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がんばるよ!
しおりを挟む「……リユィ……」
闇黒の炎を噴きあげるのに。
嗤っているのに。
ディゼの真っ暗な瞳から、涙が伝い落ちる。
ディゼも、きっと、本当は、こんなことしたくない。
でもディゼのなかの闇は、きっと、叫んでる。
酷い薬を使われても。
見知らぬおじさんに犯されて、快楽堕ちしないで。
俺を、愛してるって言って。
こんな酷いことをする俺でも、愛してると。
こんな闇を抱えた俺も、愛してると、抱きしめて。
どうか、闇に堕ちた俺を、愛してください。
真っ暗な慟哭が、聞こえるようだった。
ディゼへと伸ばそうとした手を、黄色い歯を剥いたおじさんが阻む。
「ヒヒヒヒヒ!
やせ我慢が、どこまで続くかなあ。
この薬は強烈でねえ、使った者を主人として認識する。
私に跪きたくてたまらないだろう?」
ドブの息で、おじさんが嗤う。
むっつりした俺は、
「ふぬぬぬぬぬ!!」
かあちゃんに教えてもらった、とっておきの淫魔の特技を発動した。
紫紺の光が、走る。
パァアアン――――!!
おじさんが隠し持っていたらしい小瓶がすべて、粉々に砕け散った。
「ぎゃああアア!!」
硝子の破片が刺さったらしいおじさんが悲鳴をあげて、大人しくなった
俺の股間に、ディゼも、トエも、目を剥いた。
「ま、さか――――!」
「解毒した!?
ゲームマスターの薬を!?」
手足を縛られたまま、俺は胸を張る。
「俺のかあちゃん、すんごいんだぞ!!」
世界一強くて、世界一かっこいー魔王をドロドロにするんだから、間違いなく
すんごい。
かあちゃんの一族は、世界のはじまりの淫魔の天下一の尻を受け継ぐ淫魔だ。
物凄く狙われて、物凄く陰惨な目に遭うので、防御の特技と魔法が異様に
発達したらしい。
ストーカー撃退も、えげつない薬を解毒も、基本中の基本だ!!
「俺の親父も、すんごいんだからな!!」
魔力最低な俺のために、魔王だった親父は宣った。
『お前は、かあちゃんに似て、紫の目を持つはじまりの淫魔の血を継いでいる。
理不尽なことに巻き込まれたり、苦しい目に遭ったりするかもしれん。
俺の息子なら、自分で何とかしろ!! と思うが、お前、半分、かあちゃん
だからな。
かあちゃんは、俺が全力でたすけねばならぬ!!』
という理屈で、防御魔法だけは、元魔王なチートを授けてくれた。
高い魔力の魔法を粉砕するには、より高い魔力の魔法をぶつけるか、
より高い魔力の防御魔法で防ぐかの2択だと思われてる。
だから魔力が高い者に、魔力が低い者は決して勝てないと。
だが親父は、溺愛しすぎてドロドロなかあちゃんを、親父がほんのちょこっと
目を離してしまった時も護るために、凄まじい研究の末、破魔の魔法を編み出した。
魔法を繰り出すには、魔力と魔紋が要る。
俺が間違えて発動しなかった、あのむつかしい紋様ね。
その魔紋を打ち消す魔紋を繰り出せば、魔法は破れる。
魔力が最低の俺だってできる、最高の防御だ。
簡単そうに思えるけど、これがまあ複雑怪奇すぎて全く解らなかったので、
頭弱い俺用に、半分かあちゃんだからの理屈で、親父はチートな破魔魔紋を
授けてくれた。
親父は、ディゼを、超える。
俺が繰り出した魔紋が、ディゼの黯黒の蔦を、粉砕した。
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