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おまけのお話 キーザの初恋
変わる世界
しおりを挟む僕は、うん、なんていうか、そう、言いたくないけど、たらし?
可愛い子を見たら声を掛けずにいられないし、すきって言ってくれたら
おつきあいしたいし、おつきあいしたら繋がりたいし、愛を深めたい。
気持ちいいことは大すきだし、僕のことをすきって言ってくれる子も、だいすき。
生まれた時から僕は 『愛する人は生涯只ひとり!』 という観念が、すっぽり
抜け落ちてた。
なんだか皆と違うらしい、と気づいたのは、少しずつ仲良くなれるはずのジェミと、どんどん距離が開いていったからだ。
僕はいつも周りを可愛い子に囲まれていて、それを見るジェミの目は、どんどん
冷たくなった。
人見知りは寡黙な落ち着きになり、お父さんの遺伝子の力なのか、ジェミの鍛錬の成果なのか、ちいさな頃のびっくりするほど愛らしい美少年を脱ぎ捨てたジェミは、筋骨隆々の逞しい青年になった。
それはそれで大変美味しい僕は、ジェミと仲良くなりたくて、話しかけてみるのだけれど、返ってくるのは
「ああ」
「うん」
「下半身をどうにかしろ」
この3つだった。
しょんぼりだ。
ジェミの僕を見る目はどんどん冷たさを増し、そのさみしさを埋めるように、
僕のことをすきと言ってくれる子に溺れた。
僕の周りには可愛らしい美少年が集まり、3歳のころからご学友として仲良くしてくれたアルフォリアにまで溜め息をつかれる破目になった。
しかし。
「あ、あの、ず、ずっとお慕いしていました……!
い、一度だけでもいいんです、あ……あの……お情けを、くださいませんか……?」
おっきな瞳をうるうるさせて、僕に縋って、僕のことをすきと言ってくれる、
めちゃくちゃ可愛い子を、断れる?
「忘れられないんです、キーザ様……!
どうか、もう一度、お願いします……!」
真っ赤になって縋ってくれる可愛い子を、断れる?
「何番目でもいいんです、お傍にいさせてください、お願いします……!」
僕に縋って、泣いて、僕をすきだって、傍にいたいって言ってくれる子を、
断れる?
僕に 『断る』 という選択肢は、なかった。
まるで最初から、僕の貞操観念は皆無で、『断る』 選択肢は選べないように。
アルフォリアに溜め息をつかれても、ジェミの目が氷になっても、仕方ないこと
なのかなって納得してた。
だって僕に『断る』という選択肢がなかったから。
ないものは、選べない。
それこそ、仕方ないよね。
この世界がゲームで、同じ時を繰り返し、たまに僕に向かってくるぴんくの髪の子の相手をすることも。
繰り返し、繰り返し、もしかしたら何万年も、この世界から抜け出せないことも、仕方ない。
そう、思っていたのに。
リユィが、この世界を縛る檻を、砕いてくれた。
僕の前には、『断る』 という選択肢が、燦然と輝くようになった。
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