【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  

文字の大きさ
上 下
59 / 142

かっこいーよ

しおりを挟む



 その、ヤンデレな感じのイォが、主人公が浮気してないのに発動してる?

 お、おかしいな。


 …………ちがう、主人公レイトが、思いきりアルフォリア狙いだから、この世界のイォは常にヤンデレ気味だ……!!

 危険な香りがするから、イォも避けよう!!


「ご、ご親切、どうも──。
 お巡りさん! 薬師組合の紹介をお願いします!」

「あー、あれ、薬師の紹介があるか、薬師学園出てるか、どっちかじゃないと門前払いなんだよ。
 ほら、薬の品質を落とさないために」

「え────!」

 ふくれる俺とメファに、犬の獣人のお巡りさんの目も、イォの目も垂れさがる。

 メファ、本気で可愛いからな!
 天使みたい!

 うんうん頷いた俺は、お巡りさんとイォを見あげた。


「この人に冒険者組合まで案内してもらうから、お巡りさんもついてきて!」

「え? いや、本官は巡回の任務が……」

「冒険者組合、お巡りさんも知らないんだよ!
 巡回の任務だよ!」

「そ、そうか!」

 頷くお巡りさんの耳と尻尾がぴるぴるする。


「……チ」

 イォの舌打ちが聞こえたけど、聞かなかったことにしよう!

 怖いから!


「ではきみ、冒険者組合とやらに案内をお願いする!」

「…………わーったよ」

 髪を掻きあげたイォは、溜め息をつきながら手をポケットに突っ込んだ。


 え、態度わる!!

 豹変!

 そうか、大すきな主人公の前では、猫を被ってるんだな。
 思わず笑った俺に、イォは目を瞬いた。


「あれ。がっかりしねーの」

「被ってる猫のほうが、気持ちわるい」

 胸を張ったら、イォは声を立てて笑った。


「レイトに聞かせてやりてえな」

 主人公の名前に、ぴょこんと跳びあがった俺に、イォは首を傾げた。


「知ってんの?」

 もごもごした俺は、頷いた。


「同じ学校」

「ああ、魔法学園」

 頷いたイォは、ごちゃごちゃした下町を縫うように、迷いなく案内してくれながら、吐息する。


「魔力があるんだってさ。
『平民なんかおさらばだ、王子の伴侶になってやる』って、すんごい猫を引っ被って、お上品で可愛い振りして、ここを出てった」


 下町を行き交う人の身なりは、着古されたものだ。
 柄のわるそうなのが、裏道にたむろしていたりする。

 でも、

「世界一美味しい焼き鳥だよ! 食べなきゃ損しちゃうよー!」

「もぎたての桃だよ! ほっぺが落ちるほど、あまーいよ!」

 土埃の舞う道に並ぶ出店の呼び声は、元気だ。

 焼き鳥や揚げパン、果物や香辛料、色んな匂いがして、ちっちゃな子どもが駆けてゆく。

 喧騒と笑顔に、満ちてる。


「身分て、そんなにいいもんかね。
 下町って、そんなに、やなもんかね。
 どこに行ったって、やなのはいるし、むかつくのはいるし、いいのだって、いるだろう」


 見あげる空は、どこも同じ、真っ青だ。


「俺には、わかんねーよ。
 わからんままで、いいと思う」

 灰の瞳で、イォは笑った。


「なんだ、イォ、かっこいーじゃん」

 俺の言葉に目を瞬いたイォが、吹きだして笑った。









しおりを挟む

読んでくださって、心からありがとうございます!

リユィとディゼの漫画です。もしよかったら!

漫画だよ!
感想 51

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

処理中です...