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2次元から3次元!
しおりを挟む生徒会室は、学園の中央にそびえる金の時計塔の最上階にある。
こう、窓から学園を見おろして、ふふっていう絵を描くためにね。
たぶん!
階段上るのしんどいな、と思ったら、魔法で昇降するエレベーターみたいな魔道具がついていた。
さすが魔力持ちエリートたちが通う、世界で唯一の学校だ。
真っ白な石で造られた廊下には、金の刺繍に縁どられた、足がふかりと沈む絨毯が敷き詰められ、生徒会室へと導いてくれる。
最奥には、輝く魔紋で彩られた扉が聳え立つ。
尻込みする俺を、やさしくホールドして、というか、逃さないぞな感じで腰を掴んだアルフォリアが、重たそうな扉を開けてくれる。
大きな窓から射し込む光が、生徒会室に佇む淡い水の髪と、榛の髪をきらめかせた。
つやつやの天鵞絨のソファに腰かけているのは、ゲームで見たままの、宰相の息子と、騎士団長の息子だ。
「やあ、いらっしゃい、元魔王の元王子。
副会長のキーザ・チヤラだ」
淡い水色の髪を掻きあげ、淡い水色の瞳を細めて、宰相の息子が微笑む。
組まれた長い足は、ほっそりと臙脂のソファを彩った。
「よく来たな。
書記のジェミ・カタブだ」
褐色の肌は、もりあがる筋肉によく映える。
短い榛の髪と、切れあがる藍の瞳で、騎士団長の息子が微笑んだ。
名前に突っ込んでくれた??
気障なチャラ男が、キーザ・チヤラ。
ガチムチで地味っぽくて堅物な男が、ジェミ・カタブ。
『愛のラビリンス』わかりやすい!
キーザの名前は、『愛のラビリンス』で一番酷い名前として、憐れまれてた。
名前のまんまな感じだから、余計に!
ぷぷ……!
いや、笑ったらだめだ!
超絶かっこいい攻略対象者様だぞ!
アルフォリアに背を押されるように、生徒会室に入った瞬間、
キュアァアア────!
魔法が発動した。
「え、な、なに……!?」
痛くもない。
熱くもない。
衝撃も来なかった。
でも、確かに魔法が発動してる。
『一回行ったら、戻れない』
トエの言葉が、頭のなかでぐるぐる回る。
「防音魔法だよ。
大切な話をしたいから」
にっこり微笑むアルフォリアの鉄壁のかんばせが、こわい。
背を押された俺は仕方なく、キーザとジェミがいる部屋の中央へと足を進めた。
「よろしくね」
俺の手を握って、キーザとジェミが微笑んでくれる。
アルフォリアよりちょっと落ちる感じは否めないが、それでも単体で見たら、仰け反るくらい、かっこいい。
「……わあ」
ほんとに、2次元が3次元になりました! だった。
スチルそのまんまの美貌が立体になって、髪がさらさら揺れて、肌がすべすべで、あったかい。
全方向から見れるよ!
2.5次元ってこんな感じなのかな。
なんか、いい匂いする!
「面白くない」
ふくれたアルフォリアに後ろから抱きしめられて、俺はお尻のぴんちを思い出した。
「あ、ああああの……!
な、何か、話?」
更にぶっすりふくれたアルフォリアに、ぎゅうぎゅうされる。
「もっと面白くない。
入学式の前は、真っ赤になって可愛かったのに」
アルフォリアの吐息が、耳朶に触れる。
「あの子に、えっちなこと、聞いちゃった?」
ちゅ。
音をたてて降る唇が、耳にふれた。
「ぎゃぁああああ!!」
耳を押さえて跳びあがった俺に、アルフォリアが目をまるくする。
キーザがお腹を抱えて笑って、ジェミが失笑した。
「アルフォリアを拒否った子、初めて見た!」
キーザの淡い水の瞳が、面白そうにひらめいた。
「笑うな!」
碧の瞳を吊りあげて叫ぶ、ほんのり眦の紅いアルフォリアは、かなり可愛い。
「不穏な噂が流れてるんだよ」
流れるように、キーザが足を組みかえる。
「僕らに目をつけられたら、生徒会室に連れ込まれて、いけないことされちゃう。
お尻に嵌められないとイけなくなっちゃう♡ って」
水の瞳が、楽し気にひらめいた。
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はじめましての方も、いつも読んでくださる方も、心からありがとうございます!
リユィ、ちょっとぴんちになりますが、大丈夫ですので、安心して読んでくださったら、うれしいです。
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