【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

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輝く光

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 輝く光に溶けた世界で

「がんばったな」

 かあちゃんが、笑ってくれる。


「よくやった」

 親父が、頭を撫でてくれる。


「…………俺、死んだ…………?」

 かあちゃんの腕が、親父の腕が、抱きしめてくれる。


「死なせるわけ、ないだろう」

「俺らの命の欠片を、息子に」


 かあちゃんの命が、親父の命が、俺のなかに流れ込む。

 ほんのり輪郭を湛えた俺の背を、かあちゃんと親父の手が、押してくれた。


「戻れ」

「かあゃんと、親父は!」


 めちゃくちゃかっこいー顔で、親父が唇の端をあげる。


「俺は世界で一番強いんだぞ。
 かあちゃん連れて、冥界まで来るなんて、鼻歌だ」

 笑う親父の額には脂汗が滲んでいて、俺は親父を抱きしめる。


「心配かけて、ごめん。
 親父の威光を振り翳して、ごめん。
 俺、最低だったのに……命まで削ってたすけてくれて……ありがとう」

 涙とごめんなさいしたら、眉をあげた親父が、笑う。


「かあちゃんに、ちょこっと似てるお前が、可愛くてたまらなくてな。
 俺と、かあちゃんの子だって思ったら、顔が溶けてさ。
 俺のこと、すげー偉いって思ってるのも、可愛くて。
 お前が俺の権威を振り翳すたび、うれしかったのは、俺なんだ。
 残念な悪役っぽくなっちまったのは、俺のせいでもある」

 親父の言葉に、かあちゃんが頷く。


「皆、リユィが大すきで、甘やかし過ぎてしまった。
 学園で、辛い思いをいっぱいしただろう。
 ごめんな」

 あったかいかあちゃんの腕が、抱きしめてくれる。

 平凡というよりは残念気味な男性体の淫魔なかあちゃんの紫の瞳が、やさしくて。
 ディーを除くと、かあちゃんの顔が、世界で一番すきだと思う。
 
 きっと、親父もそうだ。
 かあちゃんを見る目が、いつもドロドロだから。

 とびきり愛しあう、世界の至宝みたいなふたりから生まれた、愛の結晶だと思うのに。


「こんなに残念なできそこないで、ごめんなさい」

 しょげる俺に、親父の目が吊りあがる。


「はぁア!?」

 青筋、こわい!
 魔力ダダ漏れ!
 息苦しいよ、親父!!


「今のはよくないぞ、リユィ」

 ふくれたかあちゃんが、むに、と俺のほっぺたを摘んだ。


「卑下したら、周りも、自分も、皆かなしい。
 そんなことないって言って欲しいなんて、もっとさもしい」

「ご、ごめんなさい」

 涙目になった俺を、親父の腕が、抱きしめる。


「リユィは、がんばったよ」

 やさしい声に、涙があふれる。


 親父は、世界一強いのに。
 何にもできない俺を、歯がゆく思うことばかりだろうに。

 抱きしめて、背をぽんぽん叩いてくれる。

 俺に、笑ってくれる。



「俺らにも責任がある。リユィだけのせいじゃない。
 くるしめてしまって、ごめん、リユィ」

 かあちゃんの腕が、抱きしめてくれる。


「お前は、俺の息子なんだからな!
 尻くらい拭いてやる!」

 胸を張った親父が、おっきな手で、わしゃわしゃ俺の頭を撫でてくれた。


「俺、命が繋がったら、絶対、絶対、かあちゃんと親父に返すから!!」

 ふたりが微笑んで、俺の背を押してくれる。

 俺は、大すきな両親を、見あげた。


「……俺、ちゃんと、できたかな。
 世界を、変えられた?」

 紫の瞳で、かあちゃんが微笑む。


「見たら、わかる」

 とくりと、鼓動が跳ねる。


「…………俺は、ほんとうの、俺になった……?」

 親父が、笑う。


「リユィはずーっと、リユィだよ」

 くしゃくしゃ、大きな手が、俺の頭を撫でてくれる。


「泣いてるから、行ってやれ」

 かあちゃんの声が、光の世界に、やさしく響く。



 ふたりの手に背を押された俺は、涙のほうへ、駆けだした。






「リユィ──────……っ!」


 俺を呼んでくれる、ディーのもとへ。










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読んでくださって、心からありがとうございます!

リユィとディゼの漫画です。もしよかったら!

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