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困った時のトエ!
しおりを挟む俺、知ってるんだよね。
絵をなぞると、なぜだか可愛さ激減。
絵の線の勢いみたいな、強弱とかなめらかさ、繊細さが、なぞると全部
消えちゃって、イォが描いてくれた愛らしさが壊滅する!
前世で、上手い人の絵とか、なぞってみたこと、あるからね。
同じ絵と思えない物体しかできなかったからね!
そういう残念な記憶はばっちりな俺の脳みそ、ありがとう!
なので、ラベルにするなら、棒人間と糸人間な俺とメファがなぞって、
とびきり愛らしいイォの絵を、へなちょこな絵にしてしまうよりも、
イォの絵そのまんまコピーなのです!
しかし、印刷機のお金はない!
ということで、魔道具がすきって自己紹介で言ってたトエに聞いてみるよ!
「あの、トエ、お金稼ぐの苦手な人たちの生活向上目指して、えっちな薬を
めちゃくちゃ売るために、かわいー似顔絵コピーしたのを瓶に貼りたいんだけど、
コピー機みたいな魔道具、安いのないかな? 高いのは予算オーバーです!」
瓶底眼鏡の向こうの瞳が、瞬いた気がした。
「こぴーき?」
「めちゃくちゃかわいー絵を瓶に貼ったら、えっちな薬、爆売れじゃない?」
胸を張る俺に、鞄を取りに戻ってきていたクラスメイトたちが仰け反った。
「え、うそ、リユィ、ちっちゃいのに、えっちな薬売る気なの!?」
「ちっちゃい言うな!」
ぷりぷり俺は拳を掲げる。
「俺はちゃんと成人だぞ!
合法なんだからな!!」
大事なことだよ!
拳が輝くよ!
「うわー、ひわい――!」
「ひわい言うな!
はじめてさんにも、やさしい薬なんだぞ!!」
ぷんぷんする俺の隣で、トエがお腹を抱えて笑ってる。
「それ、教室で、大声でする話じゃないよね」
「そ、そかな。
だって皆に買って欲しいよ」
俺はちっちゃな胸を張った。
「メファ社長渾身の力作!
犯罪防止で、みんなにやさしいのに、えっちはあつあつ♡ な薬だよ!
ぜひ使ってほしー!」
拳をふりふりする俺に、赤くなった皆が拍手してくれる。
「おお! 真面目だ!
売ろうとしてるのは、えっちな薬だけど」
うぷぷぷぷ
笑い転げるトエに、膨れる。
「トエなら、複写しかできないけど安い魔道具を教えてくれると思ったのに!」
困った時のトエ!
ふくれながら拝んだら、トエは瓶底眼鏡の向こうの目を拭き拭きしながら、
頷いた。
「知ってるよ。
あるよ。
僕が作った試作品が」
「さすがトエ!」
拍手する俺に、瓶底眼鏡を光らせながら、トエはおごそかに頷いた。
「僕、これでも優秀なんだよ。
魔力弱いから、最低クラスだけど」
「トエは絶対、頭いーと思ってた!」
さらに拍手する俺に、瓶底眼鏡の向こうの目が胡乱になった気がする。
「眼鏡かけてるからだろ」
トエの突っ込みに、こっくり頷く。
周りの皆が、爆笑した。
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