめてる。
 黒い学生服は、ゲームで見たとおりの古風な感じ満載だ。


 なんて、わかりやすい異世界転生!



「あー、えーと、きみは、佐鳥風磨くん?」

 聞いた僕を見た高校生の口が、あんぐり開いた。



「出たぁああああぁあァアア────!!!!
 世界一むかつくモブ!!!!!」


 指された僕が悄気る前に、レトゥリアーレとキュトとグィザと獣人たちが前に出る。


「死ぬか」

「当然でしょ」

「殺す」

「ひめさま、守る」

 口々に呟かれた言葉に、僕も高校生も跳びあがった。



「うっそ、キュトとレトゥリアーレだ!
 はー! 生キュトすげえ!
 生レトゥリアーレ、やばい!
 拝もう」


 真っ赤になって、キュトとレトゥリアーレを拝みだした高校生に、皆が顔を見合わせる。

 僕はなんか、ともだちになれる気がしてきた!



「え、えと、佐鳥くん? 僕は──」


「知ってるよ! こんのクソが!!!
 レトゥリアーレを殺すなんて、俺が絶対絶対絶対絶対、させねえんだからなぁああアァアアア!!!!」


 額の血管が切れそうな勢いで叫ぶ高校生に、レトゥリアーレが剣を振り下ろそうとしたのを、キュトが慌てたように止める。


「いやいやいや、レトゥリアーレ守るって叫んでる子を、一撃で殺すのやめよう」

 素晴らしい突っ込み!


「僕は、レトゥリアーレさまを生かし、しあわせにするために転生したのです!」

 拳を握って叫ぶ僕に、高校生は目を瞬いた。


「え? そ、そうなの?
 もしかしてあんたも異世界転生?」

 僕はしっかり頷いた。


「世界一むかつくモブ、ルルは、レトゥリアーレさまの腕のなかで死にました。
 エルフを全滅させ、レトゥリアーレさまを傷つけたことを、心から悔い、すべての闇の魔力と魂を捧げ、やり直したいと願った。
 ゲームの知識を持ち、レトゥリアーレさまを世界で一番愛する僕が、ルルの魂を補完するために選ばれたのです」


 おお! と目を輝かせて聞いていた高校生のオーラが、淀んだ。



「はあ?
 ふっざけんな!!
 世界一レトゥリアーレを愛してるのは俺だ!!!
 俺は絶対に、お前の毒牙から、レトゥリアーレを守る!!!
 そのために転生したんだからなぁあアァアアア──!!!」




 ライバル、来た────!!








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