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……強制力?
しおりを挟む「ちっちゃいのが、頑張って走ってるー!」
「ちっちゃい言うな!」
ぷりぷり拳を握る俺の声は、たぶん2階の窓まで、届かない。
向こうの声は聞こえる不思議。
さすが都合のいいゲームの世界だ!
「かーわい♡」
「いいなあ、魔力最低クラス、あんなかわいーのと一緒に授業で」
「しかも、頭も弱めなんだろ?」
「頭弱い言うな!」
ほんとのことを言われると、傷つくんだぞ!
ちょっと涙目な俺を、隣を走るトエが、なでなでしてくれる。
トエ、やさしー!
「ちんまいのが仲良くしてるー!」
「ちんまい言うな!」
ぷんぷんするのに、降ってくるのは、やっぱり笑顔だ。
「俺、次の試験で、魔力最低クラス狙おうかなあ♡」
あちこちの教室の窓から声がして、手が振られた。
思わず振り返したら、歓声があがる。
幾つもの顔のなかに、ぴんくの髪と、殺人光線で俺をギリギリ睨みつける目を見つけた俺は、ぴょこんと跳びあがった。
な、情けないけど、いじわるメーター上がるの怖いんだもん……!
この遠い距離でも、上がってそうないじわるメーター!
……恐怖しかない。
「うわあ、凄いね、レイト」
くつくつ笑うトエに、息をのむ。
「やっぱり、トエ、知って……」
「ダ────ッッシュ!!」
テチの掛け声に、足の回転を、頑張って速めてみた!
「ちまちましてて、かーわい♡」
「ち、ま、ち……ま……い、う……な……!」
ぜえぜえしながら拳を握ったら、なぜか拍手が起きた!
「よくがんばった!」
テチも褒めてくれる。
「えへへ」
笑ったら、皆が顔を覆ってうずくまった。
ぜえぜえ息は切れたけど、トエと一緒に走ってると、ちょっぴし評判がよいみたいで、よかった!
「トエ、やっぱり、この世界のこと、何か知って──」
「こ──ら──!
授業中に話をするな!」
テチに叫ばれた。
「リユィは前に出て、問題を解け!」
また黒板の前に立たされて、
「全っっ然ちが──う! 授業を真面目に聞け!」
「き、聞いてるもん!」
涙目で拳を握る俺に、クラスの皆が真っ赤になって、テチはちょっと前屈みになった。
トエが肩を揺らして笑ってる。
しょんぼりするのか、楽しいのか、解らなくなってきたよ!
あったかい笑い声ってあるんだなあ。
さみしい前世を思い出した俺は、なんだか胸があったかくなった。
「トエ、あの、ちょっと話を──」
「次は魔法の実技だよ! トエもリユィも、グラウンドに集合──!」
クラスメイトが気さくに声を掛けてくれるのはうれしいけど、今じゃなかった!
「あの、トエ、お昼を一緒に──」
「あ、リユィ!
仕事の話があるんだ、来て!」
とびきり可愛いメファにどよめく教室で、メファに腕を引っ張られた俺は、確信した。
強制力か何かで、トエに質問できないようになってる────!!
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