【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  

文字の大きさ
上 下
19 / 142

2次元から3次元!

しおりを挟む



 生徒会室は、学園の中央にそびえる金の時計塔の最上階にある。

 こう、窓から学園を見おろして、ふふっていう絵を描くためにね。
 たぶん!

 階段上るのしんどいな、と思ったら、魔法で昇降するエレベーターみたいな魔道具がついていた。

 さすが魔力持ちエリートたちが通う、世界で唯一の学校だ。


 真っ白な石で造られた廊下には、金の刺繍に縁どられた、足がふかりと沈む絨毯が敷き詰められ、生徒会室へと導いてくれる。

 最奥には、輝く魔紋で彩られた扉が聳え立つ。


 尻込みする俺を、やさしくホールドして、というか、逃さないぞな感じで腰を掴んだアルフォリアが、重たそうな扉を開けてくれる。


 大きな窓から射し込む光が、生徒会室に佇む淡い水の髪と、榛の髪をきらめかせた。

 つやつやの天鵞絨のソファに腰かけているのは、ゲームで見たままの、宰相の息子と、騎士団長の息子だ。


「やあ、いらっしゃい、元魔王の元王子。
 副会長のキーザ・チヤラだ」

 淡い水色の髪を掻きあげ、淡い水色の瞳を細めて、宰相の息子が微笑む。
 組まれた長い足は、ほっそりと臙脂のソファを彩った。


「よく来たな。
 書記のジェミ・カタブだ」

 褐色の肌は、もりあがる筋肉によく映える。
 短い榛の髪と、切れあがる藍の瞳で、騎士団長の息子が微笑んだ。


 名前に突っ込んでくれた??

 気障なチャラ男が、キーザ・チヤラ。
 ガチムチで地味っぽくて堅物な男が、ジェミ・カタブ。

 『愛のラビリンス』わかりやすい!


 キーザの名前は、『愛のラビリンス』で一番酷い名前として、憐れまれてた。
 名前のまんまな感じだから、余計に!

 ぷぷ……!

 いや、笑ったらだめだ!
 超絶かっこいい攻略対象者様だぞ!


 アルフォリアに背を押されるように、生徒会室に入った瞬間、

 キュアァアア────!

 魔法が発動した。


「え、な、なに……!?」

 痛くもない。
 熱くもない。
 衝撃も来なかった。

 でも、確かに魔法が発動してる。


『一回行ったら、戻れない』

 トエの言葉が、頭のなかでぐるぐる回る。


「防音魔法だよ。
 大切な話をしたいから」

 にっこり微笑むアルフォリアの鉄壁のかんばせが、こわい。

 背を押された俺は仕方なく、キーザとジェミがいる部屋の中央へと足を進めた。


「よろしくね」

 俺の手を握って、キーザとジェミが微笑んでくれる。

 アルフォリアよりちょっと落ちる感じは否めないが、それでも単体で見たら、仰け反るくらい、かっこいい。


「……わあ」

 ほんとに、2次元が3次元になりました! だった。

 スチルそのまんまの美貌が立体になって、髪がさらさら揺れて、肌がすべすべで、あったかい。

 全方向から見れるよ!

 2.5次元ってこんな感じなのかな。
 なんか、いい匂いする!


「面白くない」

 ふくれたアルフォリアに後ろから抱きしめられて、俺はお尻のぴんちを思い出した。


「あ、ああああの……!
 な、何か、話?」

 更にぶっすりふくれたアルフォリアに、ぎゅうぎゅうされる。


「もっと面白くない。
 入学式の前は、真っ赤になって可愛かったのに」

 アルフォリアの吐息が、耳朶に触れる。



「あの子に、えっちなこと、聞いちゃった?」


 ちゅ。

 音をたてて降る唇が、耳にふれた。



「ぎゃぁああああ!!」

 耳を押さえて跳びあがった俺に、アルフォリアが目をまるくする。
 キーザがお腹を抱えて笑って、ジェミが失笑した。


「アルフォリアを拒否った子、初めて見た!」

 キーザの淡い水の瞳が、面白そうにひらめいた。


「笑うな!」

 碧の瞳を吊りあげて叫ぶ、ほんのり眦の紅いアルフォリアは、かなり可愛い。


「不穏な噂が流れてるんだよ」

 流れるように、キーザが足を組みかえる。



「僕らに目をつけられたら、生徒会室に連れ込まれて、いけないことされちゃう。
 お尻に嵌められないとイけなくなっちゃう♡ って」



 水の瞳が、楽し気にひらめいた。










────────────────────────────────────


はじめましての方も、いつも読んでくださる方も、心からありがとうございます!

リユィ、ちょっとぴんちになりますが、大丈夫ですので、安心して読んでくださったら、うれしいです。



しおりを挟む

読んでくださって、心からありがとうございます!

リユィとディゼの漫画です。もしよかったら!

漫画だよ!
感想 51

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼毎週、月・水・金に投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

悪役令息を引き継いだら、愛が重めの婚約者が付いてきました

ぽんちゃん
BL
 双子が忌み嫌われる国で生まれたアデル・グランデは、辺鄙な田舎でひっそりと暮らしていた。  そして、双子の兄――アダムは、格上の公爵子息と婚約中。  この婚約が白紙になれば、公爵家と共同事業を始めたグランデ侯爵家はおしまいである。  だが、アダムは自身のメイドと愛を育んでいた。  そこでアダムから、人生を入れ替えないかと持ちかけられることに。  両親にも会いたいアデルは、アダム・グランデとして生きていくことを決めた。  しかし、約束の日に会ったアダムは、体はバキバキに鍛えており、肌はこんがりと日に焼けていた。  幼少期は瓜二つだったが、ベッドで生活していた色白で病弱なアデルとは、あまり似ていなかったのだ。  そのため、化粧でなんとか誤魔化したアデルは、アダムになりきり、両親のために王都へ向かった。  アダムとして平和に暮らしたいアデルだが、婚約者のヴィンセントは塩対応。  初めてのデート(アデルにとって)では、いきなり店前に置き去りにされてしまい――!?  同性婚が可能な世界です。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。  ※ 感想欄はネタバレを含みますので、お気をつけください‼︎(><)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

処理中です...