【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい！

おまけのお話 えっちな薬、発売だよ！

みんなの未来は

　3年の卒業式まではまだ夏も秋も冬もあるけど、皆はもう、ゲームそのままの台詞で、ゲームのスチルそのままの顔で笑ったり泣いたりしなくていい。


「僕も、王子じゃなくろうと思う。
　リユィと一緒に行きたいな」

　微笑むメファが俺の手を握って、


「俺も、国のことが終わったら、リユィの傍に」

　碧の瞳をやわらかに細めて、アルフォリアが笑う。


「エルフと人間が、魔界の瘴気に堪えられたらいいがな」

　ディゼが唇の端をあげた。


「おいでっ言ってくれたのに──！！」

　涙目でふくれるメファは、めちゃくちゃかわいー！


「いつか、国がなくなったらいいよね。
　領土争いとか、戦争とか、種族や身分、LGBTQを差別すること、世界の苦しい、哀しいことが、ちょっとでもなくなるように、がんばりたい！」

　拳を掲げる俺に、いじわるっぽく閃くぴんくの瞳で、レイトが笑う。


「リユィって、頭入ってないと思ってた」

「入ってるよ！！　失礼な！」

　ぷりぷりする俺の頭を、トエがなでなでしてくれる。


「頭のしわは、ちょっと少なそうだけどね」

「失礼だから！！」

　ちょっと涙目になる俺を、ぽふりとディゼが抱きしめてくれる。


「リユィはいつも、がんばってる」

　微笑んでくれるディゼがかっこよすぎて、やさしすぎて、腰が砕ける！


「ディゼ、リユィに酷いことし過ぎて、今絶賛甘やかし大王だから」

　キーザの言葉に、ジェミが頷く。


「あれは酷かった」

「お前に言われたくない！！」

　ディゼが緋色の目を剥いた。


「どっちも、めちゃくちゃ酷いから！！」

　叫んでくれたのはレイトで、俺は目をまるくする。


「…………僕、主人公だと思ってたから。
　拉致監禁、無理矢理、調教、ハーレム、産卵、モブレ──……！
　バッドエンドになったらどうしようって、毎日ふるえて、泣いてた。
　リユィにいじめられたらどうしようって、避けようと思ってるのに、勝手に身体は突っ込んでいって、いじわるするし。
　頭がおかしくなりそうなくらい、怖かった」

　ちいさな声が、ふるえてる。


「……大変だったね」

　ささやいたら、ぴんくの瞳が泣きだした。


「うわあん！　リユィ、いじめてごめんね……！！」

　ぎゅう、と抱きつかれた俺は、レイトの背に手を回す。

　俺の傍には、ずっとディゼがいてくれたけど。
　イォとも離れてしまったレイトは、きっとずっと、ひとりぽっちだった。

　思っていたより華奢な背を、抱きしめる。


「最初からあきらめてたら、何にも変わらない。
　変えられない。
　無理だって何度も挫折して、それでも皆抗おうと、がんばった。
　皆の力で、皆の想いで、きっと、ほんの少しずつでも、世界を変えられる」


　天にのばした手を、つかむ。


「信じて頑張ったら、きっと、世界は変わってく」