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選択肢が、ないみたいです?
しおりを挟むびくりと震えた俺は、瓶底眼鏡を見あげる。
ちっちゃいトエより、さらにちっちゃい俺。
切なくなるより早く、俺は前世の記憶を思い出す。
えーと……生徒会……は、あった、気が、する。
そうそう、確かテストのミニイベントがあって、頑張ると成績が上位になる。
成績が確か10位以内になれると、アルフォリアから生徒会に勧誘される。
生徒会には、宰相の息子と、騎士団長の息子がいて、3人と一緒にお茶したり、勉強したりのスチルが見られるという、ご褒美イベントだった。
……ご褒美だったよ?
拉致監禁じゃなかったよ……?
トエの顔を見つめる俺は、引き攣ったと思う。
瓶底眼鏡をずり上げて、トエはおごそかに頷いた。
「気をつけて」
「お、おう、わかった」
どう気をつけたらいいか、解らないけどな!
ここで生徒会室に行かない、という選択肢は…………あるのか。
ゲームには、トエは……出て、来なかった……と思う。
瓶底眼鏡は懐かしいから、多分、出てきたら喜んで憶えてる。
ここはゲームの世界だけど、多分そのまんまじゃないんじゃないかな。
俺みたいな転生者が、他にもいるかもしれない。
主人公は、絶対に転生者だろうしな!
ゲームには出て来なかった皆が、この世界を動かしてる。
だから俺も、きっと、頑張ったら何とか、ざまぁを回避できるかも!
「気をつけるよ」
笑ったら、トエはちょっと首を傾げる。
「リユィって、もしかして、かわい?」
俺もトエと一緒の方に首を傾げた。
「それ、トエじゃないか?
眼鏡とったら超絶美少年だろ?」
「はわわわわ!
な、ななななんでそれを──……!!」
うろたえるトエの、美少年の自覚を突っ込んでもいいのか解らない!
「お約束だから」
「……お約束?」
首を傾げるトエは多分、転生者じゃない。
いやいやいや、俺より格段に演技が巧いかもしれないぞ。
しかし、転生者ですか? 俺のざまぁ回避に協力してくれませんか? は、まだ早い!
今日逢ったばっかだから!
「トエの寮は、おんぼろ寮?」
「う、ううん」
気まずそうに首を振るトエに、なるほどと頷いた。
おんぼろ寮は、魔力なし+財力なしが入る寮だ。
魔力なし+財力ありは、豪華寮に入れる。
確かにトエは、お金持ちのおぼっちゃんぽい。
「じゃあ俺、気をつけて行ってくるよ」
「……戻って来れなくなるよ」
ちいさな呟きに、目を瞠る。
「トエは、何か、知ってる?」
この世界のことを。
ゲームのことを。
瓶底眼鏡をずり上げて、トエは俺を見おろした。
「……きみ、は……」
「ああ、リユィ。遅いから迎えに来たよ」
物凄くイイ声が降ってきて、びくんと震えた俺は、顔をあげる。
「どうしたの、怯えて。
そこの子から、何か聞いた?」
にこりとアルフォリアに微笑まれたトエが、飛びあがる。
「ご、ごめんよ、リユィ!
ぼ、僕、自分のお尻が大事だから────!!」
泣きながら、トエが駆け去った。
残された俺は、真っ白になる。
え。
…………お尻?
目をつけられたら、戻って来れない?
も、もしかして、そ、そっち────!?
「一緒に行こうね、リユィ」
がっちり、俺の腕を掴んだアルフォリアに、歩くよう誘導される。
…………生徒会室に行かないは、選べないようです…………
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