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おまけのお話 しあわせお花見

おべんとつくるよ!

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「……え……す、すごい、ぶるぶるする……!」

「ふふん」

 瓶底眼鏡を光らせて胸を張るトエは、かわいー!

 し、しかし、大人なおもちゃは、すんごく大人だよ……!
 も、持ってるのが、ちょっと、は、恥ずかしー!

 あわあわ鞄に仕舞う俺に、トエが喉を鳴らして笑った。


 そ、そういうわけで、今度の……今夜の? ディゼとのえっちがどきどきに
なりましたが!

 寮の調理室で、トエと一緒にお弁当つくるよ!


「本の通りにやったら間違わないと思うんだよ。
 料理は化学だ!」

 拳を握るトエが、白衣を着てくれたんだけど、だ、だいじょぶかな。
 もしかして、俺、人選間違った?


 あわあわしてたら、覗きに来てくれた寮監のゾイが、上腕二頭筋を
盛りあげる。


「調理室で化学の実験をしてはいかん!」

 俺はあわてて手を挙げた。


「おべんとつくる!」

「…………白衣でか」

「料理は化学だ!」

 拳を握るトエの瓶底眼鏡がきらめいて、ゾイはおごそかに頷いた。


「……がんばれ」

 かわいそうなものを見る目だった気がするけど、気のせいだよね。

 ゾイの許可ももらったので、おべんとつくるよ!


「リユィ、お水を計ろう!
 米がべしゃってなるのは水が多いから。
 焦げるのは火加減が違うから!」

「はい、先生!」

 ちゃんと計るよ。
 前は、こんくらい? って、てきとーに水を入れたから、びしゃびしゃになった!


「リユィ、卵を割ろう!」

「はい、先生!」

 ぐしゃ

 卵の殻が一緒に投入された。

 うん。
 俺の卵を割る技術は全く向上できないね!

 瓶底眼鏡を輝かせたトエは、にっこり笑った。


「リユィ、茶こしを持て!」

「はい、先生!
 ……茶こし?」

 首を傾げつつ、ゾイがいつもお茶を淹れている茶こしを持ってくる。
 もうひとつボウルを取り出したトエは、茶こしを構えた俺のうえから、卵の殻で
がしゃがしゃになった卵液を注いだ。


「殻が混入したら、取り除けばいいんだよ!」

「さすが先生!!」

 熱い頬で、全力で拍手した。
 トエもちょっと赤くなって、瓶底眼鏡を輝かせて笑ってくれる。

 ふるいだと目が粗いと通過しちゃうっぽいけど、細かい茶こしなら、砕けた
小さな卵の殻も取れるよ!
 ちょっと卵液も通りにくいけど、卵の殻が入るよりましだから!

「火加減よーし、フライパン温度よーし!
 リユィ、卵液、投入!」

「はい、先生!」

 お出汁で伸ばした卵液を、真っ黒な鉄のフライパンに投入!

 じゅわっと熱くなって、ぽこぽこ卵が盛りあがる。

「わぁあああ!」

 拍手する俺に、トエはうむうむ頷いた。


「料理人のようにひっくり返す技術は、我々にはない。
 よって、我々なりの手段でひっくり返そう。
 リユィ、濡れ布巾用意!」

「はい、先生!」

 布巾を濡らして絞ったよ!








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