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人間じゃなくなってた!
しおりを挟む滑舌がよくなりましたので!
再度挑戦!
「ステータス、オープン!」
指を掲げる。
クロが、指の先を見つめてくれる。
ジァルデの柘榴の瞳は、やっぱり可哀想な子を見る目だ!
フォン
ちいさな音がして、半透明の画面が目の前に現れる。
出た!
出たよ!
なんか出た!
よ、読んでみるよ!
『ロロ・ルル 半魔
人間として生まれたが、エルフ山羊の乳を飲み、魔山羊の乳を飲んで育ったため、魔力をその身に宿す、半魔となる。
称号 クロのともだち レトゥリアーレの愛し子 ジァルデの愛し子 魔王の愛し子 魔山羊のお母さんの子 魔山羊のお兄ちゃんの弟』
「……レベルとか、スキルとかは? HPとMPは? チートは?」
モブだから、ないの?
でも称号は、めちゃくちゃうれしい!!
えへへへへ。
皆の愛し子!
魔山羊のお母さんの子!
魔山羊のお兄ちゃんの弟!
クロのともだち!
片思いじゃない!
両想いだよ!
前世では、ともだちと思ってたのは僕だけだったんだね、ばっかりだったよ。
さみしい思い出、さようなら!
うわあん! ありがとうクロ!
涙出た!
ぎゅうぎゅうクロを抱き締めたら、わふわふ、クロが僕の涙を嘗めてくれる。
感激で、忘れそうだったけど。
僕、人間じゃなくなってた!
「戦に出るんだ、訓練したほうがいい」
ジァルデの言葉に、僕は首を振る。
「時間がないよ。
勇者の村が滅ぼされたら終わりだ!」
ジァルデの長い銀煤の爪が、輝き始める。
「俺は、時を操れる。
時魔だ。
ろーの時を、止めることができる」
ジァルデの爪が切り裂いた先は、真っ暗な空間だった。
色も、匂いも、香りもない。
きっと、時の流れもない。
「ジア、すごい」
拍手する僕に、ジァルデは眉をあげる。
「……ゼドを守れず、死ぬんだろ」
静かな声だった。
僕は、ジァルデを見あげる。
「ジアの弱点を知ってるのは」
「時魔の一族だな。
数少ないが、口を割らせれば、吐くだろう」
僕は、真っ直ぐ、ジァルデの柘榴の瞳を見つめる。
「ジアを守るために、僕に、教えて欲しい」
僕の目を見つめ返し、ジァルデは笑った。
「いーよ、かわいーから」
わしゃわしゃ、大きな手が、僕の頭を撫でてくれる。
「俺らは、時を止めて戦闘するからな。
ほぼ無敗、無敵だ。
だから魔王さまの傍に仕えてる。
この力が使えなくなると、やられる」
僕は、頷いた。
「角だ。
叩き斬られると、力が使えなくなる」
躊躇うことなく教えてくれたジァルデに、涙が滲んだ。
「なんで泣く」
「……ジアの一番、大切なこと、人間の僕に、教えてくれた」
柘榴の瞳が、瞬いた。
「だから、泣くのか」
「うれしくて。
僕のこと、信じてくれた?」
銀煤の長い爪の手で、ジァルデが僕の頭を撫でてくれる。
「信じてねえと、育てねえよ」
ふわりと、ジァルデが屈む。
びっくりするほどの麗しのかんばせが、近づいた。
ふわふわの感触が、頭の天辺に触れる。
……髪に、キスされた──?
耳まで燃えた僕に、ジァルデは声をたてて笑った。
「かわいーね」
「ジア!」
顔が熱いよ。
燃えそうだよ。
「ろー、いじめたら、め!」
きゅ、と大きな目を吊りあげるクロに、ジアは柘榴の瞳を細めて、笑った。
ジァルデが時を止めてくれて、僕とクロの特訓が始まる。
聞いたゼドも参加して、ジァルデを守り隊を結成した。
時魔でも随一の力を持っているというジァルデを殺すのだから、向こうも時魔を連れてくる可能性が高い。
でも、どんなに時を操れても、ゼドを背に守りながら、一対百だと、苦しいらしい。
時を操るには、魔力を使う。
ひとり、ふたり止めるなら造作もないが、百、千、万となれば、倒れる。
自分ひとり助かろうとすれば逃げるだけだが、ゼドを守る、が入った場合に、ジァルデは苦戦することになる。
数で圧倒されたら、分が悪い。
「軍の掌握が急務です。
反逆されたら、一瞬でお終い! 放置とかありえないから!」
拳を握る僕に、ジァルデは吐息した。
「めんどくせえ」
「死ぬから!」
「わかった」
「魔王さまも、ほのぼの政治は、しばらくお預けです。
恐怖政治でお願いします!」
「ジアのためなら、頑張る」
ゼドも、もふもふの拳を握る。
自分ひとりが死ぬなら、別にいいよ。魔王になりたいなら、なれば? みたいな、やさし過ぎるゼドは、ジァルデが殺されるのが、耐えられないらしい。
ジァルデのためなら、苦手な恐怖政治も張り切ってくれそうだ。
いつも素っ気ないジアの頬がほんのり紅いのは、突っ込まないであげるね。
僕、世界一むかつくモブの称号、できたら返上したいから!
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