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呼びたい名前

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「…………え…………」


 全身から、血の気が引いた。


「大丈夫、痛くしないから」

 くすくす、アルフォリアが、笑う。


「お尻いじられるの、大すきなんでしょう?
 いっぱい嵌めてあげる。
 お尻に嵌められないと、イけなくしてあげるね♡」

 長い指が、俺のお尻のあわいを、ゆうるり辿る。

 ビクンと震えた俺が逃げようとするのを、ジェミの逞しい腕が阻んだ。


「最初は、無理矢理がいいだろう?」

 ジェミの唇の端が上がる。


 筋肉が盛りあがり、

 ビリィイイイ────!

 俺のベルトまで一気に、引き裂かれた。



「…………っ……」

 逃げなきゃ、とか、大声をあげなきゃ、とか思うのに、固まった身体は、震えるだけで、動かない。


 噴き出した冷や汗が、全身を伝ってゆく。

 ジェミにソファに押し倒された身体が、跳ねた。


 跳び起きて、逃げようとする前に、重い筋肉の身体が圧し掛かる。
 足を割られて、両手を裂かれたシャツで縛られた。



 恐怖で、声が、出ない。

 身体が、硬直して、動けない。



『抵抗されなかった』
『同意だった』
 加害者が堂々と言い放つことが、どんなに理不尽で、どんなに残酷なのか、初めて知った。



 俺は、モブレされて快楽堕ちしちゃうのを、何とか回避したかったのに。

 ゲームは始まったばかりなのに、攻略対象者3人に回されたら、もっと酷い。
 かっこいい男にされるなら天国かも、と思った俺の頭を、叩き割りたくなった。


 想像でさえ、あんまり酷いと思うけど。
 現実に起きたら、酷過ぎる、暴行だ。


 ジェミの手が、俺の肌を、這い回る。

「──うわ、すべっすべ」


 熱い舌が、俺のうなじを、這う。

 濡れた感触に、鳥肌が立った。


「い、やだ────!」

 何とか出せた、掠れた声に、ジェミは嗤った。


「……最っ高……!」


 …………ああ、そうだね。
 お前の性癖は、最低だったね。


 ゲームなら楽しかったすべてが、自分の身に降りかかると、恐怖でしかなくなる。


 制服が、毟り取られた。
 足を、開かされる。


「わ、かわいー、ちっちゃい♡の尻尾あるんじゃん」

 キーザが俺の尻を見て、嗤った。


「淫魔の血を引いてるんだね。素質あるよ、きっと。
 最初に回されて愉悦を覚えちゃうとさ、回されないと物足りなくなっちゃうんだよね」

 くすくす笑うアルフォリアの唇の端が上がる。


「すぐ、もっともっとって、ねだるようになるから」

 浮きあがる血管でビキビキに勃起したのを、尻に擦りつけられて、戦慄した。


 こいつ、何の準備もなしに、突っ込む気だ。

 魔法で、後で回復すればいいと思ってるんだろう。


 その衝撃と痛みが、どれほど心を抉るか解っていて、それを楽しむつもりなんだろう。



 やめてとか、こいつに懇願したくない。


 何とか、自分の力で──……!

 振り絞る魔力は、魔族とは思えないほどの小ささだった。



「何かするつもり?」

「お父さんでも、呼んでみる?」

「たすけてって」

「最強の結界張ってあるから、何しても無駄だと思うけど」

「嵌められて、善がってるところに、パパが来ちゃうかもね」

「ははははは!」



 どうして、嗤えるんだろう。

 どうして、こんなことが、できるんだろう。


 泣くなんて、情けないから、いやなのに。
 自分の力で、こんな輩、ぼっこぼっこにできたら、よかったのに。



 俺には、何の力もなくて。

 こんな時に、呼びたいのは、ひとりしかいなくて。



「いい声で泣けよ」


 ゴリュ。

 押しあてられた凶器が、メリメリちいさな穴を抉じ開ける。



「…………っ……ディ──……っ……!」




「おっっっせえんだよ──────!!!」


 漆黒の翼が、広がった。




「ぐうァ──……っ!」


 伸し掛かっていた巨漢が、吹き飛んだ。










────────────────────────────────────


読んでくださって、心からありがとうございます!

入ってません──────!!!
安心してください!!

皆の闇の性癖が怖くてごめんなさい。


そろそろ溺愛ルートとえちえち開きますー!





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