70 / 142
魔法の実技だよ!
しおりを挟む今日の授業は、魔法の実技だよ!
ビエル国最高の教育機関らしい魔法学校には、攻撃魔法を使っても大丈夫な魔法防御を掛けた、大きな魔法広場がある。
白い壁に囲まれた円形の校庭っぽく見えるのだけれど、壁の上には金の魔紋が輝いて、きらきらしてた。
広場全体に魔法を発動させる装置らしい。
雨も弾いてくれる防御魔法のおかげで、雨の日の授業もばっちりだ。
「では皆、今日は座学で学んだ魔法の基礎を実践する。
先生がお手本を示すから、各自でやってみるように!」
授業で教えてくれた魔法の紋様、魔紋を描いた教師テチの瞳に、魔力の光が走る。
ドォオオンンン────!
掲げた指からあふれた炎が、爆発した。
「おぉお────!!」
魔力最低クラスの皆が、興奮した赤い顔で拍手する。
「よし、リユィ、やってみろ!」
なぜここで俺をご指名かな!?
「お、俺!?」
「ちゃんと授業聞いてただろう。あのとおりにやればできる!
やってみろ!」
「ふえ」
魔力最低なんだよ。
だ、だいじょぶかな、俺。
「できるよ、リユィ。がんばって」
瓶底眼鏡のトエが、俺の背を叩いてくれる。
「が、がんばる!」
俺は、ない魔力を振り絞るように、集中した。
授業で教えてもらった魔紋を、よたよた描いてゆく。
授業中に、こうやったらかっこいいんじゃね? と思ってたポーズ、
腰をさげて、腕を翳し、魔紋を睨みつけるように指を掲げるを、決めてみた!
「炎の精霊よ、我に力を恵みたまえ。
我が魔力よ、炎となりて、敵を貫け!
ファキア!」
…………………………
し────ん
………………え。
俺が考えた、最高にかっこいーポーズのままで固まった俺の頭を、テチがぽふぽふした。
「魔紋、間違ってる」
は、はずかし──────!!!
「が、頑張ったよ、リユィ!」
トエが慰めるように背を叩いてくれて、クラスの皆も、こくこく頷いた。
「あんな派手に間違えらんないよ!」
「がんばった、リユィ!」
あったかい拍手に包まれた俺は、ぐしぐし鼻を啜る。
「み、皆、ありがとう」
目を擦る俺の頭を、テチのおっきい手がなでなでして、
「せんせー、ずるい──!」
「職権乱用────!!」
ふくれる声に、テチはあわあわ手を離した。
「リユィの尊い犠牲により、魔紋をちょっとでも間違えると、全く! 発動しないのが解ったと思う。
皆は間違わないように頑張ろう!」
「は──い!」
皆が魔法の練習を始めて、あちこちで炎があがる。
「な、なあ、トエ。
俺の魔紋、どこが間違ってた?」
首を傾げる俺に、瓶底眼鏡のトエは、にっこり笑った。
「ぜんぶ」
…………………………
俺に魔法の才能は、ないみたいだよ。
でもポーズは、かっこよかったと思うな!!
486
お気に入りに追加
2,506
あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼毎週、月・水・金に投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
推しの恋を応援したかっただけなのに。
灰鷹
BL
異世界転生BL。騎士×転生者の王子。
フィアリス王国の第3王子であるエドワードは、王宮で開かれていた舞踏会で前世の推しである騎士と出会い、前世で好きだった恋愛ファンタジー小説の世界に転生していたことに気づく。小説の通りに推しが非業の死を遂げないよう、奮闘するエドワードであったが……。
攻め:カイン・ド・アルベール(騎士/20才)
受け:エドワード・リーヴェンス・グランディエール(第3王子/転生者/18才)
※ こちらはBLoveさんの短編コンテストに応募した作品を加筆修正したものです。後半は大幅に内容を変えているので、BLoveさんで既読の方にも楽しんでいただけたらいいなと思います。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる