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破滅を潰しに、勇者の村へ!
しおりを挟む僕たちは、ジアを守り隊!
なので、ジァルデを攻撃された時の防御と撤退を考えるために、ゼドや僕が全力でジァルデに攻撃を仕掛けることになった。
ジァルデが、めちゃくちゃ引き攣ってた。
でも、ジアを守るためだから!
ゼドの全力攻撃は、僕がビビるのは当然として、ジァルデでさえ震えるほど、やばい。
吠えられるだけで、魂抜けそうになる。
戦闘音楽と、すんごい効果と必要ないよ。
存在だけで、こわい。
それを繰り返し受けてると、凄まじい圧に耐えられるようになってきて、ジァルデがどんな攻撃を苦手としてて、どうフォローに入ったらいいのか、わかるようになってきたよ!
ちょっと戦えるようになると、ジァルデが魔王直属の魔王軍の訓練場という名の荒野に連れて行ってくれた。
砂と岩の平原を、カラリと乾いた風だけが吹き抜ける。
忽然と現れたジァルデに、鍛錬していた魔王軍の皆さんが、目を剥いた。
「じ、ジァルデ様──!!」
「魔王補佐、ジァルデ様ご来臨!!」
「整列!!」
「敬礼!!」
ザッと音をたて、一斉にビシッと敬礼してくれる皆さんは、めちゃくちゃかっこよかった、のだけれど。
「じ、ジァルデさま!」
「生ジァルデさま!!」
「尊い────!!」
皆、敬礼した後、拝んでる。
ジア、光り輝いてるからね。
めちゃくちゃかっこいーからね!
ジァルデを見あげる魔王軍の皆さんの目が、♡だった。
いいのかな、と、こっそりついてきていたゼドを見あげると、ゼドの目も♡だった。
問題ないみたいだよ。
陣形とか隊列を組む訓練をしてる魔王軍の皆さんを見おろしながら、ジァルデが索敵の魔法や陣形把握を教えてくれる。
僕は、世界一むかつくモブらしく、闇の魔法しか使えないんだけど、索敵とかステータスオープンとかは、無属性魔法だから使えるみたい。
よかった。
偵察、大事だからね!
こっそりついてきた魔王は、おっきいので全然こっそりしていなくて、あわあわした魔王軍の皆さんが、慌てて敬礼してた。
魔王軍だからね!
ジァルデ軍じゃないからね!
ジアが軍をちょっと動かせるって、これか。
納得した。
楽しいことも、くるしいことも、血を吐くことも、たくさんありつつ、皆で、めちゃくちゃ頑張ったと思う!
僕も、16歳の身体に大分慣れた。
前世は42歳だったからね。腰とか肩とか手首とか股関節とか痛かったからね。
コンビニで頑張ってるのに、たるんたるん、運動神経も不自由だったからね。
痛くない、速く動ける、身体が軽い!
ジァルデの凄まじい攻撃と、ゼドのありえない攻撃を避けるためには、限界を超えるしかなくて、クロと一緒に僕も頑張った。
主にクロが頑張ってて、僕はおまけだったけど、頑張った。
必死で逃げまくってたら、バク転とかできるようになったよ。
仕組みが僕にも、今ひとつわからないよ。
とりあえず、逃げ足と防御と突撃だけは自信出た!
という訳で、勇者の村に、出陣です!
まず最初は、偵察が大事だと思う。
提唱した僕のせいで、ほんとは人間じゃなくなってるっぽいけど、見た目完璧人間なはず、しかも弱っちくて世界一むかつくモブの僕が、偵察にゆくことになったよ。
残るのが、角の凛々しい超絶美形ジァルデと、もふもふ魔王と、巨大なもふもふ犬クロなので、唯一の選択だ。
勇者の村は、ゼルア大陸の辺境のド田舎にある、一見、素朴な村だ。
連なる山々と深い森に秘されるように佇む村は、地図にさえ載っていない。
村を守るように広がる森は、迷いの森と呼ばれている。
星も陽も隠す樹海は、入ったら二度と出られない。
誰もが畏れ、忌避する、恐ろしい森だ。
だから近くの村の人たちも、勇者の村の存在を知らない。
秘境の村には、エルフの血を引くと謳われる、人間なのに魔法を使える、迷いの森に平気で入って出て来られる、ものすんごい一族が住んでいる。
だから勇者なんだよね。
だから滅ぼされちゃうんだよね。
エルフの隠れ里みたいな存在だよ。
守る、一択でしょう!
まだ滅ぼされてませんように!
偵察にゆく僕のために、ジァルデが時空を切り裂いてくれる。
ジァルデの時魔の力は、迷いの森の恐ろしさも、何事もなかったように飛び越える。
…………魔物軍も、こうして急襲したのかもしれない。
どうか、無事で。
祈るように向かった村は、まだ長閑に存在してた。
よかった!
僕はクロと一緒に、こっそり村の様子を伺う。
おっきいクロは目立つかもしれないけど、僕ひとりで偵察とか、本気で無理!
クロに背負って逃げてもらえないと、僕、泣くから!
勇者の村は、ゲームでは殆ど出なかったというか、滅ぼされて終了なので、建物の位置が一致してるかとかは、わからない。
勇者、いるのかな。
村人の顔を、こっそり木陰から伺う僕は、思いきりあやしい人だと思う!
────ジアに、時を止めてもらって、あちこち覗き見すればよかった?
引き攣った僕が、一旦帰ろうとした時だった。
「おひめさま、何してんの?」
………………。
何か、色々おかしいけど、僕に、話しかけてる?
おそるおそる振り向いたら、さらさらの栗色の髪に、栗色の瞳の勇者が、首を傾げて立っていた。
手には、ちょっと萎びた緑の草を持っている。
…………え。
ゆ、勇者はまだ6歳の筈じゃ──!
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