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従業員になったよ!
しおりを挟む「元王子なのに、働くの?」
ちょっと赤い頬で聞いてくれるメファに、こくりと頷く。
「俺さ、やな王子だったんだ。
親父の威光をひけらかして、皆に言うこと聞かせて。
ディゼにも、酷いことした。
ごめんなさい」
下げた頭を、ディゼの大きな掌が、撫でてくれる。
「だから、元王子になった。
心を入れ替えて、働こうと思って!」
俺の、ちっちゃな拳を見つめたメファが、やわらかに瞳を細める。
「そっか。
なら、僕のところで働かない?
薬草や素材の選別と採取、薬草の栽培のお手伝いをして欲しいな」
「やる――――!!
わ――! ありがとう、メファ!!」
メファの透きとおる両手をにぎにぎしたら、ふうわり紅くなったメファが、
ほころぶように笑う。
「よろしくね、僕の初めての従業員さん」
「よろしくお願いします、社長!!」
すべすべな手をにぎにぎしてたら、俺の頭に、ディゼの顎がのった。
「なんか、面白くない」
「気になるなら、見に来て。
ついでに手伝って、恋人さん」
くすくす、メファが笑う。
透きとおるような笑い声に、ちらちら、光が舞った。
大気が澄み渡り、世界が鮮やかに色を変える。
どこか遠くで、輝くような、清かな歌声が響いた。
エルフだけが齎すことができると謳われる、精霊の祝福だ。
「わ――――!
すごい、メファ!!」
手を叩いて喜ぶ俺の隣で、ディゼも珍しそうに、やわらかに目を細めた。
メファは、びっくりしたみたいに、精霊の光を見あげる。
「……僕も、初めて見た」
俺の手をにぎって、紅い頬で、メファが笑ってくれる。
「うれしい。
よろしくね、リユィ」
やさしい声で、はにかむように、笑ってくれる。
……………………。
あれ?
これ、メファルートに入った時のイベントじゃなかった……?
んんんんん???
しかし、お昼ご飯と、仕事先を獲得した!!
俺の学園生活、ちょっと順調かも!
えへへへへ。
思った俺は、初日で攻略対象3人に回されそうになったことを、すっかり
ばっきり、忘れ果ててた。
昨日の今日で忘れ果てられたのは、ディゼとメファのおかげだと思う。
500円を恵んでくれたトエと、かわいいと言ってくれた学食の皆も!
ありがと――!
「皆、昼飯食ったかー!
ちっちぇえのは、特に、もりもり食えよ!
まだ伸びるかもしれん、希望を捨てるな!」
白い歯を見せて、テチが笑う。
教室の皆が、俺を見て笑った。
あったかい笑いだけど、
「ちっちぇえ言うな!」
ぷりぷりする俺に降ってくるのは、やっぱり皆の笑顔だ。
怒ってるのに、なぜ笑顔??
「食べてないよね、大丈夫?」
トエが心配そうに眉を下げてくれて、俺は胸を叩く。
「バゲットサンド恵んでもらった!
俺、まだ伸びるから!」
ふん!
ちっちゃな胸を張る俺に、教室の皆が笑って、トエは目をまるくする。
「……誰に?」
「上級生のメファ」
瓶底眼鏡をずり上げて、トエは爪先からつむじまで俺を見つめた。
「へえぇええ!
順調だなあ」
「……え。何が」
モブレまっしぐらは真剣に止めてください、お願いします!!
「がんばれ、リユィ。
応援する」
「おお?
あ、ありがとー」
照れて頭を掻いた俺に、トエは瓶底眼鏡を揺らして笑った。
「かーわいーなー、リユィ」
「…………そ、そそそそそう?
あ!! 500円、ごめん! すぐ返すから!」
「待ってる」
しっかり頷くトエは、お金にちゃんとしてる!
信用できるな。
いい感じだ!
応援ありがとうございます!
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