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ちっちゃい僕と、作戦会議

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「はにゃー」

 のどかな魔王さまのお家にふさわしくない溜め息をついたら、大きな手が僕の頭をわしゃわしゃ撫でてくれる。


「どした」

 ジァルデの柘榴の瞳を見あげて、ちっちゃい僕は、呟いた。


「あやしい人が多しゅぎて、訳わかんない」


 魔王さまの、おこのみで、魔王さまのお家では僕、ちっちゃいです。

 幼児!
 舌足らず復活!

 しょげる僕に、ジァルデが目を瞬いた。


「勇者の村にね、おひめさま見学隊が来ててね、知らない人でいっぱいなんだよ」

「ヅァギの新たな罠か?」

 眉を顰めるジァルデの言葉に、絶望した。


「だったら、しゃいあく!」

 肩を落とす僕の頭を、もふもふの手が、ぽふぽふしてくれる。


「危機に陥ったら、きっとろーの名を呼んでくれる」

 ゼドのつぶらな瞳は、いつも癒しだ。


 この目に魔王、似合わないな!
 いつも思う。


「魔王しゃまは、どうして魔王しゃまなんでしゅか?」

 聞いてみたよ。


「黒目、黒毛で、魔物のなかで一番強かった」

「なるほど。
 って、ええ! ジアよりも?」

 ジァルデが、笑う。


「魔王さま、4次元斬れる」

「しゃいきょうでしゅ!」

 仰け反る僕に、ゼドは、もふもふの肩を落とした。


「……うれしくない」

「どうしてでしゅか?」

 ゼドは、吐息した。


「……ジアと、ふたりで、のんびり生きていきたかった。
 魔王って言われて、仕事押しつけられて、ジアが殺されるなんて、最低だ」


 角まで赤くなりそうなジアが、めちゃくちゃかわいー!


「ジアを守るのでしゅ!
 それに、ヅァギが魔王したいなら、魔王しゃせてあげれば?」

「性格悪くて弱いから、なった瞬間殺される」


「なるほど。
 それだと魔王しゃまを勇者が倒しても、ヅァギが魔王になれる道はないでしゅね」

「ろーの書いた本によると、エルフが絶滅させられるんだろう。
 エルフの血は、魔物にはご馳走だ。魔山羊の乳みたいなものだな。
 魔物に狩られたエルフは数を減らし、里を隠匿するようになった。
 生き残りのエルフの血を飲みまくったなら、強くなったんじゃないか」


 うわあ。
 世界一むかつくモブの僕がしたのは、エルフを絶滅させるだけじゃなくて、最悪な輩を魔王に押し上げることだった!


 さすが、世界一むかつくモブ!
 動かせる気がしない!



「エルフの里も、守らねばでしゅ!」


 レトゥリアーレは生き残るの確定だし、僕をいじめて殺そうとしたエルフは、どうなってもいいかなってちょっと思ってた。えへ。


 だって、僕が暗躍して、エルフの隠れ里の場所を教えて、魔物軍を誘導しなきゃ、エルフは絶滅しないと思ってたよ!

 しかし、僕が暗躍しなくても、ヅァギがやるかもしれない。


 全力阻止!



「することいっぱいだな」

 楽しそうな柘榴の瞳を見つめ返して、僕は、にんまり笑う。


「ジアと魔王しゃまの、しあわせ未来のためにね!」


 真っ赤になった、おそろいのふたりが、めちゃくちゃかわいー!








 でも、エルフの里を守るって、どうするの?

 血が狙われてますよ、気をつけてねって手紙を送る?
 読んでくれるかな?

 僕がエルフの里をうろちょろする方が、目立って反感買いそう。


「うーん。
 ヅァギが強くなっても、勇者に魔王しゃまを殺しゃせたってことは、あんまり強くなれなかったってことだよね?
 あ、違う、人に罪をなしゅりつけたい卑怯だ!」


 しかし、ヅァギが黒幕と断定してるけど、正しいのかな。
 伏兵とかいそうだな。
 間違ってる可能性もあるよ。


 エルフの里を守るったって、魔物軍が攻めてきたら、僕、一撃で終了だよね。
 魔王さま、軍を動かしてくれるかな。

 勇者の村全滅は直接死因だけど、エルフの里全滅は間接死因だからなあ。


 それに、魔王さまに頼ってばっかりも情けない。


 …………うーん。


 唸る僕の頭を、ジァルデの手が撫でてくれる。


「一遍にしようとすると、潰れるから。
 ひとつずつ」


「あい」


 ジアのおっきい手をにぎにぎして、笑った。







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