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つくるー?

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「ゾイ、俺、お弁当つくりたい!」

 手を挙げた俺を見おろしたゾイが、凛々しい眉を吊りあげる。


「学園の遠足に、部外者を連れて行ってはならん!」

 ぷくりとふくれる俺に、ゾイはいかめしく首を振った。


「そんなかわいー顔してもだめだ!!」

「おべんとーつくる!」

 ちっちゃな拳を掲げる俺に、ゾイはため息をついた。


「だめって言っても、連れてく気満々だろう」

「だって、お花見だよ!
 一緒に見る!」

 むん、とちっちゃな胸を張る俺に、ゾイは長々ため息をついた。


「じゃあ、弁当作っていいから、夜に寮を激しく揺らすのを止めてくれ。
 毎晩地震だぞ!?
 落ち着いて寝られん!」

 叫ばれた俺は、しおしお悄気る。


「ご、ごめん。かあちゃんに聞いてみる」

 困った時の、かあちゃん頼み!

 管轄外ってディゼは聞いたみたいだけど、えろ魔法特化な淫魔仲間が、何か知ってるかも!

 親父も知ってるかもだしな。
 かあちゃんに聞いたら、親父ついてくるからな。

 改善に全力を尽くしますな俺の目を覗き込んだゾイは、うむうむ頷いた。


「よし! 尽力するように!
 では、調理場の使用を許可する。
 材料は自分で買ってくること!」

「え──!」

 今から買いに行ってたら、夜になっちゃう!
 夜はディーといちゃいちゃして、えっちする時間だよ♡

 早起きしてお弁当つくるとか、無理だから。
 朝は俺、生まれたての小鹿だから!

 夕方の今つくって、氷魔法で保存したい。
 魔力ちょっぴしな俺でも、おべんと保存くらいはできるはずだ!

 から、今食材が必要です!


「食材分けてくれないの?」

「だめ!
 制服などは支給するが、お金のことは、ちゃんとする!」

 そうでした!


「お金払うので恵んでください!」

 ちょっと眉をあげたゾイは、頷いた。


「輸送費として、1割上乗せした金額でいいなら」

「おお! ゾイ、やさしー!
 お願いします!」

 頭をさげて、お財布をにぎる。
 メファがちゃんと日払いでバイト料を恵んでくれるので、お金あるよ!


 ゾイが分けてくれたのは、フランスパンみたいなパンと、レタスとハムとチーズだった。

 俺の料理スキルを理解してるとしか思えない食材の選択!
 切ってサンドウィッチ作るほうが、絶対ましなのができるのは解ってる!

 でも!


「ちゃんとお弁当がいい。
 ごはんと、卵焼きと、ウインナーと入ってるの!」

 眉をあげたゾイは、米と卵とウインナーとほうれん草を恵んでくれる。

 全部あるんだよ、さすが日本のBLゲーム!


「野菜も食え」

「はい! ありがとう、ゾイ!」

 むきむきの筋肉の手を握ったら、ちょっと赤くなったゾイは頷いた。


「…………しかし、こんなちっさい尻で、寮全体を揺らすえろ…………」

「か、考えたらだめ────!!」

 あわあわした俺が手を振って、赤くなったままのゾイは頷いた。


「火事を起こさないよう、火にはよく気をつけるんだぞ!」

「はい!」

 食材を受け取った俺は、腕まくりしてみた!



 目の前には、鍋と食材が鎮座した。




 うん。

 どうやって、米を炊いたらいいのかな??









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