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ちょっぷ痛い
しおりを挟むビカ──────ッッ!
コピー機みたいな激しい光とともに、イォの愛らしい絵が、新しい紙に転写されてゆく。
「おぉおおお!!」
メファとふたりで拍手して、トエは照れくさそうに笑った。
「魔力消費が凄くて、実用品にできなさそうだったけど、使える人がいた!」
…………いや、人じゃなくて、エルフだから。
俺が魔力低いから使えないんじゃなくて、皆使えないコピー機だった!
もしかしたら、使える人間はいないかもしれないよ、トエ!!
ほんとのことは言ったらだめなので、黙る。
メファはちょっと首を傾げて、頷いた。
「これくらの魔力消費なら、大したことない。
百枚くらい作ってみよう!」
ちいさな拳で胸を叩くメファに、拍手する。
「わー! 残り魔力に気をつけて、頑張ってください、社長!
俺、紙を瓶に貼ってゆきます!」
「よろしく頼むよ、きみ」
「はい、社長!」
ふふん、と社長らしくメファが胸を張って、隣でトエが、ぷくくく笑う。
「ちっちゃい会社のちっちゃい社長とちっちゃい社員、かわい──なあ!」
「ちっちゃい言う……」
俺が拳を握る前に、
ぺし!!
メファのチョップが、俺のおでこに降ってくる。
「僕は!! ちっちゃく!! ないから!!!」
ぷりぷり社長にトエがお腹を抱えて笑い転げて、メファのはちみつの髪が魔力で逆立った。
俺はチョップされたおでこを擦りながら、紙を瓶に張りつける作業を開始する。
「おぉお!」
俺が掲げた完成品に、メファが一遍に愛くるしいエルフに戻った。
「かわいー!」
「こういうの、なかったよね」
トエもうんうん頷いて、俺は拳を掲げる。
「爆売れ、間違いなし!」
皆で手を叩いて喜んだ。
メファがビカビカしてる隣で、俺は繁殖期の触手さんから、えっちな体液をもりもり採取するよ。
「こんなに採って大丈夫?」
「キシャシャシャ」
触手さんは、触手でこくこくしてくれた。
いっぱい体液が出過ぎると、理性が崩壊して、見境なく生命体を襲うようになるらしい。
BLゲームでは、触手さんは最強の魔物だからな!
触手さんの理性大事!!
「でも、繁殖したいですよね? いい苗床があるんですよ──!」
いひひひひ。
によによしたら、ぺしりとメファにはたかれた。
「こ──ら──。
誰を紹介する気?
……まあ、わかるけど」
ぽつりと呟くメファに、目を瞬く。
「わかるの?」
メファはこくりと頷いた。
「僕のとこにも来たよ。ぴんくの髪が。
自分のこと、物凄く可愛いと思ってて、自信に満ち溢れてて、ひとめで愛されることを疑ってない」
「……逢ったんだ」
…………そっか、主人公、メファのところにも来たんだ。
メファは主人公を……大すきになっちゃったのかな。
それは、さみしいことに思えた。
大切な、やさしい友だちが盗られてしまう、ちょっぴりさもしい心持ちもあるけれど。
ここは、ゲームの世界で。
それは、メファの気持ちじゃないかもしれないから。
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