53 / 142
営業だよ
しおりを挟むこれが、
「トエは、学食で一番美味しそうなのは何だと思う?」
とかいう質問だと
「カツサンド!!」
という答えがちゃんと返ってくるんだな。
「メファ先輩が、すんごい冷たいってどういうこと?」
と聞くと
「噂?」
一応答えてくれる。
でも、ゲームのこととか、この世界のこととか、転生者のこととか、そういう大事なことを聞こうとすると、絶対誰かに邪魔されちゃうみたいだ。
メファとお昼ご飯はうれしいけど!
……メファと仲良くしてたら、またえっちなお仕置きしてくれるかな♡
………………。
これ、お仕置きの本来の意義を、全く果たしてない……?
メファが連れてきてくれたのは校舎の隅っこにある、メファと出逢ったちいさな庭だった。
春のうららかな陽射しに、あたためられた白いベンチがひっそり佇む。
「今日は野菜サンドだよ。
はい、半分こ」
ふわふわのはちみつの髪を揺らして、はちみつの瞳を輝かせて、にこにこして、野菜サンドを分けてくれるメファが、めちゃくちゃかわいー!
「お金払うよ、メファ!」
メファに貰ったお金を翳す俺に、メファは微笑んだ。
「仕事の話をするんだから、時給の代わりにご飯だよ」
「おお! ホワイトだ!」
首を傾げるメファは、多分、転生者じゃない。
「えと、従業員に、やさしい企業!」
「ふふ、そうなりたいな」
微笑むメファが、めちゃくちゃかわいー♡
「仕事の話って?」
首を傾げた俺に、メファは頷いた。
「エルフ特製、えっちな薬を、ビエル王国で販売できないかなって思って。
リユィ、王子と仲良いでしょう?
そこから販路を見出したいなと」
おぉう、営業だ!
………………?
そんな展開、ゲームにあったかな?
いや、それ以前に!
「俺、全ッッ然!! これっぽっちも!! 王子と仲良くないから!!」
絶叫した。
あの3人に近づくのは、真剣に危険!!
回されるから!
さいあくだから!!
血の気の引いた顔で震える俺に、目を見開いたメファは、色々察してくれたみたいだ。
「そっか、ごめんね、酷いこと言って」
あわあわした俺は、ぶんぶん首を振る。
「あ、あの、力になれなくて、ごめん。
え、えとえと……そ、そうだ! ギルドに行ったら、薬を扱ってくれないかな?」
「ぎるど?」
首を傾げるメファに頷く。
「えと、こういう世界では、ギルドっていう冒険者組合みたいのがあって、そこで作った薬を買ってくれたり、流通させてくれたりするんだ、と思う」
オンライン小説ではそうだった、ような気がする。
薬を作ってスローライフとかね。
俺、頭弱いから向いてなさそうだなって思ってたけど。
憧れだったよ!
517
お気に入りに追加
2,443
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章開始!毎週、月・水・金に投稿予定。
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる