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「ごめんな、俺、友達から借りるのも貸すのも苦手なんだけど、腹減ってて」

「ともだち?」

 にやにやするトエに、熱い頬でふくれる。


「…………ち、ちがったら…………ご、ごめん」

 俯いたら、抱きしめられた。


「リユィ──、か──わ──い──い──!!」

「うわ、いいなあ、トエ!」

「何抜け駆けしてんだよ!」

「リユィは、皆の愛玩動物だろ!!」


 動物言うな、って思ったけど、俺、動物だった!
 ただしいな。
 俺、植物じゃないよ。


「ちっちゃくて、かわい────!」

「ちっちゃい言うな!
 か、かわいーは……あ、ありがと」

 ぷんぷんして、もじもじした。

 かわいい、うれしい!
 ありがとー。

 ディー、気に入ってくれるかなー??

 熱い頬で、によによしたら、皆の顔も、めちゃくちゃ笑顔だ。


「な、んだ、このかわいー生き物は……!!」

「こら────!!
 皆、授業中だぞ!
 リユィを愛でる会はお終い!
 こら、リユィ! 責任とって、前に出て、問題解け!」

「えぇえ────!!」

 俺のせいなのか──!
 しょんぼりしつつ、前に出た俺は、書かれた問題に頭をひねる。


『火の魔法と親和性の高い魔法を挙げよ』

「光でしょ!」

 胸を張って書いたら、教室中から笑いが噴きあがった。
 テチまで、肩を揺らして笑ってる。


「リユィが、全く勉強ができない、残念さんなのは、よく解った」

「いやいやいや、そこ、わからないで──!」

 泣く俺に、一層笑いが沸き起こる。


「皆、答えは──?」

「風で──す!!」

「正解!
 残念なリユィと、皆にお知らせだ。
 魔法学園では、座学の試験が季節ごとにある。
 一年は何季かな、リユィ」

「四季です!」

 胸を張ったら、皆が拍手してくれた。

 …………うん。
 四季さえもわからない、あんぽんたんと思われてる!

 ……いや待てよ。日本のゲームだから、四季だった。
 サバンナ地方のゲームだったら、雨季と乾季の二季だよ。危険危険。

 …………あれ。
 もしかして、拍手、やさしい??



「よくできたぞ、リユィ!」

 え、褒められてうれしい俺、間違ってる?

 いいや、喜ぶ!


「えへへ。
 ありがとー、せんせー」

 照れて熱い頬で、笑ってみた。
 つやつやらしい黒髪が、ほわほわ揺れた気がする。


「くっ……!
 なんだこのかわいー生き物は……!!」

「せんせー、ずるいー!」

「職権乱用、はんたーい!」

「こ、こほん」

 咳払いしたテチは、前かがみから立ち直った。


「ええと、何だったか……そうそう、皆にお知らせだ。
 試験の話は、したな。
 試験お疲れ、通過おめでとうの行事が、魔法学園には用意されている。
 春の行事は、遠足だ!」

「おお!」

 拍手したのは、俺だけだった。

 は、はずかし──!


 テチはちいさくなった俺を見つめて、ちょっと赤い顔でうむうむ頷いた。


「皆で、のどかな春の野原で、さくらを見る。
 意中の相手には、お弁当をつくってゆくといいぞ。
 恋せよ、キォタナ学園生徒たち!
 以上だ!」

 ……………………。
 はげまし?
 いい先生?

 おかげで思い出した!

 そうだったー!
 テストの後は、イベントがあった!








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