【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

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魔法の実技だよ!

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 今日の授業は、魔法の実技だよ!

 ビエル国最高の教育機関らしい魔法学校には、攻撃魔法を使っても大丈夫な魔法防御を掛けた、大きな魔法広場がある。

 白い壁に囲まれた円形の校庭っぽく見えるのだけれど、壁の上には金の魔紋が輝いて、きらきらしてた。

 広場全体に魔法を発動させる装置らしい。
 雨も弾いてくれる防御魔法のおかげで、雨の日の授業もばっちりだ。


「では皆、今日は座学で学んだ魔法の基礎を実践する。
 先生がお手本を示すから、各自でやってみるように!」

 授業で教えてくれた魔法の紋様、魔紋を描いた教師テチの瞳に、魔力の光が走る。

 ドォオオンンン────!

 掲げた指からあふれた炎が、爆発した。


「おぉお────!!」

 魔力最低クラスの皆が、興奮した赤い顔で拍手する。


「よし、リユィ、やってみろ!」

 なぜここで俺をご指名かな!?


「お、俺!?」

「ちゃんと授業聞いてただろう。あのとおりにやればできる!
 やってみろ!」

「ふえ」

 魔力最低なんだよ。
 だ、だいじょぶかな、俺。


「できるよ、リユィ。がんばって」

 瓶底眼鏡のトエが、俺の背を叩いてくれる。


「が、がんばる!」

 俺は、ない魔力を振り絞るように、集中した。
 授業で教えてもらった魔紋を、よたよた描いてゆく。

 授業中に、こうやったらかっこいいんじゃね?  と思ってたポーズ、
腰をさげて、腕を翳し、魔紋を睨みつけるように指を掲げるを、決めてみた!


「炎の精霊よ、我に力を恵みたまえ。
 我が魔力よ、炎となりて、敵を貫け!
 ファキア!」

 …………………………

 し────ん


 ………………え。

 俺が考えた、最高にかっこいーポーズのままで固まった俺の頭を、テチがぽふぽふした。


「魔紋、間違ってる」

 は、はずかし──────!!!


「が、頑張ったよ、リユィ!」

 トエが慰めるように背を叩いてくれて、クラスの皆も、こくこく頷いた。


「あんな派手に間違えらんないよ!」

「がんばった、リユィ!」

 あったかい拍手に包まれた俺は、ぐしぐし鼻を啜る。


「み、皆、ありがとう」

 目を擦る俺の頭を、テチのおっきい手がなでなでして、


「せんせー、ずるい──!」

「職権乱用────!!」

 ふくれる声に、テチはあわあわ手を離した。


「リユィの尊い犠牲により、魔紋をちょっとでも間違えると、全く! 発動しないのが解ったと思う。
 皆は間違わないように頑張ろう!」

「は──い!」

 皆が魔法の練習を始めて、あちこちで炎があがる。


「な、なあ、トエ。
 俺の魔紋、どこが間違ってた?」

 首を傾げる俺に、瓶底眼鏡のトエは、にっこり笑った。


「ぜんぶ」


 …………………………


 俺に魔法の才能は、ないみたいだよ。




 でもポーズは、かっこよかったと思うな!!








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読んでくださって、心からありがとうございます!

リユィとディゼの漫画です。もしよかったら!

漫画だよ!
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