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かっこいーよ

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 その、ヤンデレな感じのイォが、主人公が浮気してないのに発動してる?

 お、おかしいな。


 …………ちがう、主人公レイトが、思いきりアルフォリア狙いだから、この世界のイォは常にヤンデレ気味だ……!!

 危険な香りがするから、イォも避けよう!!


「ご、ご親切、どうも──。
 お巡りさん! 薬師組合の紹介をお願いします!」

「あー、あれ、薬師の紹介があるか、薬師学園出てるか、どっちかじゃないと門前払いなんだよ。
 ほら、薬の品質を落とさないために」

「え────!」

 ふくれる俺とメファに、犬の獣人のお巡りさんの目も、イォの目も垂れさがる。

 メファ、本気で可愛いからな!
 天使みたい!

 うんうん頷いた俺は、お巡りさんとイォを見あげた。


「この人に冒険者組合まで案内してもらうから、お巡りさんもついてきて!」

「え? いや、本官は巡回の任務が……」

「冒険者組合、お巡りさんも知らないんだよ!
 巡回の任務だよ!」

「そ、そうか!」

 頷くお巡りさんの耳と尻尾がぴるぴるする。


「……チ」

 イォの舌打ちが聞こえたけど、聞かなかったことにしよう!

 怖いから!


「ではきみ、冒険者組合とやらに案内をお願いする!」

「…………わーったよ」

 髪を掻きあげたイォは、溜め息をつきながら手をポケットに突っ込んだ。


 え、態度わる!!

 豹変!

 そうか、大すきな主人公の前では、猫を被ってるんだな。
 思わず笑った俺に、イォは目を瞬いた。


「あれ。がっかりしねーの」

「被ってる猫のほうが、気持ちわるい」

 胸を張ったら、イォは声を立てて笑った。


「レイトに聞かせてやりてえな」

 主人公の名前に、ぴょこんと跳びあがった俺に、イォは首を傾げた。


「知ってんの?」

 もごもごした俺は、頷いた。


「同じ学校」

「ああ、魔法学園」

 頷いたイォは、ごちゃごちゃした下町を縫うように、迷いなく案内してくれながら、吐息する。


「魔力があるんだってさ。
『平民なんかおさらばだ、王子の伴侶になってやる』って、すんごい猫を引っ被って、お上品で可愛い振りして、ここを出てった」


 下町を行き交う人の身なりは、着古されたものだ。
 柄のわるそうなのが、裏道にたむろしていたりする。

 でも、

「世界一美味しい焼き鳥だよ! 食べなきゃ損しちゃうよー!」

「もぎたての桃だよ! ほっぺが落ちるほど、あまーいよ!」

 土埃の舞う道に並ぶ出店の呼び声は、元気だ。

 焼き鳥や揚げパン、果物や香辛料、色んな匂いがして、ちっちゃな子どもが駆けてゆく。

 喧騒と笑顔に、満ちてる。


「身分て、そんなにいいもんかね。
 下町って、そんなに、やなもんかね。
 どこに行ったって、やなのはいるし、むかつくのはいるし、いいのだって、いるだろう」


 見あげる空は、どこも同じ、真っ青だ。


「俺には、わかんねーよ。
 わからんままで、いいと思う」

 灰の瞳で、イォは笑った。


「なんだ、イォ、かっこいーじゃん」

 俺の言葉に目を瞬いたイォが、吹きだして笑った。









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