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紫の瞳
しおりを挟むかあちゃんも俺も、はじまりの淫魔の血を継ぐと謳われる、紫の瞳を持って生まれた。
はじまりの淫魔。
この世界のすべてのものの、おかあさん。
この世界を創った者に愛され、その命と引き換えに、すべてのものに生を与えた。
その時、願いを叶えてもらえたという。
男性体だったというはじまりの淫魔は、すべての者が子を成せる世界を願ったと言われてる。
そして、自分と同じ紫の瞳を持つ者の願いをひとつ、その命と引き換えに叶えてくれるようにと。
はじまりの淫魔は、すべてのもののおかあさんだけれど、淫魔にだけ、その血は濃く継がれてゆく。
紫の瞳は、はじまりの淫魔の血を継ぐ者にしか、宿らない。
俺は、その瞳を持って生まれた。
命と引き換えに願いを叶えてもらえる瞳と、前世の記憶を、この身に宿して。
お伽噺だって、笑うかな。
でも、前世の記憶を持ったのが俺なのは、何万年ものアルフォリアの、トエの、皆の世界を変えたい祈りが届いたからだと思うんだ。
レイトじゃなくて、俺が、この世界を縛る強制力を壊せるのは、俺だけが、紫の瞳を持ち、前世の記憶を持つ、この世界を変える者だからだと思うんだ。
頭弱く、魔力最低、何をやらせても残念な悪役の俺、主人公になったって、回されて快楽堕ちを喜ばれるだけの存在の俺が、世界を変えるだなんて、笑えるかな。
でも、俺だけが、できるなら。
俺だけが、この世界を、ほんとうの姿にできるなら。
やってみたいと思うんだ。
ゲームには登場しない、かあちゃんと親父が、俺をたすけてくれるから。
きっと、この世界を変える穴を開けられる。
今、ここでおじさんに犯されるのを回避したって、また同じことが繰り返されるだけだから。
今、ここで世界を変えられるなら
今、皆のくるしみが、終わるなら
今、皆が、ほんとうの自分になれるなら
今がいいと、思うんだ。
俺は、俺じゃ、なくなっちゃうけど。
また生まれ変わって、きっと、皆に逢いにくるから。
強制力のなくなった世界で、また、かあちゃんと親父の子どもに生まれて
また、ディーに逢いにくるから。
今度こそ、ほんとうに、ディーを愛したいから。
逢えたら、抱っこしてくれたら、うれしいな。
だめかもしれないけど。
今度こそ、本当にきらわれちゃうかもしれないけれど。
でもそれが、ディーのほんとうなら
きっと、愛しい。
きらわれても、それでも、愛してる。
俺のこの気持ちが、偽物だなんて、絶対ちがうと思うから。
ディーを愛してるが、ほんものだって、証明したいから。
やってみるよ。
強制力で縛られた皆を、解放するために。
世界の時を、進めるために。
闇のディーも、大すきだよって、抱きしめるために。
ちいさな♡の尻尾に、手を伸ばす。
歯を食い縛り、思いきり、引き千切った。
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