59 / 142
かっこいーよ
しおりを挟むその、ヤンデレな感じのイォが、主人公が浮気してないのに発動してる?
お、おかしいな。
…………ちがう、主人公レイトが、思いきりアルフォリア狙いだから、この世界のイォは常にヤンデレ気味だ……!!
危険な香りがするから、イォも避けよう!!
「ご、ご親切、どうも──。
お巡りさん! 薬師組合の紹介をお願いします!」
「あー、あれ、薬師の紹介があるか、薬師学園出てるか、どっちかじゃないと門前払いなんだよ。
ほら、薬の品質を落とさないために」
「え────!」
ふくれる俺とメファに、犬の獣人のお巡りさんの目も、イォの目も垂れさがる。
メファ、本気で可愛いからな!
天使みたい!
うんうん頷いた俺は、お巡りさんとイォを見あげた。
「この人に冒険者組合まで案内してもらうから、お巡りさんもついてきて!」
「え? いや、本官は巡回の任務が……」
「冒険者組合、お巡りさんも知らないんだよ!
巡回の任務だよ!」
「そ、そうか!」
頷くお巡りさんの耳と尻尾がぴるぴるする。
「……チ」
イォの舌打ちが聞こえたけど、聞かなかったことにしよう!
怖いから!
「ではきみ、冒険者組合とやらに案内をお願いする!」
「…………わーったよ」
髪を掻きあげたイォは、溜め息をつきながら手をポケットに突っ込んだ。
え、態度わる!!
豹変!
そうか、大すきな主人公の前では、猫を被ってるんだな。
思わず笑った俺に、イォは目を瞬いた。
「あれ。がっかりしねーの」
「被ってる猫のほうが、気持ちわるい」
胸を張ったら、イォは声を立てて笑った。
「レイトに聞かせてやりてえな」
主人公の名前に、ぴょこんと跳びあがった俺に、イォは首を傾げた。
「知ってんの?」
もごもごした俺は、頷いた。
「同じ学校」
「ああ、魔法学園」
頷いたイォは、ごちゃごちゃした下町を縫うように、迷いなく案内してくれながら、吐息する。
「魔力があるんだってさ。
『平民なんかおさらばだ、王子の伴侶になってやる』って、すんごい猫を引っ被って、お上品で可愛い振りして、ここを出てった」
下町を行き交う人の身なりは、着古されたものだ。
柄のわるそうなのが、裏道にたむろしていたりする。
でも、
「世界一美味しい焼き鳥だよ! 食べなきゃ損しちゃうよー!」
「もぎたての桃だよ! ほっぺが落ちるほど、あまーいよ!」
土埃の舞う道に並ぶ出店の呼び声は、元気だ。
焼き鳥や揚げパン、果物や香辛料、色んな匂いがして、ちっちゃな子どもが駆けてゆく。
喧騒と笑顔に、満ちてる。
「身分て、そんなにいいもんかね。
下町って、そんなに、やなもんかね。
どこに行ったって、やなのはいるし、むかつくのはいるし、いいのだって、いるだろう」
見あげる空は、どこも同じ、真っ青だ。
「俺には、わかんねーよ。
わからんままで、いいと思う」
灰の瞳で、イォは笑った。
「なんだ、イォ、かっこいーじゃん」
俺の言葉に目を瞬いたイォが、吹きだして笑った。
510
お気に入りに追加
2,469
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる