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謝ってくれたよ
しおりを挟む前世は大分おじさんだったのか、学生が楽しい!
教室があって、黒板があって、皆で座って、授業を聞く。
教科書があって、ノートがあって、鉛筆を走らせる、そのすべてが、
めちゃくちゃ楽しい。
目がきらきらしっぱなしの俺に、トエが隣で肩を揺らして笑ってる。
「そんな笑わなくてもいーだろ」
ふくれる俺の頬をつついて、トエは、やっぱり笑った。
「リユィが、こんなにかわいーとは思わなかったなあ!
お昼ご飯、一緒に食べよーよ」
「いーけど」
ふくれた頬で頷きつつ、ほんとは一緒にご飯に誘ってくれたことが、
めちゃくちゃうれしい。
ほっぺたが、熱くなる。
前世はずっとひとりぽっちだったみたいだし、今世も、親父の威光のおかげで、
ともだちなんて、ひとりもいなかった。
親父の権威を振り翳さなくても、俺に声をかけてくれる人がいる。
俺に、笑いかけてくれる人がいる。
ほんとは、泣きたいくらい、うれしい。
「あーもー、かわいーな!
誘ってくれて、めちゃくちゃうれしいですって顔に書いてあるよ!」
トエの細い腕にヘッドロックされた俺は、跳びあがる。
「ななななな……!」
楽し気に笑ってるのは、トエだけじゃない。
教室の皆から笑われた俺は、それが嘲笑じゃないっぽいのに、首を傾げた。
……あれ?
元魔王の元王子の癖にって、叩かれるところじゃないのかな?
「元魔王の元王子って、なんかこう、もっと、いけすかないの想像してた!」
「ビビるよな、元魔王だぜ?」
「威張り散らして、人のこと顎で使うと思ってた」
「目は吊り目で、悪役っぽいけど、ちっちぇえし!」
「ちっちぇえ言うな!」
ぷりぷりする俺に降ってくるのは、なぜか笑顔だ。
「角も、ちょこんてしててさ、よわよわな小鬼みたいでかわいーし」
「よわよわ言うな!」
拳を握ってみたけど、ちっちゃい!
「頭わるいのに、授業楽しそうに聞いてるのも、かわいーよな」
「頭わるい言うな!」
憤慨する俺の隣で、トエがお腹を抱えて笑ってる。
「いやあ、これは、ない展開だなあ。
さすがリユィ」
目に涙まで溜めて笑わなくていいと思う!
ぷんぷんする俺の手を、トエが引いて、学食に行こうとした時だった。
教室の扉が、がらりと開く。
ざわざわしていた教室が、一瞬で静まり返った。
扉の向こうには、生徒会長、副会長、書記が並んで立っていた。
「ぎゃあ!」
逃げろ逃げろ、逃げろ――――――!!!!!
あわあわ跳びあがった俺が、もう一方の扉目掛けて駆けだそうとした瞬間、
アルフォリア、キーザ、ジェミの3人が、地につくほど頭をさげる。
「すみませんでしたぁアア――――――!!」
「………………え?」
茫然とする俺に、アルフォリアは、顔をあげた。
「ほんっとにごめん。真剣にごめん。
何て謝ったらいいのか、解らないけど、ごめん!!」
碧の瞳が泣きだしそうに揺れて、俺の方がうろたえる。
「え、あの…………」
「本当に本当に本当に本当に、すまなかった――――!!」
土下座な勢いで、ジェミが頭を下げた。
「あんなことするつもり、全然なかったんだよ、身体が勝手に――……!」
涙目のキーザも、頭を下げてくれる。
「…………えぇ?」
茫然とする俺の隣で、瓶底眼鏡がきらめいた。
「強制力だね」
「………………え……?」
俺は、トエを振り返る。
トエの唇が、微笑んだ。
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